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アルケークロニクル  作者: 緑Cha
聖女誕生編
14/50

氷のサークレット

 鬱蒼と木々が茂る森林に出る…とメリアは思っていた。


 しかし、メリア達が訪れたのは周囲を水晶の様な物で埋め尽くされた空間だった

 『ここは?どこなの?』

 よく見ると少し離れた所に水晶と紫水晶で造った工芸品の様な龍の姿と…


 「あ!魔王さんが居ます」

 

 メリアが魔王さんと読んだのは、魔王城で魔王として勇者と戦っていたヴァンパイアである。

 ヴァンパイア(魔王)は、アルケーの前に跪くと、

 「先程はありがとう御座いました。」

 と、深々と頭を下げる

 「どう言う事なんでしょうか?」

 「あぁ、魔王城に居たのは、コヤツの分体だよ。ヴァンパイアは本体を安全なこの地に残して分体を地上で活動させてるのさ」

 「じゃあ、もしかすると地上で死んでも平気って事ですか?」

 「その通りで御座いますメリア様」

 「えぇ〜私頑張って治療したのにぃ」

 「分体と言えど本体にもダメージが来ておりましたので、治療して頂き誠に感謝しております」

 なぁんだ、とでも言うようにメリアが微笑む

 

 そして、2人が水晶の龍の近くまで来ると

 「この御方は…」

 「ノクスのペットだよ(笑)」

 「氷龍グラキエル様ですよね!?」

 『僕ペット?…あ、でも悪く無いかも…』

 「戯言だよ、気にするな」


 そう言うとアルケーはグラキエルの頭部付近をゆっくりと撫でる

 「アルケー様、タケウチ様の所に行くかと思ってましたが何でこちらに?」

 「創造神様、僕も同じ疑問を抱いてます。何故このような僻地に来られたのですか?」


 「悪い子には罰を与えた…ならば、良い子にはご褒美をあげるのが普通では無いか」

 久しぶりに見るアルケーの優しい眼差し

 あの、銀毛狼に向けられてたような暖かな眼差し…

「氷龍、ご苦労さま。後、淋しい思いさせて悪かったね」

 「もったいないお言葉ありがとう御座いましす」

 グラキエルは感激の余り涙を流す、その涙はまるで宝石の様に輝いていた。

 

 「ん?良い事を思いついた♪」


 アルケーはグラキエルの涙を手に取ると、ソレを中央部分にしたサークレットを作り出しメリアの頭にそっと被せる…

 「うわぁ〜素敵なサークレット……あ、ありがとうございます!」


 「氷龍よ、この涙にお前の分体を宿すと良い。さすればメリアの見たもの聞いたものを共有できるぞ」

 「なんと?!」

 「グラキエル様と一緒だなんて素敵♪」

 周囲に映って見える自分の姿とサークレットを見ながら上機嫌なメリアにグラキエルが問いかける

 「メリア様は、それで良いのか」

 「グラキエル様ぁメリア『様』じゃ無くメリアって呼んでくださいませ!貴方様は龍神様なのですよ?」


 グラキエルはひと息入れて言い直す

 「で、メリアは良いのか?」

 「もちろんです!!こんな素晴らしい事はありません。」

 眷属や神以外との初めて会話だけでもご褒美なグラキエルに、こんな素晴らしいプレゼントをもらったグラキエル

「感謝…」

 と、だけ言うのが精一杯だった


 「お前達はどちらもノクスの事が好きな者同士だから気も合うだろうて」

 何十億年もボッチだったグラキエルに出来た初めてのお友達が、同じノクス様大好きな者同士と言う最高のご褒美を貰えたグラキエルであった。

 そんなグラキエルにアルケーがそっとつぶやく…

 「メリアの事頼むぞ、メリアは心がまだ幼い…今後数百年生きるのにはお前の助力が必要なんだ」

 

 これほどまで嬉しい事は無かった。

 ひたすら孤独と戦っていたグラキエルが創造神様から大事な仕事を任されたのだ

 グラキエルの脳内では

 『頼むぞ…頼むぞ…頼むぞ…頼むぞ…』『お前の助力が必要…』『お前の助力が必要…』

 と、同じ言葉がループしていた。



 「ところでアルケー様、この宝石はなんて言う宝石なのですか?」

 と、サークレットの中央部分を指差す

 「…氷」

 「へっ?」

 「宝石じゃ無くて氷、水の固まったヤツ」

 何を当たり前な事を聞くんだ?とても言うようにアルケーが答える

 「溶けないんですか?」

 「ん~~…外に出たら溶ける…かも?」

 「溶けたら…どうなってしまうんですか?」

 「水になるだけ」

 アルケーは、この程度も知らないのか…とでも言いたげに言う

 「グラキエル様の分体とかは?」

 「無くなるなぁ…」

 「その後は?」

 「無くなるだけ」

 がっくりと、手を付き崩れ落ちるメリア…

 キッ!と、アルケーを見ると


 「な・ん・と・か・してください!溶けちゃ嫌です!!」

 「氷龍、なんとかしてやれ」

 あっさりとグラキエルに丸投げした

 「大丈夫だよメリア、僕が司るのは『保存』、氷を溶けない様にする事なんて楽勝だよ」

 グラキエルがメリアのサークレットに軽く冷気をかけると、サークレットに氷龍の加護が付いて

 「これで4000度程度の熱には耐えられるよぉ」

 それ、氷って言うの?ってレベルまで強化されたのであった。


 メリアは気付いてた、アルケーの優しさに…わざと氷でサークレットを作り出した事に…

 『アルケー様…やっぱりお優しい御方…』


 「さて氷龍よ、さっさと分体を氷に同化させよ、出かけるぞ」

 「はい!!」


 まるで、『散歩行くよ』と言われた犬の様にはしゃいだグラキエルだった。


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