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“王太子ざまぁ”を目指したはずが、家族と第二王子が過激すぎて大勝利になりました  作者: ぱるめりあ


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第12話 ライバルの転落! コーデリアの行方③

 大仰なインテリアが並ぶ薄暗い客間。その一角に、かつては人目を引くほど着飾っていたドレス姿のコーデリア・フローランが、肩を震わせながら泣きべそをかいていた。そこには、つい先日まで彼女が暮らしていた自宅の華やかな雰囲気はない。どこか別の邸宅、あるいは静かな貸し部屋のような、そんな薄い灯りだけがゆらゆらと揺れている。

 最近になってコーデリアが失踪したという話が広まっていたが――実際はこうして、彼女は“ある人物”との内密な会合のために身を潜めているのだ。


「わたくし、こんな仕打ちを受けるなんて納得できない……っ。どうしてリリエッタなんかが勝ち誇った顔をしているの!? 私こそ王太子殿下に選ばれるべき存在なのに……!」


 声を詰まらせるコーデリアの傍らには、顔の見えない協力者が一人立っていた。フードを深く被り、性別すら判別しにくいが、不吉なオーラを漂わせている。その人物は、まるで腫れ物に触るような静かな口調でコーデリアの言葉を受け止める。


「……なるほど、お嬢様はリリエッタという公爵令嬢を深く恨んでおられるのですね。しかし、今のままでは、殿下も謹慎中とあって、動きづらいかと。いかがお考えでしょう」


「どう考えるもなにも、あの子を破滅させたいのよ! わたくしが散々恥をかいたのは全部リリエッタのせい……。そのくせ王太子殿下まで私を見放して……。こんなの理不尽すぎるわ!」


 泣きじゃくりながら言い募るコーデリアの目は、一方的な怒りと悔しさに満ちている。そんな彼女の様子を観察するかのように、協力者はコツンと靴底を鳴らしながら歩み寄ると、落ち着いた声で提案を口にする。


「そこまで殿下を守りたいのなら、いえ、どちらかと言えば殿下を利用して、リリエッタを陥れたいのですね? でしたら、まずは殿下自身をもう一度名誉回復の舞台に引きずり出すのはいかがです?」


「名誉回復って……でも、今の殿下は完全に呆れられていて、父上である国王陛下も謹慎処分を下している状態でしょう? どうやってあの人を使えっていうの?」


「簡単ではありませんが、不可能とも思えません。殿下ご自身も、あれだけ恥をかいておきながら黙っているタイプではないでしょう。逆に、『自分こそが正しい』と証明したがっている可能性は高いと思いますが」


 協力者の言葉に、コーデリアはかすかな希望を感じ取ったのか、ぐしぐしと目頭を拭きながら顔を上げる。舞踏会で大恥をかき、どこからも支援を得られなくなった今、王太子を再び炙り出してリリエッタを叩く――それが唯一の巻き返し策かもしれない。


「そう……殿下はああ見えてプライドが高いもの。あのままリリエッタに負け続けるのは耐えられないはず。もし私が『協力しますわ!』と手を差し伸べたら、意外と乗ってくれるかも……」


「ええ、そうでございます。リリエッタが振りかざした証拠を、逆に殿下の口から嘘呼ばわりさせればいい。そのために、私どもがお手伝いいたしますよ」


「……あなたはいったい、誰なの? こんな私の話に耳を傾けてくれて、しかも殿下を利用しろなんて裏工作まで提案するなんて……普通じゃないわよ」


 コーデリアが目を伏せながら尋ねるが、謎の協力者は「名乗る必要はありません。あなたが望むなら、私はその力になるだけ」と優雅にお辞儀をする。深く垂れたフードの影が見えない表情を隠すせいで、その言葉には妙な説得力と不気味さが同居していた。


「そ、そう……。でもいいわ。私にとって大事なのは、リリエッタをどうやって破滅させるか、そして殿下の隣が私だと認めさせるか……それだけだから」


 勢いよく立ち上がったコーデリアは、瞳の奥に再び激情の火を取り戻している。先日までの涙目が嘘のように、その表情は明確な敵意と復讐心に染まっていた。彼女が失踪したという噂は、実際にはこの怪しげな協力者のもとで新たな計画を練るためのもの――少なくとも今は、そうとしか思えない。


「……リリエッタ……あの生意気な公爵令嬢め。誰があんな娘に好き勝手させるもんですか。絶対に彼女を追い落としてみせるから!」


 ぐっと拳を握りしめるコーデリアの姿に、協力者は満足そうに口角を引き上げているようだが、フードが邪魔で表情までは分からない。それでも周囲には“黒幕”という言葉が似合いそうな、どこか陰鬱な空気が漂っていた。


「では、具体的な策は後日改めてお伝えいたします。まずは、殿下の取り巻きや関係者から話を通していく必要があるでしょう。あなたは、どうかその日のために十分な“派手さ”を用意しておいてくださいね」


「派手さなら負けないわ。今度こそ徹底的に仕上げて、リリエッタに恥をかかせてみせる。あの醜態を笑った貴族どもに復讐してやるのよ……!」


 ギラリと燃え上がるコーデリアの目は、今まで以上に空回りを予感させるが、彼女自身はまったく気づいていない。協力者と呼ばれる人物がどんな黒い策を与えようと、彼女の性格がうまく噛み合う保証は皆無だが、それも当の本人には見えないらしい。

 一方、協力者のほうは「では、近々また」と軽く頭を下げ、音もなく部屋の奥へ消えていく。コーデリアは深く息をついて、自分を奮い立たせるように両頬を叩きながら大きく頷く。


「今度は……絶対に私が勝つ。殿下を、そしてみんなを見返してやるんだから……!」


 胸に手を当てて誓うコーデリア。その姿だけ見れば悲壮感と闘志が入り混じっているが、先日の舞踏会の記憶を知る者なら、どうしても“また自滅しそう”というイメージを払拭できないだろう。だが彼女は、もはや自分の意地だけを支えに暴走モードに突入している。

 こうしてコーデリアは、新たな“怪しげな協力者”を得て復讐に燃え始める。失踪騒ぎの裏ではこんな動きが進んでいるとも知らず、リリエッタや周囲の者はまだ呑気なまま……嵐の前の静けさを感じさせる薄暗い部屋で、コーデリアの笑い声が微かに響き渡っていた。彼女の逆襲劇がどんな形で表面化するのか、今はまだ誰も知らない。

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