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「聖女様ー!また来てねー!」
「ええ。また絶対に来るわ」
馬車の窓から子どもたちに手を振る。
そして姿が見えなくなったところで、私はそっと窓を閉めた。
「はぁ……なんとか終わったわ……」
◇
パーティーのあと国王陛下や王太子、そしてクレイ様と話し合い、国中を巡礼することになった。
国中が待ち望んでいた聖女の誕生。この奇跡をぜひとも国中に伝えたいと、国王陛下に頭を下げられてしまえば断るわけにもいかず。
クレイ様は私の負担を心配して最後まで反対してくれたが、最終的に私は受け入れることに決めた。
ただ受け入れる代わりに、ひとつ国王陛下にお願い事をした。
教会の不正を取り締まり、辛い思いをしている人たちを助けてほしいと。
国王陛下はすぐに私の願いを叶えてくれたようで、母のいた教会の司祭が罰せられたそうだ。
それとヴィード侯爵は処刑された。
あのパーティーのあと、侯爵邸を調べると毒が見つかり、さらにはその毒を国王陛下に盛っていたことが判明したのだ。
長い時間金を集め、今回の計画を立てたようだったが、結果としては失敗に終わり、ヴィード侯爵は何も手にすることのないまま散った。
アイラ王女は隣国へと強制送還された。
その後、隣国とアイラ王女の嫁ぎ先であった国との間で戦争が起こり、隣国は敗北。隣国は属国となったというところまでは知っているが、アイラ王女がどうなったかまでは知らない。
どうやらクレイ様は知っているようだったけど、あえてその話題には触れてこないので、私は気にしないことにした。
◇
あの開国祭から半年。
ようやく今日、最後の巡礼を終えた。
「お疲れ様」
「クレイ様……」
なんとこの巡礼には、クレイ様も一緒に来てくれている。忙しいのにも関わらずこの数ヶ月、ずっとそばにいてくれた。
「あとは公爵邸に帰るだけだな」
「はい。畑が恋しいです。ちゃんと元気に育っているでしょうか」
「大丈夫さ。ああ見えてルカはやる時はやる男だ。それにあいつはなんでも器用にこなすから心配はいらないさ」
クレイ様は何だかんだ言いながらも、ルカのことを心から信頼しているのが分かる。そんな二人の関係が微笑ましく思いながらも、正直羨ましいなと思ったりもする。
「お二人は本当に仲良しなんですね」
「そんなことはないが……」
「きっとクレイ様が帰ってくることを、今か今かと待ってますよ」
「あー……まぁ仕事を全部押し付けてきたからな」
「ふふっ。じゃあクレイ様は帰ったら忙しくなりますね……あ」
私はここで、一つの疑問を思い出した。
「どうかしたか?」
「あ……その、私は帰ったら何をすればいいのかなって」