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「ペ、ペンゼルトン公爵夫人……?」
ヴェールを取った私は、王太子殿下のもとへと歩み寄り、そして跪いた。王太子殿下もアイラ王女も驚いた表情をしている。それにこの場からは表情が見えないが、きっとヴィード侯爵も驚いているだろう。
(まさか私も同じ髪色をしているなんて、相当驚いているでしょうね)
ただの孤児の娘だと思っていた私が、まさか聖女の証である銀髪であるとは夢にも思っていなかったはずだ。驚き悔しがる表情を見てみたいとは思うが、今は時間がない。ここからは時間との勝負だ。
アイラ王女が動き出す前に私も動き出さなければ。
「王太子殿下。無礼をお許しください」
「い、いや、その……これは一体どういうことなんだ?」
その疑問はごもっともである。できるなら丁寧に説明したいところだけど、今は一刻を争う。申し訳ないが説明は後だ。
「失礼します」
「こ、公爵夫人!?」
王太子殿下の制止を無視し、私は国王陛下とアイラ王女のいる場所へと向かった。
国王陛下の顔色は悪い。急いで治療しなければ。
「ちょ、ちょっとあんた!」
アイラ王女の声が聞こえてきたが、今は集中だ。
私は国王陛下に両手を翳し、 そして祈った。
体の不調がよくなりますようにと。
「一体何を……きゃっ!」
すると次の瞬間、目映い光が国王陛下だけではなく、会場全体を包み込んでいった。
「……これが聖女の力?」
光が収まったのは少し経ってからのこと。
私自身、突然光に包まれて驚いたが、その光はとても温かく心地いいものだった。
(それになぜだか身体が軽い)
最近は色んなことが立て込んでいて、あまり眠れずに今日を迎えていたはずなのに、ついさっきまで感じていた身体の不調がなくなっていた。
どうやら私と同じように感じる者もいるようで、耳を澄ますと聞こえてくる。
『たくさん踊って足が痛かったのはずなのに……』
『昔からの腰痛がなくなった』
『医者にもう戻らないと言われた視力が……』
あちこちから身体の不調が治った、そんな声が聞こえてきたのだ。
「これは一体どうなって……」
「きゃあーー!」
この状況に戸惑っていると、突然女性の悲鳴が聞こえた。あまりの悲鳴に声が聞こえる方を振り返ると……




