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40 ヴィード侯爵

 

「……くくく」



 すべてが順調に私の思いどおりに進んでいる。長かった。ここまでたどり着くまで本当に長かった。

 無能な兄たちを蹴落とし、侯爵家の当主になったものの、私は侯爵家の当主程度の権力では満足できなかった。なぜ私は王家に生まれなかったのか。私以上に、上に立つのにふさわしい人間などいないというのに。


 私は考えた。どうすれば今以上の権力を手に入れることができるか。


 そこで思い付いたのがこの計画だ。偽の聖女を作り上げ、私がその聖女の後見人となり、国王の命の恩人となる。そうすれば国王と同等か、それ以上の権力を手に入れることができるのではないかと。

 偽の聖女を作り上げ、後見人になることは簡単だ。だが国王の恩人になるのは簡単なことではない。国王を襲わせ怪我をさせたり、致死量の毒を盛るのはリスクが高すぎる。どうにかしてばれずに国王を弱らせる方法はないか。そしてさまざまなつてを使い見つけたのが、とある島国に伝わる秘薬だった。

 この秘薬は毎日少しずつ接種すると徐々に衰弱していき、最後には眠ったように息を引き取るそうだ。その島国では、治療の手だてがなく、死を待つだけの患者のために使われる薬らしい。

 私はその薬を、国王の命の恩人となるために使った。城の使用人を買収し、国王の飲み物に秘薬を混ぜた。この薬の最大の利点は、無味無臭であること。だからこれまで気づかれることも、怪しまれることすらなかった。それに体内に薬が残らないので、どれだけ調べてもバレる心配がない。

 まぁ秘薬とは言ったが、要するに毒である。


 国王を弱らせ、弱っている国王を救う。そうすれば聖女に対する求心力は、凄まじいものになるだろう。王家や国王は助けられた手前、文句など言えるわけもない。

 そうして自然と聖女に権力が集まり、後見人である私がその権力を手に入れるというのが一連の計画だ。

 秘薬がバレる心配はしていない。ただその秘薬を手に入れるためには金がかかる。だから時間をかけて金を工面した。


 偽の聖女には、頭が悪そうな娘を選んだ。初めは平民の中から探そうと思っていたが、半年ほど前に、都合の良さそうな娘を見つけることができた。その娘はどうしても諦められない男がいて、嫁いだ家から着のみ着のままで飛び出してきたらしい。その自分勝手な行動が、周囲にどんな影響を与えるかなど微塵も考えていない。自己中心的で浅はか、それでいて欲しいものは何をしてでも手に入れなければ気が済まない性格。

 それに国の政治や情勢には全く興味がないときた。一体どんな教育をしてきたのだろうかと疑いたくなるレベルだった。

 しかしそんな娘だからこそ、この計画には都合がいい。娘は公爵と結婚さえできれば、あとはどうでもいいと思っている。ならば無能な聖女に代わり、私が権力を手に入れるのだ。


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