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 公爵様は私の十年を奪ってしまったと言うが、当の私は公爵様に感謝している。たとえ選ばれた理由が都合がよかったからだけだとしても、公爵様との縁談があったからこそ、家族も領民も救うことができたのだ。

 私にとってはそれがすべて。



「公爵様が謝る必要はありせん」


「っ、だが……!」


「私は縁談を受け入れた時に、公爵様の決めることにはすべて従おうと決めていました。公爵様は私に罪悪感を抱いているのかもしれませんが、私にとって公爵様は家族を、領民を助けてくださった恩人です。だから謝る必要なんてないんです」



 それに公爵様はあの日から私のことを想っていたと言ってくれた。そのことに関しては素直に嬉しいと思う。私もあの日助けてくれた男の子のことは、ずっと覚えていたから。


 しかし公爵様に対して、異性として好意を持っているかと聞かれればそれは違う。

 私はこの十年間、公爵様のことを仕えるべきご主人様だと思って生きてきた。だから感謝しているし尊敬もしている。でもそれだけなのだ。

 それにそもそもの話、私はこれまで二十七年間生きてきて、一度も恋と言うものをしたことがない。もちろん大好きなロマンス小説を読んで胸がときめくことはある。けれどそれはあくまで小説の中だけの話であって、現実では一度だってときめいたことなどない。だって現実では、ときめくことより生きていくことに必死だったから。


 私としてはこのまま夫婦でいることに関しては何の問題ない。だけど公爵様からの気持ちを、同じだけの想いを返すことは難しいと思う。それでも公爵様は私でいいと言ってくれるのだろうか。



「……あの、公爵様」


「っ!ど、どうかしたか?」


「えっと……私は公爵様に感謝していますし、尊敬もしています。それに昔のことも、あの時助けてくれたお兄ちゃんが公爵様だと知れて嬉しかったです」


「あ、ああ」


「できることならばこれからはもっと公爵様のお役に立ちたいと思っています」


「……」


「……だけど今の私には公爵様と同じだけの想いを返すことはできません」


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