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お飾りの公爵夫人は夫の初恋でした  作者: Na20


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18 クレイ

 

「くっ……」


「公爵様?」


「なぜ気づかなかったんだ……!」


「おーい?」


「くそっ……十年前に戻りたい……」


「うーん、やっぱり頭でも」


「……何か言ったか?」


「嫌だなぁ。何も言ってませんよ?」



 やはりこの男はなにか失礼なことを言っているような気がする。しかし正直今は相手になどしている場合ではない。


(ルーナをあの場に残してはきたが、一刻も早く彼女をここに連れてこなければ!)



 ――ガターン!



 急に立った勢いで椅子が倒れてしまったが、まぁいい。



「ちょっと公爵様。急に立ったら危な」


「今すぐに部屋を整えておけ」


「はい?部屋、ですか?急にどうしたんです」


「いいからつべこべ言わずにやるんだ」


「わ、分かりましたけど、一体誰の部屋を整えるんです?今さら整える必要がある部屋なんてどこにも……」


「なにを言ってるんだ。当然女主人の部屋に決まっているだろう」


「え?でもそこは」


「私は城へ行く!戻るまでに必ず整えておくようにな」


「えっ!?ちょ、ちょっと、公爵様!?」



 側近が何か言っているが、急いで確認しなければならないことがある。そのため私は城へと向かうことにしたのだ。



 急ぎ城へと向かった私は、まっすぐに目的地を目指した。



「アレクシス!」


「うわっ!ク、クレイ?」


「今少しいいか?」


「い、今?まぁ大丈夫だけど……」


「じゃあ人払いを頼む」


「……何か重要な話か?」


「……ああ」


「わかった。少し待っていてくれ」



 そして待つこと数分。従者や護衛、文官は全員退出し、部屋には私と従兄弟のアレクシスだけとなった。



「それで?突然どうしたんだい?クレイがこうして私のところに来るなんてめずらしいな」


「……確認したいことがあるんだ」


「確認?わざわざここまで来て一体何を確認したいんだ?」


「その……」



 勢いでここまで来てしまったが、どう口にすればいいのか。彼女は秘密にしてほしいと言っていた。ここで下手なことを言って、彼女の秘密がバレたら……。そんな思いが一瞬頭を過ったせいで、上手く言葉が出てこない。



「クレイ?」



 アレクシスが怪訝そうに私を見ている。人払いをしてもらったのだ。今さら何でもないとは言えない。ここで躊躇すれば逆に怪しまれてしまう。

 私は慎重に言葉を選びながら口を開いた。

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