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「……」


「お願いします……!」



 私は必死に頭を下げ続けた。頭を下げることは大したことではない。それよりも私は今のこの生活を守りたいのだ。

 思いが伝わったのか、アレクシスと名乗った男性が口を開いた。



「……わかった」


「あ……ありがとうございます!」



(よ、よかった!)



 これでこの生活を守ることができる。そう思ってホッと胸を撫で下ろしたのだが……



「ルーナ」


「はい」


「きゃっ!?」



 アレクシス様が誰かの名前を読んだ途端、突如としてお仕着せを着た女性が現れたのだ。あまりに突然の出来事に私は驚いて叫んでしまった。



「ルーナ。私が戻るまで必ず彼女を守れ」


「かしこまりました」


「えっ?」


「フローリア嬢!すぐに迎えに来る。だから待っていてくれ」


「え、それはどういう意味」


「必ずまた会おう……急ぎ屋敷に戻る!行け!」


「ちょ、ちょっと……!」



 私が止めるまもなく、あの人は馬車に乗って帰っていってしまったのだ。よくわからない言葉と一人の使用人を残して……



 ◇



 そして先ほどの会話に戻るのだ。



「……せっかくのいい天気だったのに」



 結局今日は買い物も種蒔きもすることができなかった。やろうと思えばできたのだろうが、あんなことがあったのだ。とてもやる気が起きなかった。



「いかがされましたか?」



 それに家の中に知らない人がいるこの状況が、全く落ち着けない。



「……ううん。何でもないです」


「何かございましたら何なりとお申し付けください」


「……分かったわ」



 気遣ってくれているのは分かるが、何せ産まれてこのかた二十七年。名ばかりの貴族である私は平民、いやそれ以下の生活を送ってきたのだ。今さらお世話されるのはちょっと抵抗がある。できればそっとしておいてほしい。

 果たしてこの状況はいつまで続くのだろうか。



「はぁ……」



 私は気づかれぬよう、そっとため息をついたのだった。


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