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27. 少女保有者の目覚め

これから、新たな始まりが訪れます。これから起こることは、皆の人生を変え、新しい冒険と挑戦への道を切り開くでしょう。

夜は自分のものではない映像に砕かれていた。

(りゅう)は荒れ地に倒れ込み、奇妙に瞬く星空を見上げていた。まるで星々が消えかけているようだった。体は重く、傷つき、口の中には鉄のような味が広がっていた。起き上がろうとしたとき、異変に気づいた。――自分の影が勝手に動き、地面で蠢いていたのだ。


風が強く吹きつけ、砂埃が舞い上がる。(りゅう)は右手を見た。そこにまた現れていた――あの時計。針は十一を指していた。焦げた鉄のような、苦く金属的な匂いが突然彼を包み込む。喉が詰まるような感覚で振り返った瞬間、影が立ち上がり、彼の肩に手を置いた。


世界が途切れる。


気がつけば、彼はある女性に手を引かれていた。見えるのは背中と、淡い色のコートにかかる髪だけ。声も音もなかった。ただ、その温かい手がどこか見えない場所へ導いていた。(りゅう)は顔を見ようとしたが、映像は焼け落ちたフィルムのように消えていった。


また場面が跳んだ。


今度は目の前に揺れる揺りかご。上にはおもちゃのモビールがゆっくりと回っている。さっきの女性が身をかがめ、揺りかごの中の毛布を優しく撫でていた。(りゅう)は一歩踏み出し、胸が早鐘を打つ。だが、その中を覗く寸前に、再び腕の時計が視界に入った。


閃光。暗闇。


(りゅう)は息を荒げながら飛び起きた。体中が冷や汗で濡れている。部屋は静まり返り、窓から差し込む淡い光だけが頼りだった。月曜の朝だった。


(りゅう)はベッドに座り込み、まだ荒い呼吸を整えようとした。あの影の手の感触が、いまも肌に残っているようだった。

(……何だったんだ、今のは。ただの夢じゃない。まるで……誰かの人生を見てるみたいだ)


目を閉じ、映像をひとつずつ思い返す。荒れ地、勝手に動く影。そして、何度も現れる時計。針は進み続け、今は七を指していた。十二に近づいている……(りゅう)には分かっていた。その時、何かが起きる。


そして、女の人。背中、強く引く手。誰だ? 過去の誰か? 母親? それともまだ出会っていない人物なのか?


揺りかご……その記憶が胸を締めつける。女性が中を守るように身をかがめていた光景。中を見られなかったが、その不安感は拭えなかった。まるでまだ受け入れる準備のできていない真実がそこに隠れているようで。


(りゅう)は顔を覆い、深く息を吐いた。

(……これらの夢、どんどん鮮明になってる。もう想像の産物じゃない)


自分の手を見下ろし、拳を握る。

(必ず意味がある……いつか必ず解き明かしてみせる)


長く息をつき、ベッドから立ち上がった。月曜の朝が始まったばかりだった。


冷たい水が顔を流れ、意識が少しだけ覚める。(りゅう)は鏡を見つめ、顎を滴る雫を感じた。瞳にはまだ夢の残滓が映っていた。

(あの女……あの揺りかご……なぜ見ている? 俺は経験してないはずなのに)


さらに鏡へ顔を近づけた。答えを求めるように。すると、一瞬、背後の曇ったガラスに影が伸びたように見えた。人の形をした、高く黒い影――自分の背中から滲み出すように。


心臓が跳ね上がる。


振り返った。


何もない。静かな浴室だけ。


再び鏡を見た。息が荒い。

(俺は……狂い始めてるのか?)


両手を洗面台に置き、歯を食いしばった。


朝の光が差し込む台所には、トーストとコーヒーの香りが漂っていた。イリナは既に席に座り、研究所の書類をめくりながら無意識にパンを口にしていた。


(りゅう)はまだ半分眠たそうにタオルで髪を拭きながら入ってきて、彼女の向かいの椅子に腰を下ろした。奇妙な夢の重みを引きずりながら。


陽葵(ひまり)のこと、いい知らせがあるわ」イリナが顔を上げ、小さく微笑んだ。


(りゅう)は目を瞬かせ、夢が一瞬で吹き飛んだ。

「本当か? 調子はどうなんだ」


イリナは書類を脇に置き、肘をテーブルに乗せた。

「すごく良さそうよ。リハビリの最終段階、私も協力したの。今日の午後、大学の研究室で結果を確認する予定」


(りゅう)は姿勢を正し、身を乗り出した。

「じゃあ……本当に? 回復してるのか?」


姉はしっかりと頷いた。

「そう願いたいわ。あの方法は危険だったもの。失敗続きで誰も試そうとしなかった――保有者のS-Type3の血を、普通の人間に移すなんて。でも陽葵(ひまり)はうまく反応したの。想像以上にね」


(りゅう)の顔に、心からの笑みが浮かんだ。瞳が明るく輝く。

「それは……最高の知らせだな」


ほんのひととき、胸に重くのしかかっていたものが軽くなった。混沌と不安と影の中で、その希望はまさにオアシスだった。


電車がきしむ音と共に停車する。乗客のざわめき、漂うコーヒーの香り、扉の開く金属音が混ざり合う。


(りゅう)はまだ考えに囚われながら降り立った。脳裏には野亜の姿。今日、学校で会えると思うと、胃の奥がざわつく。無数の蝶が暴れるように。


その時、不意に自分の名を呼ぶ声がした。


(りゅう)くん」


振り返ると、彼女がそこにいた。長峰(ながみね)愛莉(あいり)、クラス委員である彼女は早足で近づいてきた。表情は落ち着いていたが、その目は安堵と軽い叱責の入り混じった光を宿していた。


二人は人混みを抜け、出口へ向かって歩いた。


愛莉(あいり)(少しカジュアルな口調だが、好奇心が隠せない様子で):

「二日間も授業に来てなかったけど……どうしたの?」


(りゅう)(少し口ごもり、前を見ながら):

「あ、あの……姉と一緒に美山(みやま)に行っててさ。叔父が病気で……四日間、そっちにいたんだ」


言いながら、(りゅう)はその言い訳の重さを口の中で感じた。頬が熱くなる。嘘をつくのは得意ではなかった。


愛莉(あいり)は横目で彼を見た。微笑みはほんのわずかに消え、胸に失望の痛みが走った。彼をよく知っている彼女には、その話を信じることはできなかった。


愛莉(あいり)(軽く眉をひそめ):

美山(みやま)、ね……」


(りゅう)の心臓が跳ねた。唾を飲み、通り過ぎる人々を見て目をそらした。


愛莉(あいり)(少し声を落として、誠実に):

(りゅう)くん……嘘つき」


「え……どういう意味?」と、(りゅう)は驚いた声を出した。

「金曜日、国立図書館の前のバイク工房で君が出てくるのを見たの。顔……元気がなくて、心配そうだった」


(りゅう)は一瞬立ち止まり、動揺した。胸が締め付けられる。彼女を自分の置かれた状況から守りたい、でも真実を話せない苦しさもあった。


愛莉(あいり)(ため息をつき、悲しげな光を目に宿して):

「信じてくれないのは嫌だな。あの日、君が大会の途中でいなくなって、突然戻ってきたときから……それに今、二日連続で休んで……何かおかしいって感じるの」


二人の間の沈黙は、駅の喧騒に飲み込まれた。愛莉(あいり)は一瞬視線を落とす。痛みを感じつつも、彼が言いたくないことがあると理解していた。


愛莉(あいり)(顔を上げ、わずかに震える柔らかい微笑みを浮かべ):

「無理に聞かないけど……もし何かあったら、私に話して。ほんとに。私も、君が私のためにしてくれたように、君のそばにいたいの」


(りゅう)は胃の奥に締め付けを感じた。一方で「大丈夫」と言って心配しないでほしい気持ちも、すべて打ち明けたい気持ちもあった。しかし結局、ぎこちない笑みを浮かべてうつむくしかできなかった。


愛莉(あいり)は背中で手を組みながら、二人の間にある見えない距離に痛みを感じつつ歩いた。


学校の入り口までの道は、話し笑う生徒たちで賑わっていた。リュウと愛莉(あいり)は並んで進むが、短い沈黙が生まれていた。(りゅう)は足元を見つめ、先ほど愛莉(あいり)に言われたことを考えていた。愛莉(あいり)は黙っているか、新しい話題を出すか迷っている様子だった。


ついに沈黙を破ったのは愛莉(あいり)だった。


愛莉(あいり)(柔らかい微笑みで、明るく見せようとしながら):

(りゅう)くん……もうすぐ筆記試験だよ。覚えてる?」


(りゅう)は目を上げ、瞬きをする。確かに、ここ数日、まったく勉強していなかった。


愛莉(あいり)(横目で見ながら、少し恥ずかしそうに):

「前に一緒に勉強すると言ってたでしょ……また始めない? 図書館で勉強会とか。苦手な教科もあるし……私が手伝えるよ」


(りゅう)は一瞬迷ったが、頷いた。助けなしでは無理だと分かっていた。

「うん、助かる。正直、全然勉強できてなかったから」


愛莉(あいり)の目は彼の答えを聞いた瞬間に輝いた。微笑みが広がり、心からの温かさを帯びた。少し彼に近づく。


愛莉(あいり)(嬉しそうに声を弾ませ):

「よかった! 承諾してくれて嬉しい。それに……君と過ごせるのも嬉しい」


(りゅう)は顔が熱くなるのを感じ、手を後ろの首にやる。恥ずかしさと緊張で挙動不審になったが、それでも赤面しているのは隠せなかった。


遠くで学校のチャイムが鳴り、群衆を入口へと誘う。二人は静かに歩き、今回は不快な沈黙ではなかった。


学校の入口には、中野(なかの)英夫(ひでお)西村(にしむら)隼翔(はやと)石川(いしかわ)(れん)が手すりに寄りかかり、それぞれスマートフォンを見つめていた。あくびや軽い会話の間に、話題は試験のことに及んでいた。


隼翔(はやと)(疲れた声で):

「もう諦めた……数学は落ちる」


英夫(ひでお)(ふう、と息を吐き、真面目に):

「勉強しなきゃ当然だろ。(りゅう)の方がひどいな、多分一冊も開いてない」


(れん)(肩をすくめ、淡い笑みで):

「ま、(りゅう)はいつも最後に何とかするけどな。それにしても、返信しないのは珍しい」


その時、柔らかい声がグループを遮った。


「おはようございます」


三人は顔を上げた。山埼(やまざき)(さえ)だった。肩にカバンをかけ、礼儀正しい表情で立っている。


(さえ)(少し緊張しつつも、丁寧に):

「すみません……(りゅう)くんのこと、何か知ってますか? 何度も連絡したのに返事がなくて、心配で」


英夫(ひでお)が先に答える。

「俺たちも知らない。ちょうど待ってたところだ」


隼翔(はやと)(頭をかきながら、素直に):

「いつも通り、突然現れるだろ」


(さえ)は頷いたが、まだ心配そうだった。その時、(れん)がいつもの無頓着な調子で、思いがけない一言を放った。


(れん)(彼女を上から下まで見て、半笑いで):

「なあ……山埼(やまざき)さん、髪型似合ってるな。いつもと違って見える」


(さえ)は固まり、反応に困った。顔が赤くなり、目をそらして頬の赤みを隠そうとした。


「え、えっと……あ、ありがとう……」(さえ)は口ごもりながら答えた。


英夫(ひでお)隼翔(はやと)は目を見合わせ、(れん)があんな自然にそんなことを言うのは意外だと驚いた。


一方、(れん)は彼女の反応を楽しんでいるようだった。

「ほら、もっと笑えば、きっと誰かが振り向くよ」


(さえ)は唇を噛み、恥ずかしさと新しい感情が入り混じった気持ちを隠せなかった。


しばらく、会話は(りゅう)の話題から離れた。空気が変わったのだ。知らず知らずのうちに、(れん)(さえ)の間に何かが芽生え始めているのを皆が感じていた。


沈黙が数秒続くと、我慢できなくなった隼翔(はやと)が神経質に笑った。


隼翔(はやと)(からかうように):

「ほら、突然ロマンチックになった奴がいるぞ」


英夫(ひでお)(腕を組み、半笑いで):

(れん)があんなに黙ってるのも珍しいと思った」


(さえ)はびくっとして、視線を落とし、バッグを胸に押し付けた。


「わ、私……先に入るね」


そう言うと、軽く会釈をして、頬を赤くしながら入口へと早足で向かった。


(れん)は困惑と楽しさが入り混じった表情で彼女を見送り、友達たちは「何だったんだ?」という顔で彼を見ていた。


しかし、これ以上からかう前に、聞き覚えのある声が彼らを現実に引き戻した。


「おお! 見ろよ、誰が来た!」


(りゅう)愛莉(あいり)は駅から一緒に歩いて到着したばかりだった。三人の友人は迷わず、入口でほとんどぶつかりそうになりながら駆け寄った。


(りゅう)! どこに行ってたんだ?」と英夫(ひでお)が聞く。


「メッセージにも返事しなかったじゃん!」と隼翔(はやと)が続ける。


(れん)は嬉しそうに近づき、背中を軽く叩いた。


「兄貴、心配させんなよ」


(りゅう)は質問の嵐と友達のエネルギーに驚き、ぎこちなく笑うのが精一杯だった。愛莉(あいり)はその光景を少し離れたところから見ていた。


三人は一度に話しかけながら(りゅう)を学校の入口まで連れて行った。愛莉(あいり)はその元気に驚いていた。


「後でね!」と、(りゅう)愛莉(あいり)から完全に離れる前に叫んだ。愛莉(あいり)はその可能性に微笑んで頷いた。


(離れていくんじゃないかと思ったけど、やっぱり(りゅう)くんはいつも通りだ)


四人組は、廊下のざわめきとロッカーの音を背景に進んでいった。すると、(りゅう)は突然立ち止まった。奥に乃愛(のあ)がいたのだ。手には本のリストを持ち、(さえ)が図書館の文学コーナーの整理について説明しているのを熱心に聞いていた。


二人の視線が交わった瞬間、乃愛(のあ)の顔は真っ赤になった。


(さえ)(れん)の到着に気付き、声を落とし、横目で彼を見た。

「え、えっと……お、おはようございます……」と小さくつぶやき、(れん)から軽い挨拶を返された後、慌てて教室の方へ向かい、頬を赤くして去った。


いつも全員に挨拶する英夫(ひでお)は自然に手を挙げ、乃愛(のあ)に向かって声をかけた。


「おお、乃愛(のあ)先輩、おはようございます!」


それで乃愛(のあ)は立ち止まり、ついに(りゅう)とぎこちなく、緊張しながら挨拶を交わした。


「お、おはようございます……」と、乃愛(のあ)はわずかに視線を落として言った。


(りゅう)は自然に聞こえるように咳払いをする。

「おはよう……」


数秒の気まずい沈黙の後、乃愛(のあ)は深呼吸して小声で頼んだ。

(りゅう)……ちょっと、二人で話せる?」


友達たちは、彼女が(りゅう)を名前だけで呼んでいることに気付き、進展を理解した。後でからかうために使うだろうとも思った。

だが、暗に意味があることも理解し、少し距離を置いた。乃愛(のあ)(りゅう)を窓際の方へ連れて行った。


「どうして私のメッセージに返事してくれないの? 昨日も今日も……」

――と、彼女はほとんど囁くように、怒りよりも傷ついたトーンで聞いた。


(りゅう)は首の後ろをかき、不快そうに答える。

「あ、悪かった。携帯もう持ってないんだ。言うの忘れてた」


乃愛(のあ)の表情は和らいだが、頬はまだ赤いままだった。

「ええっ……いつから? 無視してるのかと思った」


「そんなこと、絶対にしない……」と彼は素早く答え、一瞬、二人は沈黙した。


ごまかすために、(りゅう)は話題を変え、声のボリュームを上げて会話を覆った。

「えっと、今日は|水(はら)《みずはら》先生の訓練だよね?」


「うん」と乃愛(のあ)は少し恥ずかしそうに答える。「じゃあ、後でね」


二人はぎこちなく別れ、それぞれ反対方向へ歩き出した。


(りゅう)が友達の元に戻ると、三人は共犯の笑みを浮かべて彼を見ていた。


「怪しいぞ、(りゅう)のやつ……」と隼翔(はやと)が冗談を言う。


「廊下でこっそりデートでもしてんのか?」と(れん)がからかう。


「見ろよ、我らが照れ屋ヒーロー。うらやましいな、兄貴……」と英夫(ひでお)がため息交じりに言う。


その時、後ろから愛莉(あいり)が駆け抜け、眉をわずかにひそめていた。(りゅう)乃愛(のあ)が窓際で小声で話しているのを見て、嫉妬の色がちらりと表れた。


(れん)が最初に気付いた。

「なあ……委員長、顔変じゃなかった?」


英夫(ひでお)も肩をすくめながら、気付いていた。

「変っていうより、怒ってる感じだな」


(りゅう)は黙り込み、不快そうに少しうつむき、教室へ向かって歩を進めた。


「……気のせいだろう」――とつぶやくが、そうではないとわかっていた。


三人の友達は、いたずらっぽい笑みを交わし、(りゅう)の理解できない空気を楽しんでいた。


「聞けよ、(りゅう)。放課後、四人でセンター行くぞ」

「その通り」と(れん)が続ける。「“ダメ”は認めない」

英夫(ひでお)は笑顔で締めた。


「東京ゲームセンター。四人で。絶対だ」


(りゅう)は抗議しようと口を開いたが、三人は同時に眉を上げ、必要なら無理やり連れて行くぞと威嚇した。

結局、彼はため息をつき、降参した。


「わかった、わかった……でも、もし試験に落ちたら、君たちのせいだからな」


その日の午後。

ゲームセンターはカラフルな光とボタンの音、笑い声であふれ、揚げ物やジュースの香りが混ざっていた。(りゅう)は久しぶりにこういう場所に入り、しばらくの間、中学生時代に戻ったかのような気分になった。


「さあ、(りゅう)、このマシンが待ってるぞ!」と英夫(ひでお)が言い、(りゅう)をダンスゲームのブースまで連れて行った。


(りゅう)は首を振ったが、結局隼翔(はやと)と一緒に乗ることになった。音楽が大きく流れ、画面にカラフルな矢印が現れる。(りゅう)はぎこちなく最初のステップを踏み、友達たちは笑いが止まらなかった。


「めちゃくちゃだな!」と(れん)が腹を抱えて笑った。


最終的に(りゅう)も笑い、頬を赤くしながらも楽しんでいた。


疲れると、三人はフライドポテトやたこ焼き、大きなジュースを色とりどりのストローで囲むテーブルに座った。食べながら、冗談は尽きなかった。


「今日は訓練なかったんだな、(りゅう)」と隼翔(はやと)が言う。

「うん、長旅だったから、今日は休養日って部長が言ってたんだ」――(りゅう)の表向きの理由は、この事件について話さず、友達を危険に巻き込まないためだった。


「消えたな、(りゅう)」と英夫(ひでお)が真剣さと冗談が混ざった口調で言う。

「そうだよ、俺たちと出かけることすら認めないんだから」と隼翔(はやと)が頬を膨らませて不満げに付け加える。

「それに、早くスマホ買えよ。グループに入らなきゃいけないんだから」と英夫(ひでお)が続ける。

「ほんとだ。だからメッセージに返事しなかったんだな」と(れん)が笑いながら言う。


(りゅう)は手を挙げて降参し、笑った。

「わかった、わかった……その通りだ。みんなと過ごす楽しさを忘れてたな。これからはもっと頻繁に出かけることを約束する」


三人は勝ち誇った笑みを浮かべ、すぐに立ち上がり、再び(りゅう)を光と賑やかさの中に押し戻した。


「さあ、(りゅう)! 次のマシンが待ってるぞ!」


(りゅう)は今回、心からの笑顔で彼らに続いた。


同じ日の午後、イリナは東京国立大学の研究室の廊下を急ぎ足で進んでいた。息を切らしながら扉を押すと、白衣を着た二人の後輩が机から顔を上げた。


「先輩、封筒が届いてます。3番の机にあります」と一人が指差す。

「ありがとう」とイリナは笑顔で答えた。


研究室の全員が彼女に明るく挨拶する。生物工学部のイリナ・如月(きさらぎ)は、まるでロックスターのようだった。誰もが彼女の能力と人柄を称賛していた。常に可能な限り努力を惜しまない。科学界への貢献でいくつか表彰も受けている。確かに、イリナは非常に有能な人物だった。


机の上には、国際生研(こくさいせいけん)と呼ばれる日本有数の民間機関のロゴ入り白い封筒があった。


国際生研(こくさいせいけん)はうちの大学とプログラムを組んでる。彼らの技術で正確な結果が出るはず)


イリナは震える手で封筒を取り、すぐに開封した。期待に目を輝かせて最初のページを読んだが、すぐに希望は崩れ、驚きと不安が入り混じった表情になった。


報告書は明確だった――研究室にとって、陽葵(ひまり)は普通の人間ではない。保有者だったのだ。


国際生研(こくさいせいけん) – 応用バイオテクノロジー研究室」


血液学的結果報告書

被験者:奥村(おくむら)陽葵(ひまり)

採取サンプル:静脈血 15ml

分析日:2093年7月8日

担当:高度血液学部門


一般観察

サンプルは保有者血液の特徴を示し、標準的な人間の血液とは一致せず。顕微鏡分析では、ミアズマ合成細胞が優勢で、S-type3血液特有のパターンを示す。


陽葵(ひまり)ちゃん……保有者……?)

イリナは信じられない思いで読み進めた。


定量結果

ミアズマ飽和指数(MSI):341.8 mg/L

血漿粘度:正常人範囲の1.9倍

合成ミアズマ細胞割合:総サンプルの79.4%

in vitroでの細胞再生率:人間平均の3.2倍

エネルギー保持能力ミアズマバウンド:高 – 細胞の65%で飽和ピーク観察

標準安定化剤反応:部分的 – 制御溶媒への抵抗性を示す


結論

被験者はS-type3保有者血液の特徴を全て有する。細胞互換性は79.4%で、保有者確定と分類される。

厳密な医療管理と封じ込めプロトコルを推奨。


(署名デジタル – バイオテクノロジー部門)


イリナは瞬きするたびに内容が変わるかのように、ゆっくりと用紙を下ろした。


(保有者……どうして……?)


背筋に冷や汗が走る。国際生研(こくさいせいけん)陽葵(ひまり)が常に保有者であったと完全に確信していた。彼らにとって、輸血の前後も存在せず、リスクも知らなかった。


頭の中は疑問でいっぱいになった。


(この手術は、彼女の人間性の痕跡を完全に消すほど変えたということ……?)


数日ぶりに、イリナは起きたことが奇跡なのか、それとも呪いなのか判断できなかった。

今 陽葵は普通の人間ではなく、保有者だったのです。この発見は、周囲の人々の彼女への見方を変え、龍や仲間たちに訪れる出来事にも影響を与えるでしょう。

保有者であることは、いったい何を意味するのか?

ここまで物語を読んでくださり、ありがとうございます。皆さんの応援があってこそ、物語は続いていきます

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