#07 謹慎
・・・というわけで、謹慎となりました。
追放にならなかっただけよかったけど、三ヵ月かぁ・・・。
そう考え、僕は自宅のソファーで憂鬱そうに溜息を吐いていた。
煌纏の練習を重ねてその技術は徐々に上達しているけど、速度は遅い。
だけどそれ以外にできることもなく、結局僕はそれをしていた。
正直、将次君にこの程度の煌纏の技術で勝てた理由は、あっちの油断と煌纏の苦手さだと思う。
技名も唱えずに木を放って勝利を確信していたみたいだし。
その時、ふと思いだして、僕はその能力の名を唱える。
「〝守衛〟」
この能力は、超防御特化型だって言っていた。
じゃあ、攻撃には使えないのかな?
障壁を動かそうとしてみるけど、全く動かない。
どうやるんだろう?
障壁を動かそうと色々試し、煌気をいつもより多く使ってみた。
すると。
「わわっ!?」
障壁が、バラバラになった。
うーん、一部だけ動かそうとしたのがよくなかったのかな?
まだ、改善の余地はありそうだ。
◆◆◆
「クソ、アイツ許さねぇ・・・何だよ、卑怯な手を何度も使いやがって」
将次は愚痴を言い続けていた。
一応、将次も謹慎を言い渡されているため、東京にある八岳家の屋敷にいる。
八岳家の拠点は鹿児島だが、対魔庁の設立後から東京にも足を運ぶことがあり、屋敷が作られていた。
だが、普段は九州にいる者がほとんど。
今は同じ訓練校の生徒も八岳家にはいないため、愚痴を言っても大丈夫だと思っていた。
「・・・お前」
どす黒く威圧的な声を聞いて、将次の体が硬直する。
そこにいたのは、将次の父・将一だった。
次の瞬間、将次は殴り飛ばされていた。
「う”っ・・・!」
悶える将次に、将一は怒り狂った表情で言う。
「一族の恥さらしめ。【木王】という下位の能力を持って生まれたばかりか、最下位の生徒如きに触れられるとは。誇り高き八岳の一族をどうしてくれるというのだ!」
「ご、ごめんなさ_」
しかし、再び将一は将次の腹を蹴った。
「いいか? 俺らは事実が広がらないよう上層部に圧力をかけ、公表を止めた。そのために、現当主の力も必要だった。そのせいで、さんざん俺は現当主に言われたんだぞ? 親父も庇ってくれねぇ。テメェのせいだ」
「・・・!」
「ったくゴミが。・・・いっそのこと、養子でも取ろうか」
そう言いながら将一は立ち去った。
「クソ・・・!!! アイツのせいで、卑怯者のせいでクソ・・・!!!」
痛みを堪えながら将次は叫んだ。
◆◆◆
鹿児島にある八岳家の屋敷。
そこで、八岳家当主・国将もまた、怒っていた。
本家でないとはいえ八岳家の血を濃く引く者が、Aクラス最下位に足を殴られたのだ。
国将は上層部の中でも八岳家に近い者達を通し、守の追放への圧力をかけていた。
しかし、結果はかなり期間に差があるとはいえどちらとも謹慎。
八岳家の誇りを傷付けた。
「我が誇りを傷付けた者がどうなるか教えてやるとしよう・・・将行」
「はっ」
そう言われて来たのは、国将の次男の将行。
次男ではあるが、長男が上位の能力を持って生まれられなかったため、将行が次期当主という立場になっている。
「Aクラス最下位のガキを殺せ。手段は問わん」
「・・・かしこまりました。大井家に通達いたします。」
◆◆◆
大井家は、八岳家の分家だ。
その歴史は古く、江戸時代には既に分家として独立していた。
加えて、その実力の高さから、分家の筆頭として多くの分家を取りまとめる一族でもある。
「・・・なるほどのう。暗殺に優れた分家の者を向かわせろ、ということか」
古い屋敷でそう言ったのは、大井家当主・大井綱景だ。
「ふむ・・・【迷霧】の晴嵐家がよいだろう。晴嵐家に向かうよう指示せよ」
その言葉に、傍にいた使用人が応じた。
「かしこまりました」
こうして、守に魔の手が迫り来る。