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召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~  作者: さとう
第五章

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生徒会長リリーシャ、風紀委員長ダオーム、王子サンバルト、教師オズワルド

 アルフェンは、右腕を軽くスナップさせて調子を確かめる。

 いつもと同じ、モグの右腕だ。

 召喚獣の王ジャガーノート。人の世界のために戦った真なる英雄……アルフェンは、そう考えていた。

 モグの姿で聞いた声は、ジャガーノートの声だったのだろう。だが、アルフェンにとってモグもジャガーノートも同じ、ずっと一緒に過ごしてきた大事な友達だ。

 アルフェンは、演習場へ向かう。すると、演習場へ向かう通路に二人の男性がいた。


「ほっほっほ。いい面構えじゃの」

「うむ……」


 一人は長い顎髭の男性。『(タワー)』のグレイ教授。

 もう一人は、黒いコートに真っ白な髪、片目が完全につぶれ顔中に縫い後のある男性だった。

 アルフェンは警戒するが、グレイ教授は笑う。


「安心せい。こいつは顔こそ恐ろしいが小心者じゃよ。なぁリッパー」

「む……そ、そうだな。はぁ、『死神(デス)』なんて称号とこの顔のせいで怖がられるけど、私は繊細な医者なんだ。その、あまり怯えないでくれると助かる」

「え……えっと」


 いきなりすぎてアルフェンは困惑。

 すると、グレイ教授が笑顔で自己紹介。


「これから試合じゃから簡潔に挨拶じゃ。わしはグレイ、こっちはリッパー……ダモクレスやガーネットと同じじゃよ」

「あ……」

「い、いちおう私は医療班として待機している。その、気を付けて。あと、やりすぎないように」

「はい。わざわざありがとうございます」


 アルフェンは頭を下げる。

 恐らく、釘を刺しに来たのだろう。アルフェンが『憤怒』の魔人を倒したことは王国中に伝わっている。いくら模擬戦とはいえやりすぎない保証はない。

 アルフェンは気合を入れなおし、演習場内へ。

 すると、そこにいたのは四人……リリーシャ、ダオーム、サンバルト、オズワルドだ。

 全員が、制服ではなく戦闘用の服に着替えている。


「───来たか」


 リリーシャが静かに呟く。

 リリーシャは全身を覆う黒いフィットスーツだ。短いスカートを履き、腰のベルトには『刀』と呼ばれる『斬る』ことに特化した剣が二本差してある。上半身はプロテクターのような鎧を装備し、長い黒髪は赤い髪紐でポニーテールに結わえていた。


「アルフェンっ!! オレは以前より強くなった!! もう前のようにはいかんぞ!!」


 ダオームは、以前と同じ全身スーツだ。

 だが、所々に装甲が追加されている。さらに手には手甲を装備していた。


「リリーシャの弟か……悪いが、弟だろうと手は抜かないよ」


 サンバルト王子は、リリーシャと対照的な白いスーツだった。

 腰にはレイピアを装備し、手にはヘルメットのような物を持っている。

 

「ふん……」


 オズワルドは、全身ローブで身体をすっぽり覆っていた。

 露出しているのは顔だけ。ローブの下には何を隠しているのか。

 

「……四対一、か」


 アルフェンは、不思議なくらい落ち着いていた。

 相手はA級召喚士三人、そしてA級に近いB級召喚士が一人。アベル程度なら三分と持たないだろう。

 だが、アルフェンは怖くなかった。

 首をコキっと鳴らし、右手をプラプラさせる。


『では、召喚士の準備を』


 演習場内に、ファルオの声が響く。


「来たれ我が騎士、『アークナイト』!!」

「唸れ、『ライボルトアックス』!!」

「輝け閃光、『シャイニング・レゾナンス』!!」

「蠢き喰らえ───『ア・バオア・クー』」


 三メートルほどある純白の甲冑騎士、紫電を纏った巨大戦斧、『光』を媒介とした黄金の不死鳥、そして……禍々しい、巨大な毒蜘蛛が召喚された。

 圧倒的な戦力。

 記者たちは圧倒され、ごくりと唾を飲み込む者、蒼ざめる者、腰を抜かす者と多くいた。

 そして、メルも。


「───ちょっと、分の悪い賭けだったかも」


 ツゥ───と、汗を流す。

 A級を舐めていた。少しアルフェンに入れ込みすぎていたとようやく自覚。

 メルはアルフェンを見た。


「……え」


 アルフェンは、全く表情を変えていない。

 それどころか、自分の右手を見て───淡く微笑んだ。

 そして、右腕をリリーシャたちに向けて開く。


「奪え───『ジャガーノート』!!」


 アルフェンの右腕が、肩から漆黒の外皮に覆われる。

 右の首筋から顔半分も黒く染まり、右の白目部分が赤く、瞳が黄金に染まった。

 アルフェンは、清らかな力が満ちていくのを感じていた。


「いい加減、はっきり認めさせてやる。今やあんたらが無視し続けた俺の方が上だってな」

「面白い……アルフェン、私がどれほど強いか、貴様より上だということをその身で思い知れ!!」


 リリーシャは剣を抜く───二刀流だ。

 さらに、召喚獣アークナイトも腰の大剣を抜き、丸盾を構えた。


『そ、それでは……はじめ!!』


 ファルオの合図と同時に、アルフェンとリリーシャは走り出した。


 ◇◇◇◇◇◇


 アルフェンは、姉リリーシャの戦闘スタイルをよく知っていた。

 相棒型召喚獣は、召喚士が命令を出し召喚獣を操作するパターンが殆どだ。相棒型は召喚獣自身が能力を行使するのが殆どなので、召喚士は直接戦わない場合が多い。

 だが、リリーシャは違う。

 召喚獣アークナイトと共に、自身が剣を振るうスタイルだ。

 リリーシャは腰の二刀を抜刀、アルフェンを両断しようとする。


「『斬』!!」

「らぁっ!!」


 右手を『硬化』し、リリーシャの剣を受ける。

 速い───アルフェンは思う。過去、リグヴェータ家の実家で見た速度と桁が違う。寄生型の身体能力がなければ、アルフェンでは見きれないだろう。

 すると、リリーシャの背後に大剣を構えるアークナイトが。

 三メートルほどの巨体から振り下ろされる剣は圧倒的だ。リリーシャを巻き込まないよう、アルフェンだけを両断しようとする。


『オォォォォォォッ!!』

「───ちっ」


 アルフェンは舌打ちし、真横に飛んでアークナイトの剣を躱す。

 すると、それを読んでいたのかリリーシャも真横に飛んだ。


「シッ!!」

「っとぉ!?」


 そのまま横薙ぎ。アルフェンは辛うじて躱す。

 さらに、リリーシャの連斬りは続く。オウガほどではないが攻撃が止まらない。だが、オウガにはない『流れ』を感じる剣だった。

 さらに、アークナイトには『能力』もある。


「アークナイト!!」

『───』


 リリーシャが叫んだ瞬間。アルフェンの前に(・・・・・・・)アークナイトが現れた(・・・・・・・・・・)

 アークナイトはすでに剣を横に薙いでいる。アルフェンは右腕を巨大化させて受ける。

 そして、リリーシャが左側に(・・・・・・・・・・)現れた(・・・)


「くっ……」


 無防備な左側に、リリーシャの剣が。

 アルフェンは両足に力を込め、跳躍し回避した。

 アークナイトは、いつの間にか手放していた丸盾を引き寄せ、左手に装備する。


「……能力か」

「知っているだろう?」

「ああ。『入替(シフトチェンジ)』……アークナイトと自分の位置を入れ替える能力。まさか、装備品の位置とも入れ替えることができるなんてな」

「ふん。出し惜しみはしない」


 アークナイトの能力。それは、リリーシャとアークナイトの位置を自在に入れ替えること。入れ替えにはアークナイトの装備品も含まれ、リリーシャがアルフェンの左側に入れ替わったのは、アークナイトがあらかじめ手放していた丸盾との位置を入れ替えたからだ。

 召喚獣と召喚士が共に戦うことを前提とした能力。特殊な能力ではない、ただの《入れ替え》だけで、A級召喚士、さらにアースガルズ召喚学園の頂点に君臨したリリーシャの戦闘スタイルだ。


「召喚獣と召喚士が躍るように翻弄する剣舞。『騎士と剣姫の円舞曲ナイツ・オブ・ワルキューレ』か……さすがだな」


 アルフェンは素直に称賛した。

 だが、リリーシャには特に響かない。

 それに───敵はリリーシャだけではない。


「オォォォォォォッ!! 『サンダァァァァァァァッ!! ボンバァァッ!!』」


 紫電を纏わせた斧を持ち、回転しながらダオームが突っ込んで来た。

 まるで独楽。どう見ても回りすぎだが、ダオームは笑っていた。 

 リリーシャはアークナイトに抱えられ回避。

 アルフェンは拳を握り───。


「させないよ」

「ッ!?」


 真横にいたサンバルトが、レイピアを突き出した。

 アルフェンは寸でのところで突きを躱す。

 サンバルトの気配をまるで感じなかった。身体を向き直した時にサンバルトはいなかったのだ。


「捕獲ゥゥゥゥゥッ!! 『ア・バオア・クー』!!」

「なにっ!?」


 右腕に。紫色の『糸』が絡みついた。

 ジュワジュワと右腕の外皮に食い込み、何かが沁み込んでいく。

 それが、オズワルドの召喚獣である巨大蜘蛛から吐きだされた糸だと気付いた。


「くっ……キモイな!! このっ!!」

「無駄だ。この糸は斬れんよ。それに、我が能力『毒毒』は触れたモノを徹底的に蝕む!! それがたとえ魔人だろうとなぁ!!」


 オズワルドが吠えた。

 そして、雷光を纏い回転するダオームが迫ってくる。

 アルフェンは、糸を巻き込むように限界まで右腕を巨大化させ、身体を右腕で隠す。


「だらぁぁぁぁゃーーーーーーっ!!」

「ぐ、あっ!?」


 『硬化』は、どんな攻撃からも守る。だが衝撃までは防げない。

 アルフェンは、ダオームの『サンダーボンバー』の直撃を喰らい吹っ飛び、何度も地面を転がった。

 

「どぉぉぉぉぉぉだぁぁぁぁぁぁっ!! これで借りは返したゾォォォォォッ!!」


 叫ぶダオーム。

 あんなに回転していたのに、目をまわした様子はない。どうやらダオームもかなり鍛えているようだ。

 転がったアルフェンはゆっくり立ち上がり、ポンポンと制服の砂を払う。

 オズワルドの糸は千切れていた。


「やるな。でもまだ、ヒュブリスにも及ばない」

「……なに?」

「確かに、あんたらは強い。でも……俺の方が強い」


 ゾワリと、アルフェンの気配が変わる。

 リリーシャも、ダオームも、サンバルトも、オズワルドも感じた。

 アルフェンは、本気ではない。

 

「正直なところ、俺はあんたらなんてどうでもいい。今まで散々俺を無視したくせに兄弟ツラする奴とか、S級S級やかましいA級教師とか、メルの兄貴とか……」


 コキコキと首を鳴らす。

 アルフェンは、ほとんどノーダメージだった。


「でも、許せないことはある。たとえば……F級を見殺しにしたこと。それを謝らないこと。そんなことどうでもいいみたいに話しかけて屈服させようとすること。ああ、けっこうあったわ。はは、どうでもよくないな……」


 アルフェンは、リリーシャとオズワルドを見る。


「とりあえず、そういうのを含めて……実験させてもらう」


 右腕を構え、ゆっくりと握り締めた。

 ビシビシと、右腕が軋むような音が響く。

 そして───アルフェンは呟いた。


「『完全侵食(エヴォリューション)』」


 右腕がさらに変異し、右腕だけではなく全身を覆う。

 身体も大きくなり、顔が魔獣のような顔つきになる。そして、変異が全身を覆い、アルフェンは変わった。

 召喚獣ジャガーノート。その真の姿。

 変異したアルフェンは、右腕の指をゴキゴキ鳴らした。


「じゃあ、相手してもらおうか。殺す気で来いよ」


 ここからが、真の戦いの始まりだった。

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