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召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~  作者: さとう
第五章

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アルフェンとファリオ先生

 A級召喚士オズワルドは、アースガルズ召喚学園職員室でイライラしていた。

 原因はS級召喚士。魔人討伐という輝かしい功績を残したことで、王国内の評価はうなぎ登り。S級反対派だった教師も国内の評判を聞いてあっさり寝返った。


 そして、S級反対派だった貴族もあっさり手のひらを反したのである。

 オズワルドの実家は子爵家で、S級反対派筆頭だった。だが、『憤怒』の魔人討伐者アルフェンの名が国内で有名になり、反対することで不利益が発生するかもしれないとなるや否や、オズワルドから離れていった。

 もはや、A級召喚士はS級召喚士の次の位。

 A級召喚士の中には、S級召喚士になろうとする者まで現れ始めた。現在、S級召喚士になるためには、S級召喚士筆頭であるアルフェン・リグヴェータに認められなければならないというデマまで広がっている。


 オズワルドは、A級召喚士が頂点ではなく、S級召喚士への通過点になり始めている現状に腹が立っていたのである。

 そして、職員室で仕事をしていると、嫌でも耳に入ってくる。


「S級召喚士アルフェン・リグヴェータ。いやぁ、やってくれましたなぁ」

「ええ。聞きましたかな? S級召喚士のために貴族たちが資金提供をするとか」

「ほお! S級校舎は木造ですし、これを機に立派な校舎にする必要がありますな」

「そうですな。S級召喚士は少数精鋭ですが、これからのことを考えると……」


 称賛の声ばかりだ。

 いつの間にか、S級反対派のオズワルドの周りに、教師は近づかないようになっていた。 

 だが、オズワルドは気にしない。A級召喚士こそが最上格だと今でも思っている。

 そんな中、学年主任に昇級したファリオが職員室へ。

 副主任の女性教師であるマリーに話しかけた。


「マリー先生。よろしいでしょうか?」

「はい。なんでしょう?」

「実は、記者会見のことで。一度、アルフェン君ときちんとお話しようと思いまして。放課後、S級校舎に行きますので、一緒に来ていただけませんか?」

「わかりました。それにしても……記者会見ですか」

「ええ。メテオール校長の案でして。一度、きちんとS級召喚士という立場をはっきりさせようとのことですな」

「立場、ですか?」

「ええ。このアースガルズ王国の最高戦力という立場です。それと、先程正式に予算が下りたので、S級召喚士専用の制服を作るそうです。それの採寸も合わせて行うので」

「なるほど……ふふ、S級召喚士ですか。初めて聞いた時には驚きましたが」

「そうですなぁ……まさか、魔人を三人滅ぼすとは。それに一体は『憤怒』……」

「正直、S級召喚士がいなかったら、王国は崩壊していたかも……」


 マリーはぶるっと震え、ファリオはごくりと唾を飲む。

 話が聞こえてきたオズワルドは、ギリっと歯を食いしばった。


「おのれ……S級召喚士め」


 苛立ちを滲ませ、オズワルドは書類仕事に没頭する。


 ◇◇◇◇◇◇


 いつも通りの授業、いつも通りの訓練が終わった。

 授業はガーネットが担当。数日前から『法王』のアルジャンも授業をするようになった。内容は主に他国の召喚士やその歴史……アルジャンの授業は面白く、アルフェンたちも学ぶ意欲がわいていた。


 訓練は、ダモクレスに加えヴィーナスも加わった。

 主に、召喚獣を使った実戦形式の訓練だ。格上すぎる二人を相手に戦っているうちに、アルフェンたちの実力は知らず知らずのうちに上がっていく。

 ある日の放課後、ファリオと副主任のマリーがやってきた。


「えー、ガーネット様から聞いていると思いますが、S級召喚士専用制服を作りますので、簡単な採寸を行います。それとアルフェンくん、きみは記者会見の打ち合わせもありますので、教室に残って下さい」

「……はぁ」


 アルフェンは露骨にため息を吐く。面倒くさがっているのがすぐにわかった。

 採寸のため、女子は隣の教室へ。男子は教室で採寸した。

 そして、採寸が終わるとウィルとニスロクは。


「じゃ、記者会見の打ち合わせ頑張れよ。じゃあな~」

「ばいば~い」


 どこか楽し気に出て行った。

 ニスロクはよく意味がわかってなさそうだが、ウィルはあからさまに馬鹿にしていた。

 アルフェンは再びため息……さっそくファリオと打ち合わせする。


「さて、記者会見ではきみに関することがたくさん質問されると思います。全てを正直に答える必要はありませんが……何が質問されるかは大体わかりますので、質問内容を整理していきましょうか」


 ファリオは分厚いファイルを取り出す。

 アルフェンはゲンナリしつつ、ファリオの質問に対する答えを考えていった。


「趣味は?」

「えー……訓練?」

「まぁいいでしょう。それと、読書など入れて知的さをアピールしてみますか」

「読書は嫌いじゃないから別にいいですけど……」

「好きな食べ物は?」

「肉と魚」

「ふむ。せっかくですし、ミノタウロス肉のステーキ、ダークフィッシュのムニエルにしておきましょうか」

「えぇ~……? それ、意味あります?」

「ははは。まぁそれっぽくいきましょう。好きな教科は?」

「……歴史」

「ふむ。まぁよいでしょう」


 と、雑談みたいな打ち合わせは一時間にも及ぶ。

 大まかな打ち合わせが終わり、ファリオはファイルを閉じた。


「うむ。こんなところでしょうな。あとで質問をまとめたファイルを届けますので、記者会見の際にはお使いください」

「はーい……あー疲れた」


 アルフェンは、机に突っ伏してだらけた。

 そして……ファリオは言う。


「アルフェンくん。きみの家族のことだが……」

「はい?」

「リグヴェータ家に報奨金の支払いがあった。きみの魔人討伐に対する報酬だ」

「報酬って、樽いっぱいの金貨もらいましたけど」

「ああ。それはあくまで一部、あまりにも大金なので、残りはきみの実家に送ったのだよ……済まない」

「……あー」


 ファリオが謝った理由がなんとなくわかった。

 報奨金は支払われるという話だけで、金額がどれほどなのかアルフェンは確認しなかった。寮に届いたのは樽いっぱいの金貨だったが、どうやらそれだけではなかったらしい。


「一応、きみに話をしてから送るつもりだったのだが……オズワルド先生が勝手に許可を出してしまったのだ」

「…………へぇ」

「すまないな。彼はA級召喚士こそが最上格だと未だに言っている」

「別にS級が最上ってわけでもないと思うんですけどね」

「そうだな……済まない」


 恐らくだが、報奨金は実家の物になるだろう。

 今頃、大量の金貨が届いて両親は大喜びだ。


「はぁ……あの、ファリオ先生。リグヴェータ家の苗字捨てたいときってどうすればいいですか?」

「また、すごいことを聞くね……そうだな。きみ自身が領地をもらい、爵位を与えられるとか」

「ほうほう」

「あとは……アルフェンくんが貴族に婿入りするとか?」

「婿入り……」


 アルフェンは「うむむ」と唸る。

 

「……こんな言い方をするのもアレだが、きみならまた功績を挙げるだろう。そのとき、金貨ではなく領地をいただけるように言ってみるのはどうだ? まぁ、そこまで大きな領地はそう簡単にもらえないだろうが」

「……検討してみます」


 残る魔人は二体。

 『色欲』はウィルの獲物だ。


「『強欲』の魔人か……そいつ倒して、領地をねだってみようかな」

「は、ははは。簡単に言うね」


 アルフェンは本気だったが、ファリオは苦笑するように笑った。

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