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召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~  作者: さとう
第四章

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規格外の魔人

 アースガルズ王城地下特別室。

 メルは歯を食いしばりながら、父であり国王のゼノベクトに詰め寄っていた。


「お父様!! なぜわたしをここに!? 外では『憤怒』の魔人が暴れているのですよ!? 王であるお父様が真っ先に隠れるなんて、なんて情けない!!」

「メル。あまり父を困らせるものではない……アースガルズの血を守るためには、これが一番なのだ」

「国民を見捨てるおつもりですか!?」

「大丈夫だ。特A級の召喚士が戦っている」

「一体何人ですか? 大半の英雄たちはここの守護をしているのでは?」

「……いいかいメル。最も大事なことは、我らアースガルズ王族……始まりの召喚士の血を守ることだ」

「違います。国とは人、国民を守るのが最優先です」

「メル……」


 メルは父を冷たい目で睨む。

 あまりにも無能だった。話にすらならない。

 そして、何も言わない、彫像のように佇む兄サンバルト。


「お兄様……あなたは、この現状をどうお思いですか?」

「……『憤怒』は、私たちの手に負える相手ではない。英雄、二十一人の召喚士に任せるべきだ。大丈夫、英雄たちならきっと勝てるさ」


 優しげな笑みが、メルをさらに苛立たせる。

 部屋を出ようにも入口も出口もない。『隠者』トリスメギストスの召喚獣の能力『空間転移』でしか出入りができない特殊な部屋だ。

 そのトリスメギストスは、部屋の隅で無言で立っている。


「……くっ」


 外ならば、メルの手駒に命じていくらでも対応できる。だが……この状態では、何もできない。

 無能な父。何も見えていない兄。そして父の操り人形の『隠者』。

 味方のいない状況に、メルは歯噛みした。


「アルフェン、なんとかなさい……!!」


 できることは、祈ることだけだった。


 ◇◇◇◇◇◇


「…………」

「あ、姉上……」

「……ど、どうしますか?」


 リリーシャは、『憤怒』の魔人オウガ襲撃の話を聞き、B級とA級を総動員してS級校舎近くにやってきた……が、何もできずに離れた場所で様子をうかがっていた。

 簡潔に言うと、次元が違いすぎて介入できないのである。


「……待機だ」


 精いっぱいの声を絞り出す。

 アベルと対峙したことから、魔人の力量は知っていたつもりだった。だが、オウガは次元が違った。最強の二十一人の召喚士が四人がかりで戦っている。

 さらに、最強の召喚士が到着するまで戦っていたのは……アルフェンだった。

 臆しているにも関わらず、勇敢に戦っていたのである。

 奇しくも、F級を見捨てた時と状況は似ていた。

 ただ、見ているだけ。


「…………ッ」


 自分はA級召喚士。

 その誇りはあった。が、その肩書が霞んでいた。

 魔人の脅威は、リリーシャ程度でどうにかできる存在ではなかったのである。

 すると、様子を伺っていた生徒たちを掻き分けるように、オズワルドが現れた。


「リリーシャくん」

「お、オズワルド先生」

「ここはS級たちに任せ、下がりたまえ」

「え……」

「先ほど、貴族連盟から正式に命令が下った。B級以上の召喚士は王城の守護に回る」

「王城の守護?」

「うむ。王族と避難した貴族を守る仕事だ。騎士団と王国所属の召喚士たちもいる……そこで、勉強させてもらいなさい」

「わかりました……では全員、アースガルズ王城へ向かうぞ!!」


 リリーシャは生徒たちを率いて王城へ向かった。

 キリアスが一度だけ立ち止まり、S級校舎前を……アルフェンを見た。

 だが、ダオームに背を押され、歯をくいしばり立ち去った。

 残されたオズワルドは、冷めた眼で校舎前の戦いを見ていた。


「ふん。S級は当然だが、特A級も消えてもらいたいものだ。過去の遺物め……」


 オズワルドは舌打ちし、その場を立ち去った。


 ◇◇◇◇◇◇


 メテオールは、王城から動けずにいた。

 たまたま王城に用事があり、オウガが襲来した。すぐに学園に戻ろうとしたが、国王が王城の守護を命じたおかげで、動けずじまいであった。

 理由を説明し戻ろうとしたが……学園には優秀な教師がたくさんいる。戻らずとも大丈夫と言われたのだ。

 いくらメテオールと言えども、国王の命令は絶対。

 なので、王城内を一人で回っていた。


「……はぁ」


 メテオールは深い溜息を吐いた。

 あまりにも、無力だった。

 たまたま外にいたダモクレス、ガーネット、ヴィーナス、アルジャンの四人がオウガと戦闘を始めたとは聞いたが、それっきり情報がない。

 その前に、S級の少年が戦っていたと聞いたが───。


「…………」


 メテオールは、空を見上げた。

 天気はよく、日差しが眩しい……今、こうしている瞬間にも、戦いは続いているのだ。

 すると、メテオールの前から歩いてくる神官が一人。


「メテオール」

「……ガブリエルか」


 十代前半にしか見えない少女だ。

 真っ白な長い髪、高貴な神官服を纏った白い少女は、メテオールに微笑みかける。

 メテオールは、スッと目を細めた。


「命令違反はいけませんよ?」

「わかっておるよ」

「……大事なことは、王族の血を守ることです」

「わかっておる」

「そのために、我らがすべきことは」

「しつこい」


 メテオールはガブリエルの声を遮った。

 ガブリエルは話を遮られたことを特に怒ってもいない。

 柔らかな笑みを浮かべたまま、最後に告げた。


「『憤怒』には絶対に勝てません。また、過去のように気まぐれを起こして去ることに期待しましょう。それまで、ダモクレスたちに任せて、ここを守ることだけを」


 メテオールは最後まで聞かず、ガブリエルの真横を通り過ぎた。

 『審判(ジャッジメント)』ガブリエルの正論は、あまりにも腹立たしく聞こえた。

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