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召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~  作者: さとう
第四章

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『憤怒』の魔人オウガ

『強欲』の魔人ベルゼブブ。

『色欲』の魔人フロレンティア。

『怠惰』の魔人ニスロク。

『嫉妬』の魔人レイヴィニア。

『傲慢』の魔人ヒュブリス。

『暴食』の魔人アベル。


 そして、『憤怒』の魔人オウガ。

 最強と呼ばれた二十一人の召喚士が戦い、勝てる気がしなかった魔人である。

 オウガは『無敵』だった。どんな攻撃も受けたが、どんな攻撃でも耐えきった。

 緑色の血が大量に流れても、四肢が千切れても、内臓が零れ落ちても死ななかった。

 その闘争心に、二十一人の召喚士が心折れようとした瞬間───オウガは突然戦いをやめ、どこかに去って行ったのだ。

 主に前線で戦っていたのはベルゼブブ、フロレンティア、そしてヒュブリス。残された三人では召喚士を押さえることができず、魔帝は封印された……それが真実だった。


「なぜ奴が戦いを放棄したのか不明だが……『憤怒』の魔人は最強だ。それに、この感じ……かつて戦った時よりも強くなっている!!」


 ガーネットが苦虫を嚙み潰したような顔をする。

 アルフェンたちが知らない話だ。アルフェンたちは、『二十一人の召喚士が魔人を追い詰め、魔帝を封印することに成功した』としか聞いていない。

 だが、ガーネットの表情が物語る。さらに、校庭にいるオウガの威圧感がそれを語る。


「ど、どうしよう……」

「…………」


 レイヴィニアは、ガタガタ震える手で、アルフェンの袖を引っ張った。

 今にも泣きそうな顔で。ニスロクも眠気が冷めたのかガタガタ震えている。

 アルフェンは、大きく息を吐き───右腕のジャガーノートを発動させる。


「お、俺が時間を稼ぎます……二十一人の召喚士なら、勝てますよね?」

「……わからん。奴の能力は恐らく……『不死身』だ。どんな致命傷も奴には致命傷にならない」

「でも、俺なら……俺の能力なら」

「……頼む」


 触れれば、能力を使えば勝てる。

 だが、圧倒的な何かを感じたアルフェンは、恐怖を感じていた。

 今までにない自信をオウガから感じる。だが……袖を引くレイヴィニアの弱々しさが、アルフェンの背中を押した。


「ウィル、いけるか……?」

「フン……『色欲』の前に準備運動だ。援護はしてやる」

「フェニア、サフィー、レイヴィニアたちを頼む……アネルは」

「…………」


 アネルは真っ青だった。

 無理もない。いくら戦闘訓練を受けていても、元は平民の女の子だ。寄生型召喚獣の身体能力があっても、オウガの相手は難しそうだった。

 アルフェンは、深呼吸をする。


「───よし!!」


 そして、教室の窓から校庭に降りた。

 ほんの数十メートル先に、斧を持ったオウガがいる。


「あん? なんだお前?」

「お前を倒しに来た……いくぞ!!」

「ハッ!! んん?……その眼、あぁぁぁん!? なんでテメェがその眼を……ジャガーノートの『第三の瞳(マクスウェル)』を持ってやがる!!」

「さぁな。モグがくれたんだよ……俺にな!!」

「ふっざけんじゃねぇ!! ジャガーノートを倒すのはオレだったんだ!! ドレッドノートのクソ野郎、勝手にオレの獲物を!! あぁイライラする!! ムカつくぜぇぇぇぇぇっ!!」


 オウガが地団駄を踏むたびに、地面に亀裂が入る。

 

「テメーをぶっ殺して憂さ晴らしさせてもらうぜぇぇぇ!! ガァァァァァァーーーッ!!」

「っ!!」


 斧を構えたオウガが、アルフェンに向かって突っ込んで来た。


 ◇◇◇◇◇◇


 恐るべき圧力だった。

 ダモクレス以上の圧。『融合』したダモクレスに匹敵───アルフェンは考えるのをやめた。

 突っ込んでくるオウガ。斧を振りかぶりアルフェンを両断しようとする。

 圧はあるが、回避できる速度だった。


「ガァァァァァァーーーッ!! ウッガァァァ!! ガルルァァァッ!!」

「っく……め、滅茶苦茶、だっ!?」


 ブンブンブンと、斧が滅茶苦茶に振り回される。

 回避はできる。隙も多い。アルフェンは右手を開き、『硬化』を込める。

 

「あぁぁぁぁぁイラつくぜぇぇぇぇっ!! 当たれヤァァァァっ!!」

「嫌だ、ねっ!! 喰らえ!!」


 大振りの一撃を躱し、右腕を『硬化』させた。

 途端に、関節がビシッと固まり右腕の動きが止まる。このまま全身が『硬化』され、空間も時間も停止───。


「ぐるぁぁぁっ!! いっでぇぇぇ!! いだいぃぃぃっ!! ぶっ殺ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

「なっ───噓だろ!?」


 硬化が消えた。

 確かに、右腕に触れて硬化を発動させたはず。硬化したら最後、時間も空間も何もかも硬化し、最後は死を迎える無敵の能力のはずだ。

 だが、消えた。どういう理屈か不明だが消えた。


「ジャァァァァァァ!!」

「っぐ!? くそ、なんだお前!? 能力」

「シャガァァァァッ!! ガァァァァァァーーーーーーッ!! ジャッシャァァァァっ!!」


 止まらない。

 話す暇もないくらいオウガは暴れる。

 何度か『硬化』してもすぐに効果が切れてしまう。ガーネットは『不死身』と言ったが、そんな理由で説明できる能力ではない。

 アルフェンは、斧をなんとかしようと決めた。


「ギャァァァァーーーーーッ!! ジャッシャァァァァ!!」

「このっ……」


 豪快な振り下ろしを紙一重で躱し、身体をひねって側面へ。

 拳を握り、斧を思いきり殴った。


「『獣の一撃(ジャガーブレイク)』!!」


 ゴォォン!!と、斧に振動が伝わる……が、斧は折れるどころか傷一つ付かない。

 アルフェンの硬化した右手と互角の強度。


「効くかァァァッ!! ジャァァァ!! ガァァァーーーッ!!」

「っく……とまんねぇ!?」


 止まらない。

 オウガの動きは滅茶苦茶だが、アルフェンがどんなに殴っても止まらない。外皮が固いのか傷一つ負わず、ただ斧を無茶苦茶に振り回している。

 ガーネットは、冷や汗を流しながら呟いた。


「あれが『憤怒』の戦法だ。ただ滅茶苦茶に斧を振り回す……あたしらがどんな攻撃を加えようと止まらないし、怒りに任せて暴れるだけの姿は召喚士たちに恐怖を植え付けた。能力は『不死身』……」

「違うよ」


 ガーネットの説明を遮り、レイヴィニアは言う。

 アルフェンの戦いを見ていた全員がレイヴィニアを見た。


「オウガの能力は『不死身』なんかじゃない。あいつの能力は『回帰』……どんな怪我をしても、『自分が認識する最強の自分』の状態に戻るんだ。あいつは、常に『怒り狂った自分』に自分を回帰させてる……一度暴れたら永遠に止まらない。どんな能力もオウガを止められない」


 アルフェンとオウガの戦いは、未だ終わりを見せない。

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