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三人のS級

 ウィリアムがS級に加わり、三人となった。

 それから三日後……ウィリアムもガーネットとダモクレスの授業を受けるようになる。驚いたことに、ウィリアムは頭もよく料理上手、ダモクレスとの戦闘訓練もそつなくこなしていた。

 ダモクレスは、驚いていた。


「ほほう! 一対一でタイタンと引き分けるとはやりおる!」

「はぁ、はぁ……ば、大したこと、ねぇよ……」

「がっはっは!! 無理をするな、我が召喚獣は鍛えに鍛え抜かれた最強の召喚獣だ!! 負けるのは当然、引き分けるのは奇跡じゃ!!」

「くっそ……」


 正直、アルフェンとサフィー二人でも、タイタンと引き分けるのは難しい。かろうじて転ばせたり一撃入れるだけで精一杯なのだ。

 最初、『一対一でやらせろ』とウィリアムが言い出したときは、止めるのが大変だったが……ウィリアムの強さには本当に驚かされた。

 ウィリアムは、アルフェンとサフィーの元へ。


「王国を守る二十一の召喚士か……正直、勝てる気がしない」

「歴戦の英雄だしな。かつて魔帝を封印した召喚士と、その一族だ。俺やお前とは経験が違う」

「お前はオレより弱いだろうが」

「う、うるさいな……」

「ふふっ、二人とも仲良しです」

「「誰が!!」」


 アルフェンは、楽しかった。

 サフィーとウィリアム。新しい仲間がいる。

 モグは、この光景を見たら喜んでくれるだろうか。

 アルフェンはそっと右手を押さえ、思いきり拳を握り締めた。


「よし!! ダモクレス先生、次は俺がやります!! 一対一でお願いします!!」

「おお!! いい気合である。ではやろうか!!」


 右腕を変化させ、アルフェンはタイタンに向かって突っ込んでいった。


 ◇◇◇◇◇◇


「いてて……タイタン、少しは遠慮しろって……」


 アルフェンは、教室で頬と腹を押さえ呻いていた。

 タイタンに一撃入れたはいいが、お返しにと二発殴られたのだ。召喚獣を発動させていたので大した怪我ではないが、痛いのは痛い。

 すると、アルフェンの前の席に座っていたウィリアムが振り返る。


「お前、その右腕は接近戦特化だな。タイタンも接近戦特化だから、単純に相性の問題だと思うぞ」

「え……なにお前、アドバイスとか初めてじゃね?」

「オレは思ったことを言っただけだ。オレの目的を達成するのにここは都合がいい。町のチンピラや野良魔獣を相手にするよりよっぽどいい。お前も強くなって、オレの相手ができるようになれ」

「……ふん。今に見てろよ。それと、いいこと考えたんだ」

「あ?」


 アルフェンはニヤッと笑い、ウィリアムに向かって人差し指を立てる。


「確かに、お前は俺より強い。でも……すぐに俺がお前より強くなってやる」

「ほぉ……で?」

「そうすれば、お前は俺より強くなろうと努力するだろ? そして俺より強くなる……そうして、俺はまたお前より強くなる。そしてお前もまた俺より強く……これを繰り返せば、俺たちの強さは天井知らずだ」

「……お前、けっこう馬鹿だな」

「はぁ!? い、いい案だろ!!」

「ぷっ……まぁ、いい案かもな。じゃあ、まずはオレより強くならねぇとな」

「ふん、軽い軽い」


 と───アルフェンが笑った瞬間だった。

 アルフェンとウィリアムの頭に、分厚い本の角が叩き付けられたのである。


「あだぁ!?」「いっでぇ!?」

「お前ら、あたしの授業を無視してお喋りなんていい度胸だね!! 三人しかいない教室でよくもまぁそんな堂々と……」

「「……すみませんでした」」

「ぷっ……ふふ」


 真面目に授業を聞いていたサフィーが笑った。

 ガーネットは怒り、ガミガミと二人を怒鳴る。

 アルフェンは叱られながら思った。


 まるで、普通の学校生活のようだ、と。


 ◇◇◇◇◇◇


 S級寮に、一通の手紙が届いていた。

 差出人はキリアス。アルフェンの兄で、内容は『話があるから来い』というものだ。

 談話室で手紙を読んでいたアルフェン。ウィリアムとサフィーは興味津々だった。

 

「キリアス兄さんからだ」

「……お前の兄貴か?」

「ああ。話があるから明日、B級専用演習場に来いってさ」

「演習場……B級演習場は学園で最も大きな演習場です。B級の生徒しか使用はできず、申請すれば教師が個別指導してくれるとか」

「そんなところで、お前の兄貴はなんの話かね?」

「さぁ……まぁ、なんとなく想像できるけど」


 恐らく、キリアスの背後に誰かいる。キリアスなら手紙なんて回りくどい真似はしない。S級寮や校舎に来ないまでも、アルフェンを見かけたら声をかけてくるはずだ。


「まぁ、行くよ」

「……オレもいく。面白そうな匂いがするぜ」

「わ、私も行きます!」

「えー……いや、いいよ」

「でもでも! 手紙には『一人でこい』なんて書かれてません!」

「いや、俺に当てた手紙だし……まぁ、いいか」


 アルフェンは手紙をしまい、ソファに寄り掛かった。

 

「B級か……」


 ふと、幼馴染のフェニアが思い浮かぶ。

 生徒会と対立した後、めっきり会話がなくなった。

 アルフェンは寮と校舎の往復しかしていないが、S級に関するうわさは学園中に広まっている。

 アルフェンはもちろん、学園に来たばかりのウィリアムや、友達付き合いのないサフィーにはわからなかった。

 B級生徒たちが、『反S級』を掲げていることに。

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