姉、兄、兄は戦う
魔獣の数は一向に減らず、召喚士や召喚獣が傷つき、味方の数が減ってきた。
リリーシャは作戦を変更。後方待機・国内防衛の部隊を前線に出し、負傷者を下げさせる。
そこで、待っていましたとばかりにダオームが現れた。
手には巨大な斧を持ち、全身がバチバチ帯電している。
「ハッハァァーッ!! 姉上、今行きます!!」
「兄上、ちょ、前に出過ぎ……」
ダオームが斧を振るうと、魔獣たちが一気に吹き飛ぶ。
キリアスはため息をつきながら、ゴーレムに命令。負傷者を運び出した。
最前線では、アルフェンが戦っているだろう。
それに、あちこちで聞こえる爆発音は、敵なのか味方なのか。可能性としては英雄である二十一人の誰かに違いない。
実際は、ダモクレスとガウェイン、ヴィーナスとアルジャンが大暴れしているのだ。さらにメテオールはたった一人で千体以上の魔獣を屠っている。
キリアスも負けじと、自分の仕事をこなす。
「兄上。負傷者はオレに任せて下さい!!」
「応ッ!! はっはっは!! このダオーム・リグヴェータ!! 『雷戦斧』のダオームが貴様らの相手だぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!」
どこか楽しそうに、ダオームは斧を振り回し特攻した。
キリアスは、ゴーレムに命令する。
「ゴーレム、『移動城壁』だ。壁を作りつつ、負傷者を回収する。手の空いてる者は私に続いてくれ!! これより、負傷者の救護に向かう!!」
ダオームと違い、キリアスは自分が前線で戦うタイプではないとわかっている。
ゴーレムの身体がバラバラになり、巨大な石の車輪がついた壁ができた。そこに、救護班が数名キリアスの元へ集まる。
「よし、負傷者の回収へ向かう。いいか、決して無理をするなよ!!」
前線で斧を振るうダオームはもちろん頼もしかった。だが、自分のやるべきことを自覚し、他者を気遣いつつも勇敢に前へ出ようとするキリアスも頼もしい。
救護班の一人が、ポツリと呟いた。
「これがリグヴェータ家の四姉弟か……さすがとしか言いようがない」
キリアスには聞こえていた。
だが、何も言わず少しだけ微笑んだ。
◇◇◇◇◇◇
リリーシャは、指揮官という立場ながら最前線で戦っていた。
すでに、融合形態である『閃光騎士・滑走形態』状態。鎧の馬に跨りながら戦場を駆ける姿は、美しい戦乙女のように見えた。
「全軍怯むな!! 間違いなくこちらが押しているぞ!!」
両手の刀を掲げ、召喚士を鼓舞する。
装備型、相棒型、特殊型の召喚獣たち。そして自ら武器を振るう召喚士たちが、リリーシャの姿に魅せられ、雄叫びを上げる。
リリーシャは、背後から襲ってきた巨大なトカゲを一刀両断する。
「勝利は、我らの手に!! 召喚士たちよ、戦え!!」
「「「「「ウォォォォーーーッ!!」」」」」
その様子を見ていたのは、大剣を担いだヴィーナスだ。
「やるじゃないか。お飾り、操り人形の小娘かと思いきや……なかなか、カリスマがある」
ブォン!! と大剣を振ると、数体の魔獣が両断される。
さらに、『黄龍』と融合していたアルジャンも降りてきた。
『ガブリエル。人選を間違えたのぉ』
「そうだね。それに、あいつはロクでもないことを考えてる。メル王女殿下が『気にするな』とか言ってたけど、どう思う?」
『ほっとけぃ。それより、この戦況……よろしくないぞ。あっちでダモクレスとガウェイン、向こうではメテオールが大暴れしておるが、それでも数は圧倒的に不利じゃ』
「フン。関係ないね……アルジャン、気合入れな」
『誰に言っておる。生涯最後、全身全霊で挑むわい!!』
アルジャンは再び上昇し、雷のブレスを吐く。
ヴィーナスも大剣を肩で担ぎ、小さく息を吐いた。
「ガーネット……悪いが、まだそっちにいけそうにない。ガキのお守りしなくちゃいけないからね!!」
ヴィーナスは、大剣を振り回しながら魔獣たちの元へ向かった。
戦況は未だに人間側が不利。
魔獣の三分の一も削れていない。
だが、それでも人間たちは諦めない。
最後まで、戦い続ける。それが召喚師と召喚獣だ。




