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決戦前/S級たちの想い

 決戦前夜。

 戦いに参加する全ての召喚師たちは、アースガルズ王国に集結した。

 魔獣側には、すでにベルゼブブが待機している。

 残り数時間。朝日が昇ると同時に、全ての魔獣に仕込んだ『蟲』を解除。本能の赴くままに暴れさせ、アースガルズ王国を壊滅に持ち込む。

 もちろん、召喚士の妨害も予定内だ。

 ベルゼブブは、アースガルズ王国の遥か後方にある小高い丘にいた。

 そして、小さな魔方陣を手から出現させ、それを地面に向ける。

 地面から、装飾の施された立派な椅子が出現した。

 すぐそばで見ていたアポカリプスは、椅子の前に跪く。そして、ベルゼブブも跪いた。

 そして───空間に亀裂が入り、純白の魔帝ニュクス・アースガルズが現れた。


「準備、どう?」

「全て完了です。朝日が昇ると同時に『蟲』を解除。アースガルズ王国を蹂躙します」

「ん、そっか。じゃあ……二人も暴れていいよ」


 ニュクスは椅子に座り、背もたれに寄り掛かった。

 ベルゼブブは驚き立ち上がる。


「で、ですが! 主の身に危険が」

「あたしが負けると思う? もう身体は完璧。ここにいる全ての召喚獣があたしに向かってきても、傷一つ付けられない。それに……この子たちもいるしね」


 ニュクスが左手で指を鳴らすと、巨大な黒狼ファフニールと怪鳥フレースヴェルグが出現した。

 二匹は唸り声をあげると、魔獣たちの元へ向かう。


「久しぶりに見たいなぁ。ベルゼブブの戦い♪」

「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーッ!!」


 ベルゼブブは奇声を上げると、身体がぐじゅぐじゅと音を立てる。

 あまりの歓喜に、人間態が崩れていた。

 アポカリプスは、跪いたままだ。


「アポカリプス、きみも」

「主の望むままに」

「ん……ちょーっと大人しくさせすぎたかも。影うっすぅ……」


 もう少し自我を持たせればよかった。ニュクスはアポカリプスを見ながら苦笑する。

 そして、左目が『第三の瞳(マクスウェル)』となり、遥か先を見据えた。


「アルフェン。見えてるんでしょ……? ここまで来なよ。相手してあげる♪」


 ◇◇◇◇◇◇


 S級たちは、アースガルズ王国の外壁にいた。

 外壁に備え付けられた見張り塔の屋上に、全員がそろっている。

 全員、S級召喚士の黒い制服を着て、魔獣たちのいる最前線を見ていた。

 もちろん、メルもいる。


「おい、お前……ここにいていいのか?」


 ウィルが言うと、メルがニヤリと笑う。


「トリスメギストスなら来ないわ。あの子、いい歳してあたしにビビってる小物だしね。二十一の英雄の中で『撤退』担当だし、最前線に来る度胸なんてないわ。それに、ちょっと脅したから」

「お、脅し?」

「聞きたい?」

「……遠慮します」


 思わず聞き返したフェニアに、メルは笑ってみた。

 すると、サフィーが言う。


「これが、最後の戦い……ですよね」

「ええ。『表舞台』では最後の戦い」

「表舞台?」

「そ、強大な敵って意味ではね。まぁ、気にしなくていいわ。政治的な敵とか、あなたたちには背負わせる気ないから」

「……はい」

「サフィー。あなたは、あなたの戦いをしなさい」

「……はい!」


 メルは、にっこり笑ってサフィーの肩を叩く。

 すると、レイヴィニアとニスロクがみんなの前に出た。


「みんな、聞いてほしい」

「ぼくたち……今まで役立たずだったけど、本気で戦うぅ~」


 二人は、いつになく真剣だった。

 レイヴィニアは、嬉しそうに笑う。


「にしし。うち、みんなに会えて本当に幸せだぞ! おいしいものいっぱい食べたし、みんなすっごく優しかった!」

「ぼくも、いっぱいお昼寝できたぁ~……えへへ」

「やめろ」

「「……え?」」

「縁起でもねぇこと言うなボケ。ったく……」


 ウィルが二人の話を遮る。

 全員が、心配そうに二人を見ていた。

 レイヴィニアは、決意したように言う。


「うちとニスロク。全力で戦うぞ」

「うん……!」

「アベルやヒュブリス、フロレンティア姉やベルゼブブ、オウガには『役立たず』って言われてた。でも……今は、みんなと一緒に戦いたい!」

「ぼくもぉ~!」


 決意は固かった。

 そんなレイヴィニアを、アネルは抱きしめる。


「ありがとう。レイヴィニア」

「アネル……」

「みんなと一緒。みんなと一緒に戦おう」

「うん!」

「ニスロク、あなたも」

「みんないっしょなら怖くないぃ~!」


 ニスロクは両手をバタバタさせていた。

 少し、緊張がほぐれた気がする。

 そして、アルフェンは……遥か前方を見ていた。


「…………」

「アルフェン?」

「いる……ニュクス・アースガルズ」

「えっ」


 アルフェンの右目が、赤と黄金に変わっていた。

 そして、見た。全く同じ目が、こちらを見ているのを。

 アルフェンは、右手を強く握りしめる。

 そして───朝日が、昇り始めた。

 魔獣たちが、少しずつ動きだす。

 アースガルズ王国全部隊に命令が下される。

 召喚獣が、召喚されていく。

 ついに、戦いが始まった。

 この世界を賭けた、魔帝と人間の戦いが。

 アルフェンは、右腕を突き出して叫ぶ。


「奪え───『ジャガーノート』」


 人と召喚獣の、世界を賭けた戦いが始まった。

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