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召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~  作者: さとう
第九章

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決戦間近③/子供たちの想い

 アースガルズ召喚学園。

 ここでも、戦争に向けた準備が始まっていた。

 A級召喚士はほとんど王城に向かったため、リリーシャから生徒たちを任されている生徒会メンバー数名と教師、そしてB級召喚士たちでまとめている。

 生徒の一人グリッツは、あわただしい学園内の寮室で、ディメンションスパロウの「たまぴよ」に餌をあげていた。


「戦争か……なぁ、勝てると思うか?」

『ぴゅい?』

「……なんでもない。以前のボクだったら興奮してたかもしれないけど、正直……今は怖い」


 誰もいないからこそ、心情を吐露した。

 目の前にいるフカフカした巨大な鳥のヒナは、可愛らしく首を傾ける。


「あの村。魔人が襲って来た村で……ボクは、演習じゃない『闘い』を経験した。自分で言うのもなんだけど、安全が約束された演習なんかと違って、本当の『闘い』だったよ。だからこそわかる。安全が約束された闘いなんかじゃない、命を失う危機を、同級生たちはわかっていない」


 グリッツは、部屋の窓を開けて外を見る。

 そこには、興奮したような笑みを浮かべて召喚獣を撫でる男子や、己の武器を振う女生徒がたくさんいた。グリッツは黙り込む。


「……でも、戦わなくちゃいけない」

『ぴゅるる』

「ふふ、お前を守らなきゃな。それに……」


 グリッツは貴族。婚約者がいる。

 義務的な挨拶や茶会でしか交流はない。だが……不思議と、彼女を守りたい。そんな気持ちがあった。

 そして、今はもういないフェニア。彼女のためにも。


「たまぴよ。ボクはやるよ。B級召喚士の名に恥じない戦いをする」

『ぴゅいーっ!』


 たまぴよは、『がんばれ!』とでも言うように鳴いた。


 ◇◇◇◇◇◇


 ウルブスは、リリーシャの傍で執務に追われていた。

 部隊編成の再確認、それぞれの召喚獣の特性、作戦指揮について……怠け者のウルブスにとって、リリーシャに任される執務は地獄だ。

 だが、ウルブスはなんとなく察していた。

 リリーシャと二人きりの執務室内は、ペンの滑る音しかしない。そんな中、ウルブスはペンを止めて言う。


「姫さん、なーんでオレに執務やらせる?」

「お前が一番暇そうだからだ」

「嘘だね。まぁ暇なのは否定しないけど」


 リリーシャのペンも止まる。

 ウルブスは、苦笑しながら言った。


「この戦い終わったら、部隊辞めるつもりだろ? んで、オレに押し付ける。だからこうして執務やらせたり、部隊長とかやらせるんだろ?」

「……そうだ」

「やっぱな。辞めたあとは自分の領地経営か?」

「そうだ」

「で、なんでオレ?」

「お前が適任だからだ。その洞察力、思慮深さ、実力。お前は気付いていないだろうが、人を惹きつける魅力がある。お前ならこのピースメーカー部隊を引っ張っていけるだろう」

「……魅力ねぇ? オレ、サボりたいしのんびり暮らしたいんだけど」

「そういいつつも、お前は仕事をきっちりこなす。そういうところだ」

「へいへい……ったく」


 再びペンを動かす二人。

 ウルブスは、大きな欠伸をしながら言う。


「くぁ~あ……なんで辞めるんだ?」

「私の目的は一つ。爵位を継ぎ、リグヴェータ家の領地経営だ。辺境伯となり管理する敷地は広範囲に増えた。この戦いで得た功績と共に、本格的な領地運営を開始する」

「そういや、姫さんの目的はハナから決まってたんだっけ。いいのかねぇ? 『女教皇』の地位をくれた『審判』を裏切ってさ」

「裏切りはしない。辞めるだけだ」

「へいへい。ま、姫さんは誰かの手足として動くより、誇り高き一輪の花として輝く方が似合ってる。そういうところ、好きだぜ」

「……それは告白か?」

「んー、姫さんはオレ好みだしな。結婚したら充実しそうだ。でも……オレと結婚したら部隊率いるヤツいなくなるだろ」

「そうだな……」

「それに、好みは好みだが、結婚とはまた別だ。抱き心地のいい女はベッドで愛してやれるが、生涯を共にする女はベッドの上だけじゃない、心から通じ合った相手じゃねぇと」

「…………」

「おっと失礼。ま、そういうこった。姫さんみたいなのは抱かれるより抱いてやる感じのナヨッた男だ。案外、あの王子様とかいいんじゃね?」

「……殿下は次期国王だ」

「さぁ~? ……それはどうかな? オレとしては、あの軟弱王子様より、腹黒王女様(・・・・・)のが王に向いてると思うぜ」

「…………」


 ウルブスはペンを止めた。そして、ニヤリと笑う。


「賭けるか?」

「なに?」

「あの軟弱王子が王になるか、腹黒王女が王になるか」

「……アースガルズ王国で女王が誕生した例はない」

「初代は女王だろ。ニュクス・アースガルズ」

「順当にいけばアースガルズ国王はサンバルト殿下を王に指名するだろう」

「順当にいけば、ね。オレは違うと思う。あの腹黒王女様がやらかすと思うぜ」

「……ウルブス。お前、何者だ?」

「さぁね。ただの暇人ってやつさ」


 ウルブスは、再びペンを動かす。

 賭けはしなかったが、謎はできた。

 リリーシャは、ウルブスが只者ではないと感じていた。だが、今はもういい。


「なぁ姫さん。仕事終わったら一杯どうよ?」

「……いいだろう」

「よっしゃ! さっさと終わらせるぜ!」


 ちなみに、仕事終わり、バーに向かった二人の間にサンバルトが乱入することになる。

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