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戦いの果てに

 『融合』のリリーシャと『完全侵食』のアルフェン。

 互いに、最強の姿で向かい合う。

 リリーシャは馬に変形したアークナイトに騎乗、双剣を構える。

 アルフェンはジャガーノートに変身。巨大化させた右腕を『硬化』する。

 そして───リリーシャが動いた。


「ハァッ!!」


 滑走形態(スレイプニール)となったアークナイトは、本物の馬のように走り出す。

 リリーシャは剣を振りあげる。確かに速い、だがアルフェンは見えていた。

 右手を振りかぶり、リリーシャに向けて放つ。


「『獣王の一撃ジャガーノート・ブレイク』───えっ」


 拳が伸びた瞬間、リリーシャは消えた。

 一瞬で消えた。アルフェンの眼も捕えきれないほど速かった。

 そして、脇腹に衝撃が走る。


「なっ!?」

「フン。貴様、動く瞬間は『硬化』が切れるようだな……勝機はあるということだ」


 リリーシャに脇を切られた。

 完全侵食状態のジャガーノートが斬れた。

 確かにリリーシャの言う通りだ。ジャガーノート形態時、動かなければ常に全身を『硬化』している状態になる。だが、動くときはその状態を解除している。

 リリーシャの能力は『入れ替え』だ。召喚獣と自分の位置を入れ替えるのが能力のはず。

 だが、今のリリーシャは召喚獣と一つ。入れ替えの条件を満たしていない。

 つまり、入れ替えではない……?


「お前、能力……」

「気付いたところで対処できまい!!」


 スレイプニールが再び走り出す。

 すると、今度は分身した。何人ものリリーシャが、アルフェンに向かって向かってくる。

 

「このっ!! 『停止(パン)───チッ」


 『停止世界(パンドラ)』は使用できない。リリーシャが死ぬ。

 だからアルフェンは、右目を酷使する。

 そして、肉体をフルに使い、リリーシャが捉えきれないほど高速で移動した。

 だが、リリーシャも速い。


「くっ……」


 リリーシャは、アルフェンより速かった。

 正確には速いのではない。短距離間で『転移』を繰り返している。元の能力は『召喚獣と召喚士の位置交換』だったが、召喚獣と融合したことにより、リリーシャが指定する場所へ一瞬で転移可能となったのだ。

 アルノーと違い、転移にタイムラグがない。まさに一瞬の転移。

 それを繰り返すことにより、分身しているようにも高速移動しているようにも見えた。

 一対一ならば、そう簡単に負けることがない能力。


「はぁっ!!」

「ぐぁっ!?」


 背中を斬られた。

 動かなければ『硬化』が守ってくれる。だが、アルフェンはそれをしない。

 もっと自分を追い込む。圧倒的な力でねじ伏せる。


「まだまだ……ここからが本番だ!!」


 気合を入れ、右腕を巨大化させ、切り刻まれながら全力で動く。

 だが───リリーシャはアルフェンの動きを読んでいた。

 未だかつてない強敵となったリリーシャ。

 相性が悪い。とことん、相容れない姉と弟。ウィルやアネルならこの速度にも対応できるだろうが、パワー重視のアルフェンとは相性が悪い。


「どうした!! このままみじめに切り刻まれろぉぉぉぉぉぉっ!!」

「ぬ、ガァァァァァァっ!!」


 光速の斬撃でアルフェンは刻まれる。

 『停止世界』を使えば動きは簡単に止められる。だが、それではリリーシャが死ぬ。

 それに、アルフェンはまだ手に入れていない。

 刻まれながら、心の奥にある『何か』に語り掛ける。


『モグ───俺は、負けない』

『───』

『お前が何かに怯えているのはわかる。でも……俺が付いてる。俺にお前がいるように、お前には俺が付いている。二人一緒なら、どんな困難だって───』

『───』

『モグ、一緒にやるぞ。全部、ぜんぶを使って。ニュクスを倒すぞ!!』

『───……』

「だから、ありったけの力を!!」

『───…………」


 ドクン───……と、アルフェンの心臓が跳ねた。


 ◇◇◇◇◇◇


 リリーシャが優勢。勝利は目前だった。

 

『勝てる───』


 リリーシャの刃は、アルフェンを刻める。

 文字通り、今まで歯が立たなかったが、今は違う。

 『融合』を手に入れ、圧倒的な力で弟を───。


「えっ?」


 だが、見た。

 刻まれたジャガーノートの右目が、全身が輝き───。


「───あっ」


 気が付くと、リリーシャの右腕が肩から切断された。

 衝撃が背中を叩く。血を吐き、なぜか動けなかった。

 そして、見た。


「───これが、新しい……そうか!!」


 人間に戻ったアルフェンが、右腕を突き出していた。

 もう、リリーシャを見ていなかった。

 嬉しそうに、笑っていた。

 そして気付く。ああ、アルフェンは……自分に興味がない。

 ウルブスを含むA級召喚士が駆け寄ってきた。そして、抱きかかえられリッパー医師の元へ運ばれる。


「綺麗な切断面だ。これなら三秒で治せる」


 そういって微笑むリッパー医師は……死神にしか見えなかった。

 リリーシャは、ここで気を失った。

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