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召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~  作者: さとう
第八章

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追い込め、自分

 アルフェンに向かってきたのは、装備型召喚獣を持つA級召喚士たち。

 動きに迷いがなく、精錬されていた。手に持つのは剣、槍、鈍器、大鎌、薙刀。そして見覚えのある武器……巨大戦斧を振り回すダオームだ。

 どうやら、この部隊はダオームが率いているようだ。


「突撃ィィィィィィィィ!! 奴を殺せェェェェェェッ!!」

「殺す気満々だな!!」


 ダオームの表情は憤怒。

 よく見ると、身体全体の筋量が増えている。相当な努力を重ねたのだろう。

 以前は両手で振り回してた大斧を、片手で振り回している。

 アルフェンは、右腕を巨大化させ真正面から迎え撃つ。


「だらっシャァァァァッ!!」

「ふんがっ!!」


 ダオームの斧を右手で受け止めると、地面に亀裂が入った。

 以前より強くなっている───アルフェンはそう思いつつ、ニヤリと笑う。

 すると、ダオームの斧から紫電が迸る。


「ライ!! ライライライィィィィィィィィ!!」

「ぬっ、っぐ!?」


 全身が硬直するような痺れだ。

 すると、アルフェンの両サイドから槍と薙刀を持った召喚士が迫る。さらに、ダオームの後方では弓を構えた召喚士が何人もいた。

 徹底的に殺しに来ている。

 アルフェンは、この追い詰められた状況に感謝していた。


「フハハハハハッ!! どうだ!!」


 ダオームは笑う。

 アルフェンの右目がカッと開き、黄金の瞳に紋様が浮かぶ。

 ニュクスの『第三の瞳(マクスウェル)』を打ち破った時と同じくらいの力を注ぎ、新たな力を発現させた。


「いいね。もっと……もっと来い!! 『第三の瞳(マクスウェル)罪深き理(ドーハスーラ)』!!」

「「「「「───ッ!?」」」」」

 

 ビシィ!!と、ダオームとその部下たちの動きが止まる。

 元々、『第三の瞳(マクスウェル)』は『経絡糸』を視て『生気』を操る眼……アルフェンは、ほんの少しだけ『生気』を操る術を獲得した。

 生物である以上、生気は循環している。その流れをほんの少しだけ操る力。アルフェンはこの能力を『第三の瞳(マクスウェル)罪深き理(ドーハスーラ)』と名付けた。

 肉体にかかる負担はかなりのモノだ。

 今のアルフェンは、同時に十人ほどの生気しか操れない。さらに、一人に対してわずか五秒ほど。さらにさらに射程距離は二十メートル。

 かなり限定的な能力だが、かなり使える。


「ぬ、ぐっ!?」

「喰らいやがれ!! 『獣の薙払(ジャガースラッシュ)』!!」

「ごぁぁっ!?」


 巨大化した右腕が横薙ぎに振るわれ、接近していた召喚士たちが吹き飛ばされた。

 ダオームだけは『ライボルトアックス』を盾になんとか踏みとどまる。だが、受けた衝撃で膝をついてしまった。

 

「ぐ、この」

「じゃあな!!」

「ぶげっ!?」


 アルフェンは跳躍。ダオームの頭を踏んずけ、後方で矢を番えていた召喚士たちを殴り飛ばした。

 これくらいなら、まだ『完全侵食』を使うまでもない。

 まずは、自分の肉体を限界まで酷使する。

 相手は千二百人。しかも全員がA級召喚士なのだ。


「来たっ!!」


 向かってきたのは、相棒型召喚獣の群れだ。

 狼、鳥、蜥蜴、ドラゴン、巨牛と何でもあり。数が多すぎて生気を操るのは難しい……というより、ダオームたちに使ったせいで、早くも身体が重かった。

 なので、アルフェンは右腕を巨大化させて跳躍する。


「『獣の大地爆砕インパルス・ディザイア』!!」


 そして、五指を広げて地面に叩き付けた。

 大地に亀裂が入り、召喚獣たちの動きが止まりかける。

 だが、召喚獣たちは次の行動へ───能力の使用だ。

 口から炎、水、雷を吐きだしたり、亀裂などお構いなしに突進する巨牛。

 アルフェンは着地し、右手を『硬化』させ盾のように構えた。 

 炎が右腕に直撃するも無傷。だが、巨牛の突進までは耐えきれず、吹っ飛んでしまう。

 なんとか体制を整え直すが、別の召喚獣が突っ込んで来た。


「ぐっ……しつっけぇな!!」


 ブタのような召喚獣を殴り飛ばす。

 だが、数は一向に減らない。

 ブタは群体型……数が多いタイプの召喚獣だ。


「ああもう、邪魔くせぇ! 豚の丸焼きにして食っちまうぞ!!」


 ブタの群れをひたすら殴り飛ばす。

 すると、他の相棒型だけでなく、武器を持った召喚士もまた増えてきた。

 数は千二百人。アルフェンはまだ十人も倒していない。

 少しずつ、疲労が蓄積してきた。


「へへっ、いい、いいぞ……っ!! もっと、もっとだ!!」


 徹底的に自分を追い込む。

 アルフェンは、この状況を楽しんでですらいた。

 リリーシャ側は、戦力を温存すらしているのに対し、アルフェンは本気だった。

 

「俺は強くなる。だからモグ……怯えないで、俺に力を貸してくれ!!」


 アルフェンは、ひたすら召喚獣を殴り続ける。


 ◇◇◇◇◇◇


「……数は」


 リリーシャがポツリと呟く。

 答えたのは、側近にして秘書のA級召喚士、ライナだった。  

 

「か、数……きゅ、九百、きゅうじゅう、あ、千、千を超えました」

「…………」


 ライナの召喚獣は『撮影型』で、この平原全体に小さな『目』を無数に配置している。その『目』の一つが映像を映し出し、リリーシャとその親衛隊が視聴していた。

 映像には、未だに人間の姿で戦うアルフェンがいた。

 戦闘が始まり一時間以上経過……アルフェンは、ボロボロになりながら一人、また一人と倒している。

 そんな映像を眺めながら、キリアスは小さく息を吐いた。

 すると、リリーシャが言う。


「嬉しいか?」

「え?」

「お前はアルフェンと仲がいい。弟の活躍が嬉しいだろう?」

「……はい」

「そうか」


 キリアスは、偽ることなく本心を告げた。

 怒られるかもしれない───そう考えたが、リリーシャは特に何も言わなかった。

 リリーシャは、この場にいる親衛隊十名に言う。


「奴は強敵だ。全員、心してかかれ」

「はいはーい。姫さん、ちょいいいか?」

「……なんだ?」


 ウルブスだった。

 リリーシャ直属の親衛隊に昇格したウルブスは、手をプラプラさせながら言う。


「あれ無理だわ。降参しようぜ」

「……は?」


 ウルブスの降参宣言に、A級召喚士に昇格し親衛隊に選ばれたアルノーが唖然とした。リリーシャと似た『能力』を持つアルノーは、リリーシャの戦闘訓練相手でもあった。

 ウルブスは、映像を指さす。


「いやいや、あれ無理でしょ。あ!! 見ろ見ろ、サンバルトの坊ちゃ……あ、殴られた。ほら、勝てないって。ここにいる全員でやってもさ、無理だって」

「なら、どうする?」

「降参。別にいいじゃん。降参しても失うモンはねぇし。それに、これ見てわかっただろ? 姫さんの弟はマジの怪物だ。オレにはあいつが最強の召喚師にしか見えねぇよ」

「…………」

「なぁ姫さんよ。もういいじゃねぇか。弟君にバトン渡して、オレらにはオレらにしかできないことやろうぜ。なーんとなくわかるぜ……あんた、『上』から何か言われてんだろ?」

「…………」

「なぁ、そこの」


 ウルブスが見たのは、ピースメーカー部隊の制服の上に貴族風のマントを付けた二人の男女。ヒルクライムとユウグレナだった。

 ウルブスの問いかけに、ヒルクライムは首を振る。


「何を言い出すのか、私にはさっぱりわからんな。上からの指示とは、リリーシャ隊長の指示、ということかね?」

「違う違う。例えば……『審判』とか?」

「ほう、どういうことかね?」

「いやぁ~……別に? 魔帝がもう三十日後くらいに大群で来るかもしれねぇのに、こんな無駄な模擬戦になんの意味があるのかねぇ? ……って思ってさ。姫さんがこんなバカなこと考えるわけねぇし、言えるとしたら……王族であるあんたらか、さらにその上の『審判』くらいなんだよなぁ」

「わけがわからん」

「だな。ま、くだらない推測だ。例えば……『審判』は、魔帝を滅ぼす気がない・・・・・・・・・・・、なーんて」

「……正気か、貴様」


 ヒルクライムはウルブスの正気を疑った。

 ヒルクライムだけではない。この場にいる全員が「何をいってるんだこいつ」みたいな目でウルブスを見ている。今や、リリーシャのことなど誰も見ていなかった。


「たぶん、ギリギリのところだと思うぜ」

「……?」

「この模擬戦で互いに消耗させる。んで魔帝と戦いS級とピースメーカー部隊が共倒れ……残るのは? 脅威の無くなった世界だけだ。つえー召喚士はみんなやられちまった後だしな。そこに『審判』が付け込んで……なんて妄想しちまったんだ」

「……貴様は正気を失っている。隊長、この男を除隊させた方がいい。今に混乱を招くぞ」

「いやいやいや、妄想だから妄想。毎日暇でよ」


 ウルブスはケラケラ笑う。

 だが、その意見はなぜか無視できなかった。

 魔帝、S級、ピースメーカー部隊。これらが消えれば、残るのは二十一人の召喚士だけ。だが、その二十一人もまた、封印を解いて魔帝との戦いに参戦する。

 強大な力が、一気に消える機会でもあった。


「ま、いいさ。そんなことよりライナちゃん、残り何人かな?」

「あ、はい! えっと……え、噓。残り四十人……あ」


 ライナが何かを察した瞬間、リリーシャとその親衛隊の前に、ボロボロになったアルフェンが空から落ち、着地をした。


「はぁ、はぁ、はぁ……よし、残りは、お前ら……だけ、だ!!」


 アルフェンが右手を構え……気が付いた。

 目の前にいるリリーシャと親衛隊たちの雰囲気が、なんとなく険悪だったのだ。

 訝しみ、アルフェンはキリアスに聞く。


「あの、キリアス兄さん……なんかあったんですか?」

「あー……いや、まぁ」

「……むぅ」


 なんとなくやりづらいアルフェン。だが、リリーシャが前に出た。


「全員待機。こいつの相手は私がする」

「えっ……た、隊長!?」

「アルフェン。私を倒せばお前の勝ちだ。だいぶ疲弊しているようだが、容赦せん」

「……いいぜ。むしろ、望むところだ」


 アルフェンは右手を構え、リリーシャは『アークナイト』を召喚した。

 リリーシャは、まっすぐアルフェンを見る。


「お前のおかげで理解した。ふふ、目指す者がいれば、どこまでも強くなれるとな」

「…………」

「だからこそ、私は貴様を超えよう。貴様が私を超えて見下すように。私もまた貴様を超え、このアースガルズ王国最強の称号を得る」

「…………っ!?」


 リリーシャの背後に立つアークナイトが、リリーシャに跪く。

 まるで、忠誠を誓う騎士。

 リリーシャは優しく微笑み、左手を掲げた。


「『融合(アドベンド)』」


 召喚士最大最強の戦術である『融合』だった。

 アークナイトの四肢が分離、装甲の一部がリリーシャに装備される。

 ボディ部分が変形し、新たな頭部が形成、四肢が形成されていく。

 鎧を纏ったリリーシャは跳躍。変形し『馬』になったアークナイトに騎乗。手には巨大な二本の『刀』が握られていた。


「なっ……」

「『閃光騎士(アークナイト)滑走形態(スレイプニール)』……これが私の最強戦術」


 リリーシャは、二刀を器用に馬上で振り、アルフェンに突き付けた。


「行くぞ、アルフェン。貴様との戦い、ここでケリをつける!!」

「…………」


 アルフェンは、右手を構えた。


「面白い!! 俺もここから本気だぞ!! 『完全侵食(エヴォリューション)』!!」


 ジャガーノートと化したアルフェン。戦乙女となったリリーシャ。

 姉と弟、最後の戦いが始まった。

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