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ピースメーカー・ラプソディ

 ピースメーカー部隊。

 特A級召喚師『女教皇』リリーシャを筆頭に、A級召喚士で組織されたアースガルズ王国最強部隊。その名は早くもアースガルズ王国中、それどころか周辺国まで轟き、この世界最強部隊として認知されつつあった。

 アースガルズ王国からの支援はもちろん、周辺国からも支援や『ぜひ我が国の召喚師も』と入隊志願の召喚師まで来るようになり、ピースメーカー部隊の隊員数は五百を超えていた。


 数が増えたので、それぞれの部門を設立させた。

 戦闘部隊。支援部隊。斥候部隊。補給部隊。医療部隊……部隊数だけで十を超え、さらに細かな隊分け、部隊長の選抜、日々増える入隊志願の対応。

 これらの仕事をするため、執務部隊という書類仕事専門の部隊まで立ち上げた。

 

 数が増えたピースメーカー部隊だが、決して変わらないことが一つある。

 それは、『完全実力主義』だ。

 貴族だろうが平民だろうが王族だろうが、部隊を率いることができるのは強者のみ。

 リリーシャは、アースガルズ王国の郊外に新設された、ピースメーカー部隊の本部・最上階執務室で紅茶を啜っていた。


「……くだらん」


 机に散らばっているのは、縁談の書類。

 当然ながら、受けるつもりなどない。

 リリーシャは、一つの町ほどの敷地であるピースメーカー部隊の本部を窓から眺めていた。


「ふ、ふふふ……くくくくくっ」


 笑いが出た。

 リリーシャが欲しかったものが、ここにはある。

 権力、強者。そして、その頂点に立つ自分。

 リリーシャは、最近よく未来を想像していた。


「世界最強部隊の指導者。そしてリグヴェータ辺境伯の当主……領地にはなかなか戻れないだろう。ダオームを領主代行にして、キリアスに補佐を命じ……ああ、また爵位が上がるだろうな。辺境伯だけでは収まらないかもしれん」


 リリーシャは、満たされつつあった。

 最も欲しかったのは、権力。

 女王気質とでもいえばいいのか。ヒトの上に立つのが気持ちよかった。

 リリーシャは、執務用椅子に腰かける。すると、部屋のドアがノックされた。


「入れ」

「入るよ、リリーシャ」


 サンバルトだった。

 補給部隊に配属されたサンバルトは、こうしてリリーシャに会いに来る。

 完全実力主義の部隊では、A級召喚師のサンバルトは下位に属していた。

 

「何か用か」

「えっと、ああ、その! 美味しいクッキーを買って来たんだ。よかったらお茶でも」

「必要ない。そんな暇があるのなら、与えられた仕事に戻れ」

「……リリーシャ。変わってしまったね。前のきみはそんな」

「私は変わっていない。この部隊の規律は『完全実力主義』だ。お前が王族だろうと、この部隊に所属している以上、私の部下だ。部下のお前に甘い顔をしていては、下のモノに示しがつかない」

「う……」

「わかったら行け。仕事の邪魔だ」

「うぅ……」


 サンバルトはすごすご退散した。

 それと入れ替わるように、ピースメーカー部隊の制服を着崩したウルブスが入ってきた。


「怖いねぇ、姫さん」

「……何のようだ?」

「サボりに来た。んで抗議、さらに配置換えの申請」

「どれも却下だ」

「……姫さんよぉ~」


 ウルブスは泣きつくように言う。

 立場が違っても、この男だけはリリーシャを『姫さん』と呼び続けた。

 リリーシャは、不思議とそれが嫌ではなかった。


「あのさぁ? 王様や『審判』サマの命令だからこのピースメーカー部隊に参加はするよ? でもさ、オレが希望したの『本部警備部隊』のイッチばん下っ端だったよね? な~んで最前線の『戦闘部隊』なのさ……しかも、第一部隊長ってよぉ」

「完全実力主義の結果だ」

「嫌だっつの!! オレは蒼空見上げながらのんびりしたいんだっつの!!」

「却下だ」

「姫さんよぉ~……」

「やかましい」

「ふん。じゃあいい、部下が愛想尽かして全員いなくなるまでサボリまくってやらぁ」

「好きにしろ」


 ウルブスは部屋のソファに横になると、本当に寝てしまった。

 リリーシャは完璧に無視。執務をはじめる。

 

「さて、入団希望の確認を……」


 履歴書を確認していると、一つ気になった。

 何気ない青年の履歴書だ。だが、出身地が。


「イザヴェル領地……確か、アルフェンが与えられた領地」


 もはや、殆ど接点のない弟だった。

 王国最強部隊はピースメーカー部隊で間違いない。だが、最強の召喚師はS級召喚士『愚者』アルフェン・リグヴェータであるとの声が多かった。

 そして、中には……最強部隊を率いるリリーシャと、最強の召喚師アルフェンが手を組めば、魔帝や魔人恐れるに足らず。との声もあった。


「……くだらん」


 リリーシャは、つまらなそうに書類を投げ捨てた。

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