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召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~  作者: さとう
第七章

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ウィリアム&ヘンリー①

 ウィルは数日かけてアースガルズ王国への道を歩いていた。

 今までずっと一人旅をしていたので野営は苦にならない。むしろ、久しぶりの一人旅は、フロレンティアとの戦いを振り返るのにちょうどよかった。

 自身の能力、フロレンティアの能力。相性は最悪だ。

 

「…………クソが」


 そう呟き、水筒に入れたスコッチを軽く飲む。

 フロレンティアに負けて以来、酒が美味いとは感じなくなっていた。

 ウィルは左手を見つめる。


「『貫通』……オレの弾丸は、あいつの『能力』を貫通することができなかった。『男』って理由だけで攻撃が通用しねぇだと? ……舐めやがって」


 ウィルの寄生型召喚獣『ヘッズマン』は、どんな物でも『貫通』してきた。

 アルフェンの『硬化』だけが破れなかった。ここで新たにフロレンティアが追加される。

 ウィルは左手を強く握りしめる。


「関係あるか……あいつは、オレが殺すんだ」


 失った家族、家、仲間、そして村……ウィルが全てを失った日のことは、決して忘れない。

 

「サラ、ヘンリー……もう少しだ」


 大事な妹、そして相棒……ウィルは歯を食いしばり、過去を振り返った。


 ◇◇◇◇◇◇


 ウィルの住んでいた村は、狩人(ハンター)たちが集まりできた村だった。

 主な生業は狩り、畜産。裏の稼業として用心棒などがあった。

 ウィルの家は、祖父母が牧場を経営し、父は狩人と用心棒、母と妹は牧場の手伝い、そしてウィルは父の狩り、牧場と用心棒の手伝いをしていた。

 ある日。ウィルはいつものように起床。朝食を食べるためリビングへ。


「おはよう……ふぁぁ」

「お兄ちゃん、もう朝ごはんできてるよ!」

「ああ、悪いサラ……母さん、ミルクある? のど乾いた」


 妹のサラは、適当に返事しつつ素通りした兄を軽く睨む。

 ウィルは母からミルクの入ったコップを受け取り、一気に飲み干した。

 すると、座って新聞を読んでいた父が言う。


「ウィル。しゃんとしろ。今日は」

「狩り、だろ? わかってるよ」

「ならいい。ヨナ、サラ、家のことは任せたぞ」

「はーい。おじいちゃんたちももう年だしね、あたしが牧場の牛たちをお世話しないと!」


 サラは、牧場の仕事が楽しくて仕方ないようだ。

 ちなみに、ウィルの家は母屋がウィル一家。離れには祖父母が住んでいる。

 食事を終えた一家は、それぞれの仕事に取り掛かる。

 母は朝食の後片付け、サラは祖父母の家に向かい牧場の仕事だ。

 ウィルは自室で狩人の服に着替え、父からプレゼントされた二丁の拳銃をホルスターに収めた。


「うし。へへへ、今日もカッコいいぜ」


 父からもらった拳銃。

 拳銃は、この辺りに住む住人たちの武器だ。

 剣や槍など使わない。使うのはせいぜいナイフや解体用の斧で、ガンマンたちの集まる村では拳銃が一般的な武器である。ウィルも幼少期から父に手ほどきを受けていた。

 外に出ると、父がすでに待っていた。


「遅い。全く……女じゃあるまいし、着替えに時間をかけるなよ」

「悪い悪い。じゃ、行こうぜ親父」

「ああ。今日の狩り場は裏山だ。魔獣も出る」

「知ってる。山の動物たちを守りつつ、必要な命をいただくんだろ?」

「そうだ。動植物は山の宝であり命。それらを脅かす魔獣を倒し、命の恵みをいただく……その気持ちを忘れるな」

「ああ、親父の口癖だ。耳タコだっつーの」


 ウィルは軽くおどけた。

 父は苦笑し、軽く指を鳴らす。


「カモン───『ペイルライダー』」


 すると、父の傍に漆黒の馬が現れた。

 馬に似ているのは身体だけで、顔だけが骨となり青く燃えている。

 父の召喚獣は相棒型。騎乗できる馬だ。

 さっそく跨り、ウィルも乗り込む。大型の馬なので四人は乗れる。


「ウィル、頼むぞ」

「ああ。行くぜ、ヘンリー」


 ふわりと風が舞い、ウィルの傍に一羽の『鷹』が現れた。

 大きな鷹はウィルの肩に掴まり、ウィルに甘えるように顔を擦りつける。


「よーしよし。いつも通りいくぜ、ヘンリー」

『クルル……』

「さぁ、いけっ!」


 ウィルの肩から飛んだヘンリーは、空高く舞い上がった。

 そして、ペイルライダーが走り出す。

 ヘンリーの能力は『鷹の眼(ホークアイ)』で、ウィルと視界を共有することができるのだ。

 ウィルは上空からの景色を、ヘンリーを通じてみている。


「今日もいい空だ……なぁヘンリー」

「ウィル。裏山に到着したら獲物を探せ」

「あい、あい、さー……」


 ウィルは、ヘンリーを通じて見る空が好きだった。

 父のペイルライダーに跨り大地を駆け、ヘンリーの視界で空を見る。

 狩場に向かうまで、この時間が何よりも好きだった。

 そして、裏山に到着……ウィルは気を引き締める。


「ヘンリー、獲物を探せ。まずは魔獣……山を荒らすバケモンからだ」


 魔獣は、すぐに見つかった。

 大きな二足歩行の犬……コボルトの群れだ。


「親父、いたぜ。コボルトだ」

「ああ。コボルトか……数は?」

「五体。どうする?」

「よし。お前一人でやれ。できるか?」

「朝飯前」


 ウィルはペイルライダーから飛び出し、拳銃を抜く。

 拳銃をクルクル回し、ヘンリーの眼を通じて見たコボルトの位置まで進む。

 コボルトはまだ気付いていない。ウィルは木の陰に隠れ、拳銃を構えた。


「さぁて、まずは……二匹!!」


 ズドドン!! ───二丁拳銃から発射された弾丸が、二体のコボルトの頭を貫通した。

 三体のコボルトはウィルに気付き、爪を見せつけ牙をガチガチ鳴らし向かってきた。


「馬鹿が、もう少し頭使えっての!!」


 そのまま拳銃を連射。コボルト二体が穴だらけになり倒れる。

 そして、残り一体のコボルトは跳躍し、ウィルの頭に喰らいつこうとした。


「ヘンリー、最後はお前が決めな」

『ガウ? ───ガヒャッ!?』


 上空から飛来したヘンリーの脚爪が、コボルトの脳に食い込んだ。

 コボルトは倒れ、そのまま煙のように消えていった。


「楽勝! ヘンリー、よくやったぜ」

『クォォン!』


 ヘンリーはウィルの肩に止り身体を擦り付けた。

 これが、ウィルの日常。

 ウィル十四歳。全てを失う一年前の日常だった。

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