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召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~  作者: さとう
第七章

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ウィルの心

 ウィルは、ボロボロのまま一人歩いていた。

 魔人フロレンティアに敗北し、今のままでは絶対に勝てないと打ちのめされた。

 向かっているのは、アルフェンたちのいる村。そして、不意に気付いた。


「……ははっ、いつの間にかあいつらのところに帰ろうとしてやがる」


 ずっと一人だった。

 だが、アースガルズ召喚学園のS級になってから変わった。

 騒がしい連中と一緒に過ごすようになり、それが当たり前となっていた。

 今も、自然とアルフェンたちの元へ帰ろうとしている。


「くっだらねぇ……」


 そう呟きつつも、足は止まらない。

 フロレンティアと戦って何日経過したのか。

 もしかしたら、アルフェンたちはもういないかもしれない。

 なんとなくだが、アルフェンたちは戦いに勝利し、そのままウィルを待たず帰った気がする。

 その考えは、間違っていなかった。


「……終わってやがる」


 村に到着すると、戦いの爪痕が残っていた。

 壊れた家屋、抉れた地面、そしてアルフヘイム王国軍。

 王国軍の一人がウィルを見て訝しみ……すぐに目を見開いた。


「まさか、行方不明になっていたウィル君か!?」

「行方不明……まぁ、そんなところだ」


 制服でわかったのだろう。兵士は別の兵士に何かを言い、傍に来た。


「酷い怪我だ……すぐに医者を呼ぶ。さぁ、こっちへ」

「……あいつらは?」

「あいつら? ……ああ、アースガルズ召喚学園の生徒たちか。彼らは先に帰ったよ。きみのことを心配していたようでね。見つけたら保護するようにと頼まれた」

「……保護、ねぇ」


 まるで子供だ。

 そう思い、ウィルは口の端を歪めて笑った。

 そして、兵士に一つだけお願いをした。


「なぁ……酒、あるか?」


 ◇◇◇◇◇◇


 傷の手当てをしてウィルは、酒瓶を片手にベッドでくつろいでいた。

 今日はこのまま休み、後日アースガルズ召喚学園までアルフヘイム王国軍が送ってくれる。親切だと思いつつも、ウィルは言った。


「いらねぇ。勝手に帰るからほっとけ」


 と、数日分の食料や寝袋をもらい、一人で帰ることにしたのだ。

 『送ってもらう』なんてあまりにもガキっぽい、とウィルは言った。駄々をこねて一人で帰ろうとするのも十分に子供っぽいのだが、ウィルはそこまで考えてなかった。

 今は、ベッドでくつろぎ考えをまとめている。


「男は触れられねぇだと……? ちくしょう、女にでもなれってのかよ」


 ウィルは、フロレンティア討伐を諦めていない。

 酒を飲みながら考えていた。


「どうする。どうすれば奴を殺せる……?」


 ウィルの『ヘッズマン』の『貫通』でさえ、フロレンティアの『男子禁制(アンタッチャブル)』を貫くことはできなかった。

 ウィルは、左手を持ち上げる……まだ包帯が巻かれた痛々しい腕だ。


「ヘンリー……もうすぐだ。もうすぐお前の仇を討てる。親父、お袋……サラ」


 ウィルは、両親と妹の名前を呟く。

 目の前で殺された家族。蹂躙された村。そして、生き残った……いや、生かされた(・・・・・)ウィル。

 

「『色欲』……奴だけは、オレが殺す」


 左手を握りしめ、ウィルは改めて決意した。

 このままでは絶対に勝てない。そんな現実という名の壁が立ちふさがる。

 だが、ウィルは絶対にあきらめない。


「……チッ、まずはあいつらのところに帰るか」


 そう呟き、ウィルはベッドに寝転がった。

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