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入学式

 入学式。

 真新しい制服を着たアルフェンたちは、入学式が執り行われる大講堂へ来た。

 講堂内に入ると、中は扇状に広がった広い空間で、最前列がA~B級召喚士、その後ろがC級、D級となっている。F級は最後尾の隅で、これは毎年恒例のようだ。

 アルフェン、ラッツ、ハウル、マーロンが並んで歩いていると、ラッツがいきなり倒れた。


「あだぁ!?」

「どけよ、ゴミクズども。オレらの前歩いてんな」

「いってぇ……何しやがる!!」


 ラッツの怒りはもっともだ。

 アルフェンはラッツを助け起こすと、目の前にいる三人の少年と二人の少女を見る。

 少年の一人が振り返ると、背中には『C』と刺繍されていた。


「オレら、C級なんだよね……おめーらF級のゴミだろ? 目障りなんだよ」

「な、なにぃ?」

「おい、やめろラッツ」

「アルフェン、おいこら放せ!!」

「悪かった。先に行ってくれ」

「おいハウル!! マーロン!!」


 アルフェンとマーロンがラッツを押さえ、ハウルが少年たちに頭を下げる。

 そして、マーロンがラッツの口を押えた。


「もごご」

「は、賢明だな。雑魚は雑魚らしく固まって、隅っこでお茶でもしてな」


 少年がアルフェンの足を軽く蹴り、そのままC級席に座る。

 マーロンがラッツを押さえたまま、アルフェンたちもF級の席に座った。


「っぷは、おいなんで」

「静かにしろよ。わかってんだろ……召喚士は階級が全てなんだよ」

「……っ」

「オレらはF級、あっちはC級だ。楯突いたら痛い目に合うぜ?」


 ラッツがハウルに食って掛かるが、正論すぎて反論できない。

 感情的になったラッツは深呼吸する。ようやく落ち着き、肩をすくめた。


「悪かったよ……」

「いいさ。オレらは日陰者だし、上の連中には関わらないでのんびりやろうぜ。なぁアルフェン、マーロン」

「ああ。そうだな……どうせ召喚士になるつもりはないし、ここに通うのも義務だからだし」

「うん、ぼくも同じ……」


 お喋りしていると、残りのF級クラスメイトたちも集まり、全てのクラスの新入生が座った。

 講堂内が静かになり、壇上に一人の男性が現れる。


『ではこれより、入学式を始める。まず、学園長の挨拶から』


 男性は教師なのだろう。

 教壇から離れると、初老の男性がゆっくり歩いてきた。そして、教壇の前に立ち、少しだけ頭を下げる。

 アルフェンは、その男性を見て思う。


「すごいな……けっこうな歳っぽいのに、すごく鍛えた身体だ」

「おま、そんなとこ見てんのかよ」


 ラッツに茶化されたが、軽く肘で小突いて終わらせた。

 そして、学園長の話が始まる。


『まずは諸君。入学おめでとう。わしは学園長のメテオールじゃ』

「メテオール……確か、二十一人しかいない特A級召喚士……だっけ?」

「ああ。序列8位『剛力(ストレングス)』のメテオール……魔帝軍と戦った英雄だ」


 ラッツとハウルの話を聞きながら、メテオールの話を聞く。


『ここにいるのは優秀な原石たちじゃ。まだ鈍い輝きの者も、これからきっと輝くじゃろう。よく学び、よく遊び、よき友を得て強くなるのじゃ。そして、来るべき日……きみたちには期待している』


 シンプルな挨拶だった。

 メテオールはにっこり笑い、壇上を後にする。

 そして、男性教師が咳払いし、再び壇上へ。


『えー、それでは新入生代表による挨拶を』


 そう言うと、一人の少女が、講堂奥の通路から歩いてきた。

 薄く青くキラキラした髪が、講堂内のライトに照らされ光っている。

 小顔で目が大きく、しっかり結ばれた口元はとても凛々しく、まるで騎士のような佇まいだ。

 少女は壇上で一礼した。


『新入生代表。サフィア・アイオライトです』

「アイオライト……おいおい、公爵家かよ」

「みたいだな……初めて見たぜ」


 アイオライト公爵家。

 有名な召喚士の家系で、このアースガルズ召喚学園の出資もしている家系だ。

 アルフェンのような男爵家とは、地位の桁が違った。

 サフィアは懐から紙を取り出し読み上げる。誰かが考えたような作文を読まされているような気分で、サフィアの言葉ではなかった。

 挨拶が終わり、サフィアは最後に告げた。


『新入生のみなさん、これから卒業までよろしくお願いします』


 優秀な生徒。

 アルフェンは、住む世界の違いを感じながら言う。


「姉上のことだ。……優秀で、しかも主席なら生徒会に誘うだろうな」


 アースガルズ召喚学園生徒会。通称『アースガルズ・エイトラウンズ』は、この学園最強である八人の生徒会役員だ。

 現生徒会長の名は、『リリーシャ・リグヴェータ』……つまり、アルフェンの姉。

 弟のダオームとフギルはまだ生徒会役員ではないが、生徒会入りは確実と言われている。

 

 こうして、波乱の入学式は終わり、アルフェンの学園生活が始まる。

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