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ランペイジ

 フェニアとサフィーは、マルコシアスとグリフォンに騎乗しそれぞれ戦っていた。

 サフィーは陸、フェニアは空中と、それぞれの舞台で能力を行使し、互いをサポートしつつ魔獣たちを相手に戦っている。


「マルコシアス、『アイスブレイク』!!」


 マルコシアスが吐いた息が目の前のオークを氷漬けにし、そのまま体当たりで粉砕。サフィーは氷の剣を手に持ち、接近してくる大型の羽虫を斬りつけた。

 魔獣の数はとんでもない数だった。ミドガルズオルムが連れてきた魔獣に、バハムートが『適当に暴れとけ』と命令して放置していた魔獣たち。それらが村になだれ込み、家屋や畑を破壊したり家畜たちを襲っていたのである。


「ああ、村が……」

「グリフォン、『エアスラスト』!!」


 風の刃が魔獣たちを切り裂く。

 いくつかの家屋が破壊され、数体のオークが家畜のウシを殺し食っていた。

 そして、リリーシャたちの馬車を引いていた馬がいる厩舎に、コボルトが迫る。


「やっば……サフィー、行ける!?」

「くっ……」


 数体のコボルトが厩舎へ。

 だが、サフィーもアネルも魔獣の相手で精いっぱいだ。

 すると、岩がいくつも飛んできてコボルトたちを押しつぶす。


「馬はやらせないぞ!!」


 キリアスが厩舎から現れた。

 飛んできた岩がくっつき、ヒト型になる。

 キリアスの召喚獣『ゴーレム』だ。能力は『組換』で、岩の身体を組み換え形を作ることができる。今のように、身体を一つの岩にして飛ばし、押しつぶすことも可能だった。

 だが、コボルトはまだいる。キリアスに飛び掛かろうと唸っていた。


『ぎゅぅるるるる!!』

「はぁっ!!」

『ぎゃるるっ!?』


 だが───コボルトの首が綺麗に切断された。

 フェニアは、上空からその姿を見た。


「グリッツ!!」


 それは、『槍』を持ったグリッツだった。

 ヒュンヒュンと槍を回し構えを取る。

 グリッツの装備型召喚獣『ブレイクランス』という槍だった。

 

「キリアス先輩!! お守りします!!」

「ああ、頼むぞ」


 相棒型召喚獣は、召喚獣自体が能力を持つ。なので、人間側は無防備になるパターンが多い。一般的な戦術としては、召喚獣に騎乗して戦うか、装備型召喚獣を持つ召喚師と組んで戦うかのどちらかだ。

 グリッツは槍を起用に回転させ、魔獣たちに向ける。


「キリアス先輩、馬車を死守しましょう!! 馬車には『タマピヨ』も乗ってるんだ……絶対に守ってみせる!!」

「ああ。あの可愛らしいヒヨコは守るぞ!!」

「「……タマピヨ」」


 どうやら、黄色いディメンションスパロウの名前らしい。

 意外にも可愛らしく、名前のセンスはフェニアたちと似ていた。

 コボルトたちはグリッツたちを標的と決めたのか、ぞろぞろ集まってくる。


「ふん。教えてやる。ボクの生家ランサドール男爵家は槍の名門一族だ!! ランサドール流槍術にボクの召喚獣の能力……味わってみるか?」


 グリッツは自信たっぷりだった。

 フェニアとサフィーは顔を見合わせ小さく頷く。馬車や馬は任せても大丈夫そうだ。


「サフィー、一気に叩くわよ!」

「はい!」


 魔獣の群れは、まだまだいる。


 ◇◇◇◇◇◇


 メルは村の中を走っていた。


「おかしい───……住人が少ない」


 住人たちは逃げ出していた。が……どうも違和感があった。

 家屋をいくつか覗いたが、慌てて逃げ出した家とそうじゃない家がある。最低限の荷物を持って逃げた家、慌てて飛び出して逃げた家とあった。


「どういうこと……? なに、この違和感」


 メルは、口元を押さえ思案する……すると、数匹の魔獣がメルを包囲した。

 魔獣はオーク。数は三体……メルは舌打ちし、オークを睨む。


「うっとおしいわね……」


 そして、指を鳴らす。

 現れたのは、巨大な鏡を抱く女性だった。

 

「誘え、『ゲート・オブ・イゾルデ』」


 すると、女性の持つ鏡に波紋が広がり───鏡の中から『召喚獣』が現れた。

 大きな虎、剣を持った騎士、頭が三つある犬。どれもB~C級の召喚獣だ。メルは一言だけ告げる。


「王女命令よ。やりなさい」


 すると、召喚獣たちがオークに飛び掛かった。

 メルはそれを見ず、顎に手を当てて考えこむ。


「この綺麗な逃げ出し方、予めわかっていないとできない……魔獣の襲撃を知っていた? でも、なぜほかの住人は知らなかった?……それに、逃げ出した住人はどういう関係?」


 剣を持った騎士がオークを両断し、頭が三つある犬がオークを噛み殺した。大きな虎はすでにオークの頭部をムシャムシャ食べている。


「嫌な予感がする……これは調べる必要がありそうね。でも、使える手駒がいない。フギンもムニンもいないし……わたしが動くしかないか」


 メルを囲んでいたオークは全滅。召喚獣たちは『鏡』の中へ戻った。

 特殊型召喚獣『ゲート・オブ・イゾルデ』の能力は、『主従召喚』だ。メルを主と認めた召喚師の召喚獣をメルが召喚することができる。

 メルは、私設部隊の召喚師たち全員の召喚獣を借り、操ることができる。メルを慕い忠誠を誓わせれば、メルの強さは天井知らずだ。

 もちろん、いろいろと制約はある。


「───とりあえず、住人……いや、村長を探しましょう」


 メルは再び走り出した。

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