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狼と風

 最初に気付いたのは、意外にもウルブスだった。

 グリッツが馬の世話をするのを眺めつつ、昼寝でもしようと考えていたところ……ウルブスは、村の入口をバッと見たのだ。


「……? あの、どうしたんですか?」

「……来る。おい坊ちゃん、何か来るぜ。リリーシャの姫さんに伝えてきな」

「え? あの、何を」

「敵だよ敵。かなりの数の魔獣だ……やべぇなこりゃ。住人たちを逃がさねぇと」

「敵って……何も感じませんけど」

「オレが言うから間違いないっての。いいから行け!!」

「あ、は、はい!!」


 グリッツは馬のブラシを投げ捨て、リリーシャの元へ。

 リリーシャたちは、この村の宿となる空き家で、紅茶を飲んでいる最中だった。

 グリッツは敬礼し、緊張しつつ言う。


「報告です! A級召喚士ウルブスから、『村にかなりの数の魔獣が迫っている』とのことです」

「何……? そうか、ついに来たか」


 リリーシャは立ち上がる。

 刀を二本差し、ダオームに命令する。


「ダオーム。戦闘準備を、それとグリッツはキリアスと協力し住人の避難を急げ。オズワルド先生……あとはお願いしても?」

「任せなさい。ふふ、まさに『予言』通り……」


 オズワルドは立ち上がり、部屋を出て行った。グリッツもキリアスの元へ走る。

 サンバルトは、リリーシャの隣に立つ。


「リリーシャ。私もキミと戦おう」

「ですが……いえ、わかりました。ウルブスが前線に立っていると思われます。四人で魔獣を押さえましょう」

「わかった。ところで、S級は……?」

「彼らは、オズワルド先生に任せます」

「……わかった。では行こう!」


 リリーシャたちは戦闘準備を終え、ウルブスと合流した。

 村の入口では、すでにウルブスが待っている。

 魔獣はまだ現れていない。だが……リリーシャは感じた。


「これは……地鳴りか」

「ああ。奴さん、かなりの数だぜ?……どうする?」

「やるしかあるまい。いいか!! ここで魔獣を押さえるぞ!!」


 リリーシャは双剣を抜き、アークナイトを召喚した。

 サンバルトも光の不死鳥『シャイニング・レゾナンス』を召喚。ダオームも紫電を纏う斧『ライボルトアックス』を召喚し、構えを取る。

 ウルブスは腰から二丁の拳銃を抜き、リリーシャに言う。


「姫さん。まずはオレにやらせてくれ」

「……そうだな。お前の召喚獣で数を減らせ」

「あい、あい、さー……」


 ウルブスは二丁拳銃をクルクル回す。


孤風の狼(ウルブス・ガーレ)───『ウルフギャング』」


 すると、ウルブスの傍に、薄緑色の狼が召喚された。

 大きさは約一メートルほど。だが、一体だけではない。ウルブスを中心に、実態を持たない狼の群れが何十、何百と現れたのだ。

 これが『相棒型』に分類される『軍隊型召喚獣』。同型の召喚獣を何体も召喚する、いわば召喚獣の群れを召喚する召喚士である。

 そして───現れた。

 村を襲いにきたのか、様々な魔獣が群れとなって襲ってきたのだ。


「行くぜ、オレの狼たち」


 ウルブスが発砲すると、狼たちは走り出した。

 同時に、ウルブスも走り出す。これに驚いたのはサンバルトだ。


「リリーシャ、私たちも」

「いえ、まずは奴に任せましょう。ウルブスは一匹狼だが……集団戦が得意なんです」

「え……?」


 狼の一体がトカゲのような魔獣に喰らいつく。

 ウルブスが拳銃を発砲し、トカゲの脳天を撃ち抜いた。

 別の狼がオークの喉に喰らいつく。一体だけでは抑えきれないと感じたのか、何体もの狼がオークに喰らいつく、ウルブスはそこでトドメの銃弾を放った。


「なるほど……狼で動きを止め、銃でトドメを」

「ええ。ウルブスはあくまでトドメ……ですが、それだけではありません」


 ウルブスは弾切れになり、空中に弾丸を放る。そして薬莢を一瞬で排出し、空中でリロードを終えた。

 神業のような動きに、サンバルトは驚く。

 そして、見た───狼の一匹が(・・・・・)銃に吸い込まれたのを(・・・・・・・・・・)


「『狼の咆哮(ファングシュート)』……!」


 ウルブスの銃から狼のようなエネルギー弾が発射された。

 エネルギー弾は魔獣を貫通し、後ろにいた魔獣にも貫通する。


「今のは……」

「あれが『ウルフギャング』の能力。『エネルギーブラスト』です。あの狼はエネルギーの塊で、ウルブスの銃に宿り発射されることで高威力の弾丸になります」

「すごい……というかリリーシャ、詳しいね」

「ええ。軽薄な女たらしというところを除けば、奴は優秀なA級召喚士ですから」

「……うむ」


 なぜか耳が痛いサンバルトだった。

 すると、ウルブスが叫ぶ。


「お嬢さんおぼっちゃん!! 観客気分もいいけど手ぇ貸してくんない!? 姫、観戦料は朝までコースのデート一回ってところで!!」

「朝までだと!? 貴様、ふざけるな!! 行くぞ『シャイニング・レゾナンス』!!」

「オレも負けねぇぞぉぉぉぉっ!!」


 サンバルトとダオームが加わり、戦局は大いに傾いた。

 リリーシャは、チラリと村の外れを見た。


「……オズワルド先生、あとはよろしく」


 そう呟き、刀を振って参戦した。

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