表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深淵の安穏  作者: 豚麿
2/2

第2話

どうもこんにちは!

今話からいよいよ痛い展開に突入致します。

どうぞ生暖かく読んでやって下さいませ。

アフター5の駅前は、いつもに増して賑やかだった。

幸せそうな顔をした男女や、世に絶望したかのような表情を浮かべた若者。

多種多様な人が集まっている。

「そう言えばさ〜。」

彼女こと、桜井雪乃(さくらいゆきの)さんは言う。

「あの時のお礼って、まだだったよね〜。」

あの時、とは自転車の件の事だろう。

僕は反応に困り、曖昧に頷いた。

「ん!じゃあ、今日のは私の奢りねっ!」

おっと!そうは行くまい。

可憐な美少女に奢ることはあっても、奢られてしまったとあっては漢の名が廃る!

「いや、それは悪いよ。お礼って言うんなら、僕と友達になってくれた。それだけで充分だよ。」

これは素直に思う。

「え〜!!それじゃ、全然足りないよぉ〜。」

予想していた反応から余りにもかけ離れた回答が帰ってきた。

「だってね、あの時私、物凄く困ってたんだよ!知り合いも居ないし、携帯も家に忘れて来ちゃってて」

でね、と彼女は続ける。

「家からも学校からも離れてたし、自転車引いてたんじゃ遅くなっちゃう〜!って時に内田くんに会ったの。」

まるで正義の味方みたいだった〜。と言われてしまえば赤面する以外ない。

赤くなりながら歩いていると、小綺麗なオープンカフェが視界に入った。

「ここだよ〜♪」

と、僕の手を引いて行く彼女。僕の顔は既に信号機の様に赤くなっていた。

こういった店で聞かれる「何名様ですか?」という問いに対して、「2人です」と、返すことにまで赤面しながらも、なんとか注文を終える。

女の子と2人で。しかも美少女。たったこれだけの違いで、世界は劇的に変わるものだ。

中心からパラソルが生えているテーブルに隣り合って座っている。

彼女は楽しそうに、色々な話題を切り出す。

僕は、巧く答えることが出来ずに聞いている。

(あいつと居る時は巧く話せるんだけどなぁ…)

ふと、頭を過った考えを急いで追いやる。これでは一生懸命話してくれている彼女に失礼だ。

巧く話せなくとも、真摯に拝聴しよう。

カップが空になる頃、漸くそれなりの返事を返せるまでに落ち着いた僕だったが、時は無情にも過ぎ去っていく。

辺りの人通りは疎らになり、街はネオンの灯りに包まれていた。

「今日はありがと〜!このお店気に入っちゃったなぁ。また来たいなぁ〜。」

楽しそうに言う桜井さん。

結局、彼女に奢られてしまった。これはいつかお返しを用意しなければなるまい。

こちらこそ。僕も凄く楽しかったよ。と返した僕も、この店が少し好きになっていた。


帰宅後、暫く余韻に浸っていた。

風呂に入り、自室でパソコンを立ち上げながら携帯を確認する。

"着信:3"と表示されている待受画面から着信履歴を呼び出す。

18:00 鳴川 雨音(なるかわあまね)

19:00 鳴川 雨音

20:30 鳴川 雨音

3回も掛けてくるということは、なにか大事な話でも有ったのだろうか。

鳴川雨音。僕の所属するバンド『アイオニアン5th』のメンバーであり、唯一の女友達。いや、義兄弟の盃を交わした中だ。

バンドでは、ツインギターとして、プライベートでは趣味の合う仲間として、雨音は僕の相棒だ。

急いで、電話を掛ける。

コール音。1回、2回、3回。

がちゃ。



「よ。何してたのよ?」何時も通りの軽い口調。

少し用事だ。済まなかったな。で、用事は?

「明日。土曜よね?」

うん。

「午後から練習ね。スタジオに2時集合。」

また、急だな。来週じゃなかった?

「スタジオの予約が取れなかったのよ。んで、明日キャンセルが出たよって店長から連絡あったから、明日になりました。」

まぁ、特に予定は無かったからおっけ。

「うむ。んじゃ。あ、明日来るとき例の新刊貸して。替わりに"シス☆ぷりん"のOVA貸したげるから。」

マジで?持ってく。

「「んじゃ。」」


電話を切り、床に就く。

明日は忙しくなりそうだ。早く寝てしまおう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ