68 細々とした作業や配達などを行い、帰宅したらお祝いムードで!
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軽めに昼を食べ終える頃、裁縫ギルドに「眼鏡拭きの件でお伺いします」と連絡を取って貰うと、夕方前に箱会社のノルディス様が丁度お越しになるとの事で、「丁度ノルディス様にもお会いしたかったのでその時間に向かいます」と折り返し返事を送って貰い、ラフィには引き続き初級ポーションを作って貰いながら仕事用倉庫を回って必要なアイテムを生成していく。
冒険者ギルド及び魔物討伐隊から【命の花びら】の受注が多く、今後も追加される事を予想してプラチナ鉱石と銀鉱石の減りはとても早く、山盛り一杯に作った。
そして、大量の【命の花びら】に『強化付与』した物は壁に段になった箱に仕舞われている為、それらをアイテムボックスに入れて、中に入っている空の箱を出しては並べて行く作業も同時に行う。
個数はノートに記載しているので大丈夫だ。
【命の花びら】は明日の朝には魔物討伐隊と冒険者ギルドに納品する分は出来ている。
なんだったら今日のうちに魔物討伐隊に手渡してきて、その足で裁縫ギルドに行く方が時間のロスが無いかも知れない。
そんな事を思いつつ眼鏡とサングラスの作業工場で銀金プラチナ鉱石を出してガラスとグレーレンズを入れて倉庫の中に沢山置いて行く。
余った時間に二号店に戻って魔物討伐隊に連絡を入れて貰い、今日のお伺いを立てると大丈夫だと言う連絡が来たのでドマと一緒に馬車に乗って城へと向かい、魔物討伐隊の隊長であるヴァンドナ様へ会いに行くと、【命の花びら】の納品を行い、納品書を貰い受ける。
「ここに来るまでの間、随分と傷ついた魔物討伐隊を見ましたが、スタンピードの後始末戦いで?」
「ああ、ポーションが不足していてな……製薬ギルドにも頼んでいるんだが、個数が全く足りんらしい」
「上級500と中級1000なら持ってますが」
「直ぐに売ってくれないだろうか?」
「魔物討伐隊には夫がとてもお世話になりましたので、3割ほどお安く出来ます」
「おお……とてもありがたい。初級ポーションでもいいんだ。兎に角数が全く足りていないのが現状でな」
「では床にポーションケースを並べて行っても?」
「頼む。直ぐ渡したい隊員も多い」
そう言われ破損部位修復ポーションを作っている際に出来た中級ポーション1000個と上級ポーション500個を置くと、直ぐに納品書が書かれ、支払いは銀行を通してガーネット店に入る事になった。
「しかし、ガーネットでは製薬も出来るのだな」
「レベルはまだ聞いていませんが、伯父様であるカシュールさんがガーネットでポーション等の販売を始められました。現在私がそのカシュールさんの娘を弟子に取って製薬を教えている所です」
「おお、ユリ殿は製薬も出来るのか。これから無理を言うかもしれないが、中級ポーションや上級ポーションも注文していいだろうか? 無理な注文かも知れないが回数を分けて持って来てくれたりすると助かる」
「千や万と言った数は難しいですが、出来る限り努力はしたいと思います」
「ありがたい……」
「それとこちらは夫と私からの寄付として持っていて欲しい品なのですが……」
「?」
そう言うと50個ケースに入った【破損部位修復ポーション】を出すと、その場にいた三人が立ち上がり驚いた顔でこちらを見た。
無論そうだろう。とても高くて魔物討伐隊であっても手に入れるのは困難な品だと分かっているからだ。
「こちらは、私とエンジュさん夫婦より、【魔物討伐隊の皆様にもしもがあった場合に】と、保険として寄付としてお受け取り下さい」
「よ、宜しいのか?」
「私が作ったものです。そこは秘密ですよ?」
「何という……。有難く頂こう。そしてこの事は二人共、外に漏らしてはならんぞ?」
「畏まりました」
「しかし記入には何とお書きしましょうか」
「ガーネットより、寄付とさせて下さい」
「……分かった、そうしよう」
こうしてエンジュさんの念願だった魔物討伐隊への【破損部位修復ポーション】はガーネットからの寄付と言う形で受け取って貰う事が出来た。
これで一先ずは安心だろう。
その後ドマと一緒に次なる仕事である裁縫ギルドへと馬車を走らせると、既にノルディス様は着いているようで急ぎ階段を駆け上がる。
すると――。
「ですから、魔物の丈夫な皮で眼鏡ケースを作って貰いたいんですよ!」
「確かに今は魔物素材も多くありますが……」
「あの、遅くなりました?」
「ああ、ガーネットのユリさんとドマさん。お待ちしておりましたよ」
そう微笑んで対応してくれたのは裁縫ギルドの副リーダーであるシュバルティ様。
ギルドマスターは忙しいらしく、対応はシュバルティ様が行っていらっしゃるらしい。
「えっと、ガーネット様からの御依頼は、眼鏡を拭く眼鏡拭きでしたね? こちらは裁縫ギルドでも眼鏡を扱っている者達から話を聞いて、この布が一番眼鏡の汚れに対し綺麗に落とすと言われていますので、こちらを使おうかと思っています」
「まぁ!」
触らせて貰うと理想的な触り心地。正に眼鏡拭きには丁度いいだろう。
「サイズ等は裁縫ギルド職員が使っているサイズが此方になります」
「素晴らしいですね、これと同じものでお願いしたいです」
「畏まりました。それで、眼鏡ケースの案件でしたね。ケースを守る魔物の皮で宜しいのでしたら――」
と、幾つか案のある皮を持ってこられて、触り心地を私とノルディス様で確認しつつ、一つの合皮のような皮に行きついた。
弾力性があり、眼鏡もこれならば裏地に眼鏡拭きと同じものを使えば傷がつかないのではと案を出すと、それで纏まろうとしていたのだが――。
「一般的にはそれでいいが、貴族にはもう少しいい皮はないだろうか?」
「メガネは壊れものですから、まず眼鏡を保護する必要がありますね。皮で悩むと言うのであれば、ケースを木に変えて中に綿と眼鏡拭き用の布地とで保護をすると言うやり方もありますが、貴族用なら木工ギルドに頼るのも手かと」
「それもありか」
「実は、ガーネットでは一般市民の方々への【眼鏡屋】を作ってはどうだろかと言う話が来ておりまして。ノルディス様も色々お悩みでしょうが、こちらとしては早めに何とかしたいのが現状なんです」
「分かりました。今から木工ギルドに行って契約をぶんどってきますので、少なくとも来週にはいい返事が出来るかと。それで、一般市民用や欲しい人にはその皮製品でのケースを用意すると言う事でお願いしても宜しいでしょうか?」
「お外の色合いは我々裁縫ギルドの好みに色付けしても?」
「ええ。そっちの方が誰のものか分かりやすいでしょうから」
「ではその様に、眼鏡拭きはガーネット様とのご契約で、眼鏡ケースはノルディス様とのご契約で宜しいですね?」
「「はい」」
こうして契約を交わすことになり、ガーネットで契約書を書いて、眼鏡ケースに必ず一つは入れて貰うと言う取り決めを行い、何とか形になるのは来週のようだ。
それまでに店舗等の用意もあるし、眼鏡ケースを作るにしても500個や1000個単位にもなる為、出来上がり次第ご連絡――と言う形になった。
値段もそう高くなく、ガーネットの銀行からの支払いと言う事にも出来たし問題はない。
その書類をアイテムボックスに入れると、ノルディスさんは立ち上がり直ぐに木工ギルドへと向かわれた。
「箱への情熱の素晴らしい方とガーネットは契約をしていますね。実にいい出会いだったことでしょう」
「そうですね。今後もいい出会いは大事にしていきたいと思っております」
そう笑顔で答えシュバルティ様とは握手を交わして馬車に乗り込み二号店へと帰宅する。
時計を見ると午後四時過ぎだったので、各倉庫にて必要なアイテムチェックを行い、足りない素材を生成しながら二号店の二階に上がると、ラフィの大きな声が響いた。
「やったわ!! やったのよタキちゃん!!」
「スゴイネ! コツ ツカンダネ!!」
「私、私やっと……やっとスキルも1上がったし……っ」
「ナイチャイナヨ!!」
「やったわ! お姉ちゃあああああん!!」
と、タキと分裂してラフィに預けていたもう一匹のタキと喜び合っている。
ラフィは初級ポーションで頭からずぶぬれ状態だったけれど、かなり喜びあっている所を見ると――。
「タキ、ラフィ」
「お姉ちゃん!」
「ずぶ濡れですね……」
「ラフィガ ガンバッタ ケッカ ダヨ!」
「そうなの! 私やっとさっき、一度も集中力切れずに50本作ったの!」
「凄いわラフィ!!」
「スキルも……スキルもずっと上がらなかったのに1も上がったの……私、私…っ!」
「おめでとう!!」
「ありがとおおおおお!!」
そう言って床にペタリと座り込んで泣き始めるラフィに生活魔法で髪をまず乾かしてあげて、服も乾かして上げているとホロホロと涙を零しつつ私に抱き着いてきた。
「お姉ちゃんのお陰だよ!」とギュッと抱き着くラフィに、頭を撫でつつ背中をポンポンと叩くと、ドマがラフィの頭をポンと叩いた。
「貴女も根性見せるじゃないですか。少しだけ見直しましたよ」
「む、少しだけなの?」
「これからも精進することですね。姉様の一番弟子として恥ずかしくないように」
「当たり前でしょ!?」
「喧嘩しないの。今日は帰ったらお祝いね!」
こうして二人は笑顔で頷き、私も満足して頷き合い、その後一日の報告をし合う時間がやって来た。そこで――。
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