49 ガーネットにスパイ!? 対策を練って捕まえてやりましょう!!
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「ですね。問題だけは起こさないようにしてください」
「はーい。では奥様またね~」
そう言って去っていたサーニャさん。
まぁ害が無ければ放置かなと思いつつ、二階に上がり皆の帰りを待ちつつ今日出来た開発部屋にいると、暫くして皆が集まった。
成果として医療関係は上々、しかしガラスペンの進みが遅いのだと担当していたお父様が口にした。
「難しい彫金ではない。だがサーニャと言う娘が勝手にリーダーをしだしてな。昨日入ったばかりの新人なんだが、それで作業が遅れている」
「魔法契約でそう言う事は此方が指示しないと出来ないようになっている筈ですよ?」
「そうなんだが……」
「一度調べて貰いましょう。その人昨日じゃなくて随分前からいますから」
「「「え!」」」
「どこかからのスパイかも」
「ありうるのう。魔法契約の匂いがしなかったからのう」
「ナイネー」
「商業ギルドのレイルさんと国王陛下にこの事をお伝えしてくれる?」
「分かったわ」
貴族関係のスパイか、商業関係のスパイか。
何はともあれガラスペンに所属しているのなら痛手は少ない。
そもそも不純物の入らないガラスと言うのは此方の世界ではまだ作れない。
色付きガラス等論外だ。
その辺も含めて狙っているのだろう。
仮の話でその事を話すと全員が真剣な顔をし、「我々が一人ずつ顔を覚えていないのが問題なんですね」とセンジュ君。
人数が多い分仕方ないとはいえ、「工場に入る前に自分だと分かる身分証明を出来るものがあれば……」と私が口にするとお父様が「魔道具に高いがそう言うものがある」と言われ、「盗まれるより投資です。買いましょう」と言うと一億金貨をアイテムボックスから引きずり出してエンジュさんのアイテムボックスに入れて貰った。
それで今から買いに行くのだ。
「今後作業所はそのアイテムを通してからにしましょう」
「そうだな、取り敢えず買いに行ってくる。工場分と一号店と二号店用だな?」
「はい。いってらっしゃい」
魔道具店は二十四時間営業だ。
直ぐに買う事は出来るだろうし大丈夫だろう。
それからニ十分後には帰宅して来て、工場分と一号店と二号店分を購入してきたエンジュさんは、魔法契約をしている社員しか入れないように設定を施し、魔道具を設置した。
弾かれた人はドマに捕まえて貰うようにしたのだ。
その場合、一度二号店の魔道具の起動を止めて、中に引きずり込み事情を聞く。
その内容次第では、どうしようかと皆で悩んでいるとドマが――。
「製薬を作れる方はいますか?」
「ボク ツクレルヨー」
「【忘れじの薬】作れますか?」
「ツクレルヨ?」
「【忘れじの薬】ってなんです?」
「此処から此処までの記憶を消す……という風に使える薬ですね。高級品なので買うと高いんですが、一滴でも飲めば記憶を綺麗に消すことが出来ます。報告書を書かれていた場合は厄介ですが、兵士に捕まえて貰っている間に家を家探ししてアイテムの製造法とかを証拠としたりもできますし、場合に寄っては燃やして灰にする事も」
「なるほど、つまり依頼を受けて工場の敷地内に入った所までは覚えていても、中は覚えていない……と使えるのか」
「はい」
流石護衛者、薬にも詳しい。
ドマも使ったことがあるのか、使われたことがあるのかは定かではないけれど、そういう薬があるという事は理解出来た。
ただ、とてもお高いお薬なのと、取り扱い危険という事は分かったんだけど――。
「ジャア ボクガ アイテノ クチニ テヲツッコンデ ノマセルヨー」
「では、使用者はタキになるので、先ほど伝えた通り【最初に工場に入る瞬間までの記憶を消して】貰えますか?」
「イイヨー」
「副作用とかはないんですか?」
「副作用は一週間寝たきりになる程度ですね」
「「「一週間寝たきりになる程度」」」
「まぁ、厄介な薬ではありますが、【ガーネット】の大事な資産を守る為なら致し方ないかと思います」
確かに言われてみればそうだ。
雇った相手等を吐いてくれればいいが、そうではない場合陛下にお願いしよう。
ドマなら囚人の扱いにも長けているだろうし……。
「でも、手練れだと困りますね。縄をつけても逃げるような輩も居ますから」
「それは困るわね」
「ボクガ カラダニ イレテオクヨ。 トカサナイヨウニ ニゲナイヨウニネ♪」
「流石ですタキちゃん!!」
「それなら逃げられませんね」
「こういう時、タキって本当にレジェンドモンスターなんだなって思い出させるよな」
「ワシも一応レジェンドなんじゃがなぁ」
「エッヘン! コッチノシゴトハ ボクガ トクイ! オジイチャンハ センメツガ トクイナノヨネ!」
「ふぉっふぉっふぉ!」
「あの魔道具、俺達は入れるのか? 魔法契約をしていないが」
「そこは血の契約を行えば出来ます。父上とセンジュとユリとドマは来てくれ」
その言葉に魔道具一つ一つに血を垂らす事になったが、結構痛い。でも我慢!!
血が出た場所は直ぐタキちゃんが治してくれたからいいけれど、試しに入ると工場などには入れるようになっていた。
ちなみに魔法契約をしている三人は問題なく入れたので、本当に魔法契約をしていない人を弾くという魔道具のようだ。
「後は明日を待つのみですね」
「一応国王陛下には連絡を入れた方が良いわ。【貴族や商家のスパイが入り込んでいる可能性あり】と……。これユリちゃんの名で出しておくわね」
「ありがとう御座います。所で王室御用達店にスパイに入った場合どうなるんです?」
「法律では一族斬首刑ね。どんな理由があろうとも許せないというのが王家の考えよ」
「後はスパイ活動した人間も斬首刑となるんですよ。バレないように命がけにはなるんですが、その分実入りがいい仕事でもあるそうなんです」
「で、今回バレたと」
「強引に行ったのが不味かったですね」
こうして皆さんで「明日は気を引き締めましょう」と語り合い家路につき、夕飯をセンジュ君と作りながらタキちゃんは洗濯と家の掃除をしに向かう。
無論店の掃除もしてくれるので商品ケースはピカピカだ。
「しかし、我々も気を引き締めないと行けませんね……王室御用達だからこそ尚更でしょうが」
「でも、色々アイテムを考えてしまった私にも責任はあります」
「そんな事はない。ただ、情報屋がユリの情報を持っているというのがな。多分スパイが流したんだろうが、肝心のそのスキルまでは分からなかったと」
「そうみたいですね。私余り目立たず動いてましたから」
「悪意察知や危険察知があればワシらが動く。じゃがそれらが無かったという事は、相当な手練れか、本当にユリに気づかなかったかのどっちかじゃな」
「人数が多いですからね。その分調べようにも調べられなかった。という方が正しい気がします」
「それが救いだな」
そう語りつつ皆で晩御飯を食べ、私とドマとエンジュさんは隣の家で風呂に入り、暫し談笑する。
エンジュさんとドマは意外と気が合うようで、ドマは「兄様」とエンジュさんを慕っているのは嬉しかった。
「明日が肝ですが、いつも通りで大丈夫ですよ。俺は捕縛も得意ですし」
「だがドマが怪我をするかもしれない。頼むから怪我だけはするなよ?」
「相手は怪我をするかも知れませんよ?」
「それは相手の責任が大きい。怪我をしても仕方ないしとみる」
「兄様は俺に甘いですね?」
「ユリの弟なら甘くもなるさ」
そう言ってドマの頭を撫でるエンジュさんに、ドマは少しはにかんで嬉しそうにしていた。
「姉様の弟になって良かったなぁ」と小さく呟いた言葉に、私とエンジュさんは微笑みあう。
まだまだ親元にいる筈のドマが何故この宝石の国ダイヤ王国にいるのかは分からないけれど、ある意味こうして家族になれた事は良かったのだろう。
「しかし、よく【忘れじの薬】なんて知っていたな」
「ええ、昔一度使われたことがあるようで」
「「え!?」」
「俺は元々鉄の国サカマル帝国で生活していたんです。そこで【忘れじの薬】を飲まされて、気が付けばこのダイヤの国に来ていました。気が付いたら周りに人もいなくて俺一人で……。取り敢えず商業ギルドに登録して、護衛の仕事を十歳からしてたんです」
「そうだったの……」
「その時、商業ギルドのマスターであるレイルさんが気づいて、『多分だが、忘れじの薬を使われたんだろうな』といっていました。鉄の国サカマル帝国で生活していたというのは覚えていますが、どんな生活をしていたのかも覚えていないんです」
「そうだったのか……しかも十歳で放り出すなんて酷いな」
「でも、お陰で姉様や兄様に巡り合えました。感謝しています」
「こちらこそ。名前だけでも憶えていて良かったわね」
「はい」
「いつかその名で身元が分かるかも知れないな」
「そうですね。でも俺は今の生活が気に入っているので戻る気はないですが」
そう言って笑いあってから隣の家に戻り各自部屋に戻って眠った翌日。
ついに事態は動き出した――。
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