21 新たな付与を作り特許を取ってホッとしたのも束の間、魔物討伐隊に呼ばれてドキドキする。
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こうしてガーネットでは更に【真空付与】【撥水付与】【体感温度が下がる付与】の特許を取り、全部で特許が三つに増えた。
一人で全てを回すのは大変だろうと考えているからこその特許だが、これが後に大当たりすることになるのは、もう少し後の話――。
そんなアイテムを改良したり作ったりしている中、エンジュさんと私がお城にある【魔物討伐隊】に呼び出されることになった。
お洒落な服は持っていなかったが、これ幸いにと着流しをエンジュさんには購入して着てもらい、私は着物の少しいい奴を購入して向かう事になるのだが、その際手土産として真空で作ったスープ50個、此方は鑑定すると一週間持つことが分かったが、それと周囲を真空にしたお肉や甘い野菜等も箱に入れて持って行く事となった。
「私、貴族様がするような態度取れませんけど良いんでしょうか」
「俺の隣を歩いていればいい。それにユリは最低限のマナーは出来てる」
「だと良いんですが」
城からやって来た馬車に揺られて向かう最中、中々落ち着かなかったものの馬車は城の中に入り、更に奥へと進むと赤いレンガ屋根の建物の前に到着した。
どうやらここが魔物討伐隊の拠点らしい。
とても広い運動場みたいな稽古場もあるし、降りてから軽く持ち物検査や体に武器等持っていないかのチェックを受けると二階へと案内される。
ドアを開けられると私たちは中に入り、そこにはあの日魔物に呪いを受けたと言う隊長さんらしき人と、副隊長さんのような人、そしてアイテムを取りに来たヨナンさんや他の方々が立っていた。
これは緊張するな~……と思っていると、隊長であるヴァンドナ様が口を開く。
「この度は、私の身体を守ってくれてありがとう。礼を言うのが遅くなってしまいすまない」
「いえ、ヴァンドナ様がご無事で良かったです」
「エンジュ……君のお陰だ。魔物討伐時には剣を振るって仲間を助けていたが、今では彫金師となって色々と活躍していると聞く。家族で頑張っていると言う話を聞く度に、君が魔物討伐隊を辞めて行った日を思い出すよ」
「……」
「今更剣を持って戦えとは言わん。お前も結婚して妻がいるのだろう? ヨナンがそう言っていた」
「いえ、まだ婚約ですが。そして隣にいるのがその婚約者です」
「初めまして、ユリと申します」
「うむ、実に愛らしい猫のような女性だな。お前の好みがこんな可愛らしい美人だったとは」
「あの時はジックリ見れませんでしたけど、本当に可愛らしい女性ですね……」
「ヨナン。俺の婚約者だ、ジロジロ見るな」
「すみません」
「ははは! 相思相愛で何よりだ。腕輪の代金等を支払わねばならないが、鑑定して貰った所とんでもなく素晴らしい石とプラチナを使っていることが分かってな。城の魔道具師たちが言うには金貨500万枚は下らんだろうと言う事だった」
「いえ、隊長には昔とてもお世話になりましたので、そちらに代金は求めません」
「エンジュ……」
「今や隊長はその腕輪が無いと生活できないのですから、今後も健やかなる健康と今後の活躍を期待しております」
「うむ……ありがとう」
ホッと安堵の息が吐けたところで、エンジュさんは私から箱を受け取り机に置いた。
中を開けると私が案を出した真空の料理が入っており、「これは?」と声を掛けられる。
「これは我が家で特許を取った物で、遠征の時に食べられるようにと婚約者と試行錯誤して作った料理です。こちらのスープは中が小さい塊になってますが、お湯を掛ければ温かいスープになります。かけすぎると水っぽくなりますので注意は必要ですが。後此方はお肉に甘いカボチャの煮付けなどです」
「ほう……それは遠征時士気が下がらずに済むな」
「是非一度食べて頂ければと」
そう言うと騎士の方が遠征用のコップだろうか? 少し小さめのスープなどを入れるようなコップと、お皿とフォークを手に持ってくると、もう一人が暫くしてお湯の入ったポットを持ってきた。
人数分持ってきたので食べれない人はいないと思うがと思って見守っていると、エンジュさんが手解きしていて、一人ずつ真空状態で固まっていた野菜がスープになるのを見て「「「「おおおお」」」」と声を上げている。
更に他の人も混ざってお肉や豚の角煮等の入った物を開けて皿に入れていき、「では試食しよう」と言って一口食べると「「「……おお」」」と驚きの声を上げている。
「スープは袋を開けなければ一週間は持ちます。他の料理も一週間程ですが」
「これは素晴らしいな……大量生産には追い付いていないのか?」
「ええ、こちらは調理ギルドと連携しないと難しいので」
「なるほど……これは作られたら是非とも魔物討伐隊に卸して欲しいな」
「一応今度の年末にあるコンテストに出す商品でもあります」
「うむ、私は此方を推薦したい。実にいい食べ物だ」
「ありがとう御座います。また、雨風を防げる布の製作もしておりますので、馬車の幌を変更等も出来るかと」
「ははは! 営業が上手くなったなエンジュ!」
「それもこれも、婚約者の発案なんです」
その言葉に皆さんの目が私に向く。
思わずビクッとすると「まるで猫のようだな」と笑い、ヴァンドナ様は深々と頭を下げた。
「君の考えたこれらは革命を起こすだろう。魔物討伐隊だけではなく、冒険者や鉱山で働く者達の希望になるだろう。実に素晴らしい物をありがとう」
「いえ、お役に立てたら幸いです」
「エンジュ、得難い伴侶を持つことが出来るな」
「はい、幸せ者だと思っております」
「ははははは! だが、実に素晴らしいアイテムだった。今後の活躍を期待している」
「「ありがとう御座います」」
「もう一つの雨風を防げる布と言うのが分からないが、それが素晴らしいものだと分かったら、魔物討伐隊御用達に任命しよう」
「――本当ですか!?」
思わぬ大口に驚きを隠せないでいると、ヴァンドナ様は頷き「嘘を言わないのを知っているだろう」と笑顔で言って見せた。
「これからを期待している。頑張ってくれ」
「「はい!」」
こうして魔物討伐隊の皆さんとの会話も終わり、馬車で帰る頃には「レインコートが上手く行くと良いですね」と微笑み、「明日には布地が届くようになっている」と微笑む姿に私も頷いて家路についた。
その翌朝――裁縫ギルドから布地が届き、元々魔物の毛で作られた布地はソレだけで水を弾く事が稀にあるが、やはり重くなりやすい。
頼んでいた通り軽めの布地だが、そこにセンジュ君が【撥水付与】を施し、何度も洗濯しては水が浸透しないかを確認してみると、何度も水を弾いた。
「撥水付与は軽めに掛けても大丈夫みたいですね」
「そうね、でも何度も使う事を考えると中くらいがいいのかしら」
「長期間となると付与は中が一番安定ですね」
そう言って二人で生活魔法の洗濯でじゃぶじゃぶと洗い続け、一日洗い続けて腕が死にかけたが、軽めに掛けたほうは途中で撥水しなくなったが、中くらいだったらシッカリ水を弾く事が分かった。
付与を強めに掛けると布地が割れるのは把握済みなので、そこだけは注意が必要だ。
「ほほう。ユリの世界では当たり前にあった品かこれは」
「ええ、私が住んでいた世界だと、雨の日はレインコートだったり、それを模して作った傘を差したりしてたの」
「凄い文明ですね。水筒もでしょう?」
「ええ」
「水筒は父上が担当してますが」
「ん? そろそろいい感じに出来上がりそうだぞ。今はどれ位の【真空付与】で熱が冷めないか確認中だ」
「予想ではどれが一番長持ちしそうですか?」
「こっちだと真空付与大だな。まだ熱い湯を保っている」
「なるほど……真空付与も使い方次第で大分変ってくるんですね」
そう語りつつ過ごしていると、エンジュさんが溜息を吐きながら入ってきた。
さっきまで外にいたけれど、どうしたんだろうと思っていると――。
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