19 お父様の彫金師としての再出発と、商業ギルドで取引アップと怪しい男。
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「良かったですね。本当に」
「ああ。さぁ、今日も頑張ろう」
「はい!」
こうしてエンジュさんと二人仕事場へと戻り、コツコツとアイテムを作る事になったその頃、お父様に異変が起きていた。
あの【暁の腕輪】以降、お父様は口数が少なくなった。
皆もどうしたんだろうと思っているらしく、お父様は時折お母様の名を呟きつつ縁側で茶を飲んでいらっしゃる。
今日は洗濯物がしたくて縁側近くで家族分のシーツを洗っていると、お父様に声を掛けられた。
「ユリ」
「はーい?」
「俺もな、アルメリアにしっかりしろと頬を叩かれたことがある」
あら、意外。
お父様ってシッカリしてそうなのにと思っていると、婚約時代にそれはあったそうだ。
友人の息子が病気になり、その為にアイテムを作る時に叩かれたらしい。
そのアイテムは直ぐに作る事ができ、子も助かったそうだが、ホッとしたのも束の間――友人夫婦は離婚したそうだ。
原因は友人の浮気。
流石にお父様も怒って友人を殴ったらしいが、「子供なんて望んでなかった」「あの時助からなかったら良かったのに!」と言われ、酷くショックを受けたそうだ。
その時も妻のアルメリアさんのお陰で乗り越えたらしいが、その光景を見たような気分だったとお父様は語る。
「魔道具を作る彫金師と付与師は、時に人に恨まれることがある。まぁ、恨むのもお門違いなんだがな」
「そうですね」
「だが、先日のユリとエンジュを見ていて思った。もう立ち止まっている時ではないのだとな」
「どう為さるおつもりで?」
「俺も彫金師に戻る」
その言葉は意外で、私が呆然としているとお父様は立ち上がり、大きく背伸びをした。
気持ちに整理がついたのかは分からないが、お父様の何かをエンジュさんが動かしたのだろう。それだけは分かった。
「さぁ、俺も店を再開するか!」
「では、彫金師としてまた動き出すんですね!」
「ああ、俺も何だかんだと本を読んでデザインや諸々を学習した。異世界の宝石のデザインは画期的で素晴らしいな!」
「ありがとう御座います!」
「まずは勘を取り戻すために銀鉱石からスタートだが。休んでいたツケだな」
「素材は頑張って出しますので!! 遠慮なく言ってくださいね!」
「うむ! まずは机と椅子が必要だが……」
「それなら私は自分の机と椅子は用意するので、お父様は使っていた場所でどうぞ」
「そうか? 悪いな」
「いえいえ」
こうしてお父様は仕事場へと向かい、三人の楽しそうな声が聞こえてくる。
タキが家の掃除をし終わったのか頭に乗ってくると、お爺ちゃんもパタパタと私の周りに戻ってきた。
「シンジュもようやく動き出したようじゃな」
「ええ、前を向いて貰えてよかったです」
「フォッフォ! 実はワシと奴は縁側仲間だったんじゃがな。少し寂しくなるかもしれんが、まぁそれはそれでよしとしようかのう」
「タキ ト アソブ?」
「お前さんと遊んだら家が壊れるわい」
「ふふっ! さ、お洗濯終わりましたし商業ギルドに行きますよ。金塊を納めないといけないので」
「ハーイ」
「付いて行こうかのう」
こうしてベッドメイクを終わらせると「商業ギルドに行ってきます」と伝えて私たちは目的の商業ギルドへと向かう。
昨日の騒がしさが嘘のように賑やかで、街の人たちは忙しそうだ。
時折シャース王国の戦況を聞くけれど芳しくはないらしい。
戦争のお陰で物流がストップし、ダイヤ王国は大打撃だと言う声があちらこちらから聞こえる。
でも、魔物討伐隊の為に鉄鉱石を出すのは気が引けるし、それでは冒険者にだって悪い。
数を増やすのは得意だが……今度100追加で出しましょうかと打診してみようかと思う。
そんな事を思いつつ気が付けば商業ギルドで、私が入ってくると職員の一人が奥の応接室へと案内してくれた。
その様子をジッと見ている男性がいるとは思わず、応接室に入るとギルドマスターがやってきていつも通り金塊を納品する。
「すまないねぇユリさん。毎回頼んでしまって。でもお願いがあるんだ。昨日魔物討伐隊がSランクの魔物に襲われただろう? それでまたお金にする金も不足していてね……。どうだろうか? 金を今後増やせないだろうか?」
「ん――増やしても良いですけど、値崩れしない程度に抑えたいですね」
「なんなら金の延べ棒でもいい。来月多めに頼めないかい?」
「まぁ、それでしたら。おいくつ要ります?」
「200個欲しいな」
「多いですね」
「これでも少ない方だよ。流石に枯渇し過ぎて困ってるんだ。宝石も今は良い物が出なくて困っているし」
「宝石ならこういうのは駄目でしょうか?」
そう言ってアイテムボックスからスキル上げの為に作っていたガーネットを出すと、レイルさんは目を輝かせてガーネットを手にした。
ごめんね? カッティングが上手く行ってない奴で。
「宝石細工は今一つだが、いいガーネットだね」
「今持っているのはこれくらいですよ」
「うーん、宝石も卸さない?」
「足りなくても何時かは飽和してしまいます」
「期間限定で良いんだ。三か月後に王家が開く魔道具のコンテストがあってねぇ。皆躍起になって作っているんだが、良い石や金が入らなくて」
「うううん……宝石3つまでなら許可します。数は多く出せませんが」
「それでもいいよおおお!! ルビーとダイヤ、あとエメラルドをお願いしたい!」
「カッティングそっちに任せていいですか?」
「ああ、口が堅い人にして貰うから構わないよ」
「絶対口は堅いですね? 守って貰えないなら出て行きますよ」
「大丈夫、神殿契約を結んでいるから言えない」
「なら良いですが……ダイヤですよね?」
「うん」
「今ならコレならありますよ」
そう言って30cm四方のダイヤを出すと、レイルさんはガチリと固まった。
やはりこれを見ると皆固まるのよね。駄目なのかしら?
そう思っていると暫くしてハッと我に返ったレイルさんは、ダイヤを見て「素晴らしいダイヤじゃないか……」と撫でている。
「是非買い取ろう」
「ツケ払いまでは許しますけど、必ず支払って下さいよ?」
「無論だとも、何度か支払いにお店に行くよ」
こうして大金を手に入れた私は、ホッとしつつお店へと帰るべく歩き出した。
すると、危険察知が反応して後ろを振り返った瞬間、タキの叩く攻撃が相手に当たり吹き飛んだ。
やはり誰かに付けられてると思った!!
「何方です。私を付け回すと痛い目に遭いますよ!」
そう倒れている男性に叫ぶと、周囲の人々は立ち止まり地面に倒れた男性が起き上がるのを待っている。
暫くして起き上がった男性は、鼻血を出しつつ私に近寄ろうとしてくる。
何コイツ。
「アルメリアさんの血縁者だろうか?」
「違いますが」
「だが黒髪に黒い瞳、それに着物姿……アルメリアさんの血縁者じゃないのなら何だい?」
「ガーネットの店のエンジュさんの婚約者ですが?」
「エンジュの……!?」
「何方か知りませんけど、私は既に売約済みです。女漁りがしたいなら別の方へどうぞ?」
「いやいや、確かに最近エンジュは稼いでいるようだが」
「気持悪い男」
「なっ!?」
「こやつ、お前さんに気があってついて来てた様じゃのう?」
「ヘンターイ」
「ち、違わないが!」
「んー? お前さん付与師か。ははー? 元エンジュの婚約者と婚約破棄したらしい。それで新しい嫁探しをしとったのか」
「なっ! 何でそんな事がフェアリードラゴンに!?」
「全くとんでもないのう? 役に立たんからと婚約破棄とは……。女を道具と見ているのと一緒じゃな」
「最低野郎なのね。帰りましょう。顔も見たくないわ」
「あっ」
こうしてスタスタと歩いて去り、家に到着するとワッと喜びの声が聞こえ作業場に駆け込んだ。するとお父様が【命の花びら】を完成させたところだった!!
あんなに綺麗な銀の花始めて見たわ!!
「銀鉱石でだが、こっちは俺も作れるんだ」
「「父上凄いです!!」」
「本当はプラチナでも作れたらいいんだがな。当時はプラチナが高くて作れなかった」
「今度プラチナで試しましょう!」
「そうですよ!」
「私も見たいなー?」
そう言って会話に入り込み、先ほどの無礼者を忘れて楽しく会話を楽しんだ。
それから一週間程経つと、店にはお父様の作った【命の花びら】が売られるようになり、冒険者も我が家にちらほら買いに来るようになるのは言うまでもない。
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