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レッドドラゴン討伐配信(5)

 カメラが再び動き出し、画面が映る。


 九十層のボスフロア、洞穴のような外観をしており、所々に岩が散乱しており、身を隠せる場所がいくつもある。


 奥には紅い鋼鉄の鱗を身に纏い、大きな手足に翼。

 こちらを全く意に介していない王者の風格のモンスターが鎮座している。

 九十層ボスモンスター、レッドドラゴンだ。


 こちらの存在にはまだ気づいてないようだ。


 タヌポンと龍巳さんが岩陰に隠れた状態でカメラに映る。


「はい、じゃあ撮影再開します」


:やっと始まった

:長かったけど何かあったん?

:トラブル?


「いやぁファンの人に捕まちゃってさ? 遅くなってほんと、申し訳ない」


 タヌポンが後頭部に手を当てて謝る。


:許す

:許そう

:だが、こいつが許すかな?

:結局許してないやんけw


「よ~し、いつも通り」


「これがいつも通りは大丈夫なんでしょうか?」


 龍巳ちゃんは小首を傾げる。


:気にしないで龍巳ちゃん♪

:これがデフォ

:むしろタヌポンはこれが嬉しいんでしょう?

:ドエム……(ぼそ)

:異議なし!


「そんなことはないが!? 優しくしてくれるなそっちの方がいいんだけどな!?」


 タヌポンがカメラにぐいっと迫る。


:だが断る

:無理

:拒否

:断固反対


「お・ま・え・ら・なぁ~!」


「あはは……」


 龍巳ちゃんが苦笑いして、コメント欄を見る。


「さて……」


 タヌポンが手をパンッと叩くと画面の空気が変わった。

 龍巳ちゃんの表情も真剣なものになる


「それじゃあ、始めようか。レッドドラゴン討伐配信」


「……はい」


 龍巳ちゃんがカメラを持ち、タヌポン一人が前に出る。

 タヌポンは拳を強く握った。


「レッドドラゴンは初手は必ずこっちに攻撃させる」


:そうなの?

:確かにデータにはそう書いてあるな

:一発目は相手に撃たせるとか、どこの強者だよ


 タヌポンは頷く。


「それは強さに絶対の自信があるからだ。だからその慢心を突く」


:おぉぉぉ

:やっちまえ!

:さぁ、狩りの時間だ!

:ヒャッハー!

:モン〇ン

:狩猟開始!!


 跳躍し、タヌポンが岩の上に立ち、カメラに振り返る。


「それじゃあ、スキル発動お願いします」


「行きます! ドラゴンサンクチュアリ!」


 カンという杖で地面を叩いたような音が響くと周囲に魔法陣が浮かび上がる。


:なんだこれ!?

:どんなスキルなのこれ

:……知らない

:え?

:こんなスキルも技も聞いたことない

:結界術にサンクチュアリって技ならあるが

:多分それ関係だと思うんだが……

:ドラゴンサンクチュアリなんて聞いたことない

:サンクチュアリの効果は?

:一定の範囲にいるモンスターの弱体化だけど

:他のスキルも使えなくなるし

:一定時間硬直状態になる。

:デメリットデカいな


「その、通り……です。なので……あと、は……」


 龍巳ちゃんがそう言うと岩の上からタヌポンが消える。


「俺の仕事だ! 【スキル:弱点看破、鉄壁】発動!!」


 瞬間、ドガァァァンと言う轟音が響き、レッドドラゴンの巨体が揺れる。

 レッドドラゴンの目の前には拳を振り抜いた、タヌポンが姿を見せた。


:威力やべぇぇぇ!!

:武器無しであれってどんな化物?

:どっちか化物か分かんねぇw

:怪獣対戦だろこれ


 レッドドラゴンがギロリと、その二つの黄色い瞳が敵対者を射貫く。

 瞬間、巨体からは想像もつかない速度でタヌポンへ追撃をかけた。


 右前足を大きく振りかぶり、押し潰さんとタヌポンに迫る。


:はぇぇぇ!

:これで弱体化してるって、ま?

:カメラでギリ追えるって相当だぞ?

:これが九十層

:レッドドラゴンやべぇな


 タヌポンはこれを受け流すように、回転しながら避ける。

 まさに紙一重の攻防。


:見ててハラハラする

:危なっかしいな回避が!

:ギリギリ!


 回転を利用し、そのまま前足を殴りつけた。

 ミギッと言う、鈍い音が響く。


「グォォォ!!!!」


 レッドドラゴンが咆哮し、画面からでも大きな音が響く。


:あぁぁぁ!!!

:うるせぇぇぇ!!!

:耳ないなった……

:音割れの原因絶対これだろ!

:音割れ焼肉の真実は咆哮でぶっ壊れたってことか

:前より機材いい分壊れてないけど、時間の問題だぞ


 タヌポンが二撃目を放とうとした所で、レッドドラゴンが前両足をバックハグの要領で掴みかかる。


:ドラゴンの抱擁(骨は砕ける)

:興奮しますねぇ……

:ケモナーニキは帰ってもろてw

:言っとる場合か!

:後方下がる?

:いや、龍巳ちゃんとカメラあるから無理!

:こっちに回避はまずい

:なら……

:上だな!


 タヌポンが跳躍し、天高く跳ぶ。

 うまく回避したように思われたが、突如タヌポンの正面から火炎が迫る。


:ふぁ!?

:どっから火が!?

:レッドドラゴン以外ねぇだろ!

:多分、前足の攻撃はブラフで。

:本命は火炎ブレスだったってことだな。

:それにまんまとはまったってことか!

:このドラゴン賢いぞ


「くっそ!!」


 タヌポンが両手をクロスし、火炎を身に受ける。

 ゴゥォォォとタヌポンが火だるま状態に。


:焼き狸

:いや、ヤバいだろ!

:まぁでもタヌポンなら大丈夫でしょ

:確かに……


 タヌポンが地面に自由落下する。

 地面に落ちる瞬間、体を転がし火を消火した。


 あれだけ燃やされたと言うのにダメージが一切ない。


:やっぱ無事じゃん!

:まぁそうだよね

:最強の鉄壁に傷なんてつくはずなんて

:おい、それフラグ……


 そのコメントが来た瞬間、パキッという何かが割れた音がした。

 タヌポンをずっと守ってきた鉄壁のオーラが、粉々に砕け散り霧散した。


:ふぁ!?(二回目)

:タヌポンの鉄壁が!

:防御出来る許容量超えたってことか!?

:一撃で砕けるもんなのかよ!

:それだけ攻撃がやばいってことだ!

:もう一回鉄壁使うのは?

:スキルのリキャスト時間もあるから連続使用は無理!

:あんなのいくらステータスカンストしてても……

:スキルなきゃ防ぎようがないだろ!

:次食らったらアウトってこと!?

:タヌポン!


 タヌポンが前傾姿勢で駆けだす。

 レッドドラゴンが一回転し、硬い尻尾がタヌポンを迎撃する。


「そこ!」


 タヌポンが尻尾の先をジャストパリーで弾き、尻尾が跳ね上がる。


「か、ってぇ……」


 ぽたぽたとタヌポンの左手から血が滴る。


:何とか防げたけど……

:タヌポンが配信で初の怪我

:鉄壁ないと殴るのこんなにやばいのか

:ボクサーがグローブなしで殴ってるもんだ

:まして硬い鱗のドラゴン

:むしろあれで済んでるのがおかしい


 タヌポンが痛む左手を押さえ、レッドドラゴンに近づく。

 体を回転させ、遠心力を利用して蹴りを入れる。


 ドガァァァンと言う轟音が再び画面から響く。

 レッドドラゴンの体が大きく揺れる。


:相変わらずの威力

:やばい……

:これで倒れろぉぉぉ!!!


 だが、そんなリスナーの期待は淡く打ち砕かれる。


 レッドドラゴンは確かにダメージは受けているが、倒れるほどではない。

 タヌポンを相変わらず忌々しそうに見るだけだった。


:これで倒れないのかよ!

:もっと火力を……って無理か

:多分タヌポン攻撃系のスキルと技はないはず

:タヌポンは今まで攻撃スキルを一切宣言してない

:あったら最初から使うはずだしな


 レッドドラゴンがもう一度前足を振りかざす。


 タヌポンが片足を庇うように避けようとした瞬間。

 こちらを見て動きを止めた。


「――! 【スキル:挑発】発動!!」


 スキル発動させた瞬間、両手を前に出す。


:は?

:何でこのタイミングで!

:まさか受け止める気か!

:回避諦めた!?

:なんで!

:死ぬぞ!!

:いや、ちょっと待てもしかして!?

:カメラがかなり近い、ってことは!

:このまま避けると龍巳ちゃんに当たるからか!!

:だからって受け止めるのは無理だ!!!


 タヌポンが両手でレッドドラゴンの前足を受け止める。

 だが、段々とタヌポンが押し潰されていく。


「あ゛ぁぁぁ!!!!」


 絶叫にも近い叫びでタヌポンが前足を跳ね除けようとする。

 だが……現実は非常だ。


 ズシンという音ともに前足でタヌポンが押し潰される。


:あ……

:噓だろ……

:冗談だろ

:そんな……

:タヌポン!!!


 レッドドラゴンが前足をどかすと仮面がひび割れ、全身から血を流すタヌポンの姿だった。


「そん、な……私の、せいで……」


 龍巳ちゃんの弱弱しい声が画面から聞こえる。

 レッドドラゴンはこちらが悲嘆に暮れようともお構いなしで次に標的を見定めた。


 カメラに二つの黄色い瞳が向けられる。

 レッドドラゴンが大口を開けると口の中に炎が渦巻く。

 先程の火炎ブレスをこちらに当てるつもりだ。


:龍巳ちゃん!

:せめて龍巳ちゃんだけでも逃げないと!

:硬直まだ解けないのか!!

:誰か助けに行けないのかよ!

:無理だ、間に合わない


 渦巻く火炎の燃える音が轟音となり、機材が音に耐えられなかったのだろう。

 プツリと音声が途切れた。

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