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008 懐妊

 それからも毎日、ボクは搾精され、リチルさんやベルリーネさんとセックスした。新しい傷の治癒実験は取り敢えず終えて、古傷に対する効果を調べるため。公表しないと言っても、能力を把握することだけはしておきたいとか。


 でも、その結果を出すには時間がかかるんじゃないかな。

 ボクがハイダ様の従仕(じゅうし)となって1年と数ヶ月、ハイダ様とは毎日とはいかないけれど2日に1度くらいは致していたし、その1度で15回から30回くらいは射精している。

 リチルさんとベルリーネさんには、1日10回程度だ。効果があるとしても、それが目に見えて判るまでには半年から1年はかかるんじゃないだろうか。それまで毎日、週に2日の休みはあるけれど、この2人とセックスを続けないといけないのかな。


 疾病に対する実験は、ボクの知らないところで進んでいる。結果は見せてもらっているから、『知らないところ』とは言い切れないけれど。

 その実験結果によると、都市の大病院と連携して患者にボクの精液を与えているそう。主に凍結保存した精液を解凍して、薬用カプセルに封入しての経口摂取と、シリンジを使っての膣からの注入、の二種類。

 結果は芳しくなく、経口摂取でも膣からの注入でも、『多少の改善が見られるものの、プラシーボ効果の範囲を出るものではない』らしい。始めてからまだ2週間程度なので、これからの実験次第では結果が変わる可能性はあるけれど。


 重傷者に対する実験は進んでいないのだそう。軍の訓練でも軽傷ならともかく重傷は早々ないそうだし、巡回警備でも同じく。

 セレスタ地峡の入口の城郭小都市フロンテスで淫獣の侵入を見張っているものの、セレスタ地峡は幅が広い。その監視の目を搔い潜ってウェリス大陸まで渡って来る淫獣は、2~3日に1回、1度に2~3匹の少数の群れのことがほとんどらしい。

 エクスペルアーマーは3騎1小隊で行動し、1対1なら淫獣に遅れをとることはないから、これも重傷を負うことはあまりない。


 先日ハイダ様が怪我をした時は、普段より多い5匹の淫獣に1小隊で相対し、リチルさんとベルリーネさんに1匹ずつ相手をさせて、残る3匹をハイダ様1人で相手にして、遅れを取ってしまったらしい。

 いくら手練れのレディーウォーリアーがエクスペルアーマーを駆っていても、3対1では分が悪い。それでも骨1本で済んだのは、それだけハイダ様が優秀な戦士だという証明でもある。

 とはいえ、ハイダ様が傷を負うと、ボクたち従仕(じゅうし)、とりわけダリアンが心配するから、あまり無茶はしないで欲しい。


 それはともかく、そんなわけで重傷者に対しての聖人の治癒力の効果は、今のところハイダ様1例しかない。ヘルミナさんは、事故や猛獣相手での重傷者を相手に実験をすべく、疾病の実験をしている病院に掛け合っているようだ。

 こんなことを願うのはいけないことだと思うけれど、何人かの重傷の被験者が見つかるといい、とボクは考えている。だって時々、ハイダ様が本気で自分や部下の骨を折ろうか、考えているんだもの。ボクの悲しみに満ちた視線に気付くと、冗談だ、と言うように笑うけれど、あの目は絶対に本気だ。

 実験に協力してくれているのは、都市でも1番の大病院だから、そう遠くないうちに適当な人数の被験者が見つかると信じたい。


 ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉


 ハイダ様とボクたち従仕(じゅうし)との乱交は、毎日続いている。ハイダ様の怪我が対外的にも完治すれば(すでに完治しているけれどね)、また1日置きの勤務に戻るから、身体を重ねられるのも1日置きになる。

 それまでに性欲のすべてを吐き出す勢いで、ボクたちは身体を重ねた。


 そんな艶かしいある夜、 それまでにはなかった変化が起きた。


 ぷしゃあああっ。


 ボクたち従仕(じゅうし)が握るハイダ様の乳房、その先端に尖がる乳首から、乳白色の液体が勢い良く迸った。

「は、ハイダ様っ」

 ボクは思わず声を上げた。

「ハイダ様、ご懐妊されたんですねっ」

 ベルントがハイダ様に言った。その表情は喜びに満ちている。

「おめでとうございますっ」

 アルクスとダリアンも嬉しそうだ。


「まあ待て。稀にだが、妊娠していなくても乳が出ることもある。確認するまでは妊娠したかどうかはわからんぞ」

 喜ぶボクたちを嗜めるように、ハイダ様が苦笑いした。

「でも、それって、『稀に』ですよね。なら、ハイダ様が妊娠している確率は高いんですよね」

「まあそうだが、確実ではない、と言うことだ。明日、医療センターで調べてもらうから、本当に喜ぶのはそれからにしろ」


「それでも、ハイダ様の母乳はもう飲み始めた方がいいですよね?」

 ボクは言った。1日くらい遅らせても構わないけれど、早いに越したことはない。たとえ妊娠していないとしても、飲むことで問題があるわけでもないし。

「まあそうだな。それは構わないだろう」

 そしてまずは、アルクスとベルントがハイダ様の乳首を咥え、母乳を吸った。


「しばらくは、ハイダ様とのセックスもお預けですね」

 アルクスとベルントの授乳が終わるのを待ちながら、少し残念そうにダリアンが言った。

「妊娠中に激しい運動をすると、流れる確率が急上昇するって言うからね」

 ボクはダリアンに諭すように言った。

「解ってます。3ヶ月かそこらの辛抱ですもんね」

 ダリアンは神妙に頷いた。


「下半身が寂しければ、ほかの女に抱かれてもいいぞ」

「僕はハイダ様一筋です」

 母乳を吸われながら含み笑いで言うハイダ様に、ダリアンが心外だとでも言うように唇を尖らせた。

 ダリアンだけでなく、アルクスもベルントも、もちろんボクも、ハイダ様一筋だ。ほかの女と身体を重ねるつもりはない。

 ボクは、実験のためにそうしている上に、聖人の存在が公表されたら、さらに多くの女に抱かれないといけないだろうけれど。でも、心はハイダ様一筋だ。


「ありがとう。でもこれで、現場への復帰がまた遅れるな」

 少し、ハイダ様の顔に影が差した。

「子供を産むまで、たった3ヶ月の辛抱ですよ」

 ボクは笑顔を心掛けて言った。

「そうだな。とにかく元気な子を産めるように、体力と健康に気をつけるだけだな」

「そうですよ。激しい運動は無理でも、適度な運動は続けないと、子供を産む体力がなくなっちゃいますからね。って、ボクが言う必要ありませんね」

 ボクは頭を掻いた。

「そうですよ。ハイダ様の場合は逆に、適度な運動が無茶な運動にならないよう、僕たちが目を光らせておかないといけませんね」

 ダリアンが言った。


「おいおい、私だって妊娠中の注意くらいは知っているぞ。と言うより、お前たちより詳しいんだからな。それくらいは弁えるさ」

「すみません、いらぬお節介でした」

「でも本当に、無理は駄目ですよ」

 何しろハイダ様は、肉体が資本の乙女戦士(レディーウォーリアー)だ。妊娠しても、日々のトレーニングは休まないだろう。それが適度な範囲に収まっているなら妊娠中でも問題ない、むしろ望ましいけれど、過剰になったらお腹の子供に差し障る。ハイダ様は『弁える』と言うけれど、注意して見ていよう、とボクはダリアンと目配せした。


「っぷ、はぁ、ご馳走様でした」

 アルクスがハイダ様の乳首を離した。

「ぷ、ふう、オレも今は、十分です」

 ベルントも、口を拭った。

「次は僕たちですね」

「いただきます」

 アルクスとベルントに代わり、ダリアンとボクがハイダ様の乳首を口に含んだ。


 ハイダ様の母乳は酸味があって温かく、それでいてどこか甘い味だった。


 ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉ ◉


 翌日、家族揃って軍の医療センターを訪れ、ハイダ様の検査に立ち会った。結果、妊娠していることが確認された。ボクたちは一斉に喜びの声を上げ、看護士に窘められた。

 間も無く左腕の骨折が対外的にも完治する予定だったハイダ様は、このことを軍に報告した。ハイダ様の原隊復帰と同時に、ハイダ様の小隊を通常任務に戻して聖人調査の特別部隊には別の人員を投入する案もあったらしいけれど、それは廃案になり、これまで通りの体制で続けることになった。


 夜の生活も変わった。当たり前だけれど。

 ハイダ様の寝室で、ボクたち従仕(じゅうし)が毎日ハイダ様の母乳を飲む。みんな、子種が自分のものであることを願いながら。

 4日目になって、アルクスの胸が目に見えて膨らんできた。今回種付けに成功したのはアルクスだったようだ。


「ハイダ様、アルクス、おめでとう」

 アルクスを除く従仕(じゅうし)3人は、心から2人を祝福した。

「最初の子はアルクスだったか。最初の従仕(じゅうし)でもあるし、まあ順当だったな」

 ハイダ様は、まだ膨らんでいない自分の腹を愛おしそうに撫でながら言った。


「これからは、アルクスの家事の分担を減らさないとな」

「いや、ハイダ様の出産までは今のままでいいさ。授乳が必要になるのは産まれてからなんだから」

 ベルントの提案に、アルクスはまだ早いと笑った。

「だけど3ヶ月しかないから、子育ての準備は少しずつしていかないとね。ベビーベッドとか、ベビーウェアーとか」

 ボクは必要になりそうな物を挙げた。

「じゃ、出産までの計画は僕が立てますっ」

 ダリアンが意気揚々と言った。




 それからボクたちは、本格的に我が家の第一子を迎えるべく動いた。

 アルクスは毎夜、いや、ハイダ様が在宅中は可能な限り、母乳を摂取した。それと共にアルクスの胸は膨らみを増してゆき、身体も全体的に脂肪が増えて、子育てする父親の体型へと変化している。

 ハイダ様の腹も少しずつ大きくなってゆき、子供が順調に育っていることを窺わせる。元気に産まれて来て欲しいものだ。

 子供用の家具や服なども少しずつ用意し、さらに家の中を見直して子供に危険な場所を改修した。


 家の中は、日に日に新しい家族を迎える準備が整っていった。



==用語解説==


■聖人

 時代の節目に現れるという、女の傷を癒す能力を持った男。絶倫で、性交することで女の傷を癒す、しかし子を残したことはない、と伝えられている。

 その精液は、女の負傷を短時間で治癒する。患部に直接かけても、セックスで中出ししても効果を発揮するし、全治1ヶ月の負傷も即座に治癒する、現代医療を遥かに凌ぐ治癒力を持つ。なぜか、患部に精液をかけるよりもセックスの方が効果が早く現れる。また、長期間繰り返しセックスすることで、古傷も癒されるらしい。ただし、疾病に対しては効果は見られない。

 なお、聖人の能力は男相手には効果はなく、男の傷に精液を掛けたりホモセックスしたりしても、ヤるだけ無駄。


■人間

 現代の地球の人類とほぼ同じ生物。ただし、妊娠期間は3ヶ月程度。

 女に比べて、男は体力や持久力で劣る。平均身長も女の方が高い。そのため、女を中心にした社会が構築されており、男は家庭を守る役を担うことが多い。

 女は妊娠から数日で母乳を出すようになり、孕ませた男が母乳を飲むと、胸が女のように膨らんでゆく。別の男が飲んでも胸は膨らまない。

 一妻多夫制で、1人の女──主姐(しゅしゃ)──に複数の男──従仕(じゅうし)──が仕えるのが一般的。


■フロンテス

 巨大都市ソーセスの東、セレスタ地峡の入口付近にある、ソーセスの衛星都市。都市全体が壁で囲まれており、“城郭都市”と呼ばれる。

 セレスタ地峡を通ってやってくる淫獣を監視し、駆逐するために造られた、対淫獣の最前線。ただ、セレスタ地峡は南北に広いので、見落としも多い。

 ※前線なので、“Front”Lineから、フロンテス。

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