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005 中間報告

「えっと、本当にヤるんですか?」

 全裸で四つん這いになったベルリーネさんのお尻を前に、ボクはもう一度確認した。何度でも確認せざるを得ない。だって、今度は左腕を斬り付けた挙句、アナルセックスしてみろ、なんだもの。


「いいから、早くして。効果があるにしろないにしろ、やらないことには治療もできないんだから。腕の痛みを我慢するのもそれなりにキツいのよ」

 それはまあ、そうだろう。ボクなんて、他人の怪我を見たり、想像するだけでも、痛みに身体が震えてしまうもの。仕方がないな。これも仕事、ボクの能力の調査の一環だ。


「イきますよ」

「いつでもキて」

 ボクのペニスがベルリーネさんのアナルと繋がった。




 射精を済ませた後も、ボクはしばらくベルリーネさんに背中から抱き着いたままだった。彼女のアナル、ハイダ様に比べてキッツいんだもの。あまり使っていないのかも知れない。


「どう?」

「まだ効果は出ませんね」

「膣内射精ほどの即効性はないと言うことね」

「はい。………………………………効果が出てきたようです」

「口内射精よりは早いわね。傷口に直接かけた場合と同じくらいね」

「そうですね。……今、完全に塞がりました」


 ベルリーネさんとボクの事後の様子など気にする気配も見せずに、ヘルミナさんとモレノさんがベルリーネさんの傷を観察している。ボクの精液は、アナルから注入しても治癒の効果をもたらすらしい。しかも、どんな用法でも即効性がある。用法によって、効果が現れる時間に多少の差はあるけれど。


 搾精は毎日行なっている。1日の初めに、20発。搾り取った精液は小分けして瓶に入れ、それぞれラベルを貼って、常温保存、冷蔵保存、冷凍保存に加え、今は凍結保存もしている。

 3人の乙女戦士(レディーウォーリアー)たちは、毎日自ら腕を傷付け、保存しておいた精液で治してゆく。保存された搾精済みの精液だけでなく、口内射精したり、傷口にぶっかけたり、保存しておいた精液を膣やアナルにシリンジで注入したりと、知らない人に見られたら頭の中味を心配されそうな実験を続けた。


 身体を張っているのは基本的に、ハイダ様と部下2人のレディーウォーリアーなのだけれど、日に何度かはヘルミナさんも自分の腕を傷付けては、ボクから精液を搾り取って治療した。


 唯一、銀色のショートヘアの秘書官兼看護士のモレノさんだけは、観察と記録に専念していた。ヘルミナさんが『自分でも経験した方がいいんじゃない?』と誘ったけれど、『わたくしにも従仕(じゅうし)がおりますから』と断っていた。普通の女よりも、性欲が弱いのかも知れない。

 他の女と違うと言えば、モレノさんは女にしては身長が低くて、170センチメートルくらいかな。この特別小部隊の他の4人はみんな180センチメートルを超えているので、ちょっと親近感が湧く。163センチメートルのボクよりはずっと高いけれどね。


 聖人の治癒力を調べるという目的で編成された特別小部隊での数日は、そんな風に淫らに過ぎていった。




 今日はいつもの搾精をした後、全員がテーブルに着いてこれまでの結果を整理し、情報をまとめることになった。

「まず、膣内射精した場合が治癒の効果が一番高いわね。次いで、患部に直接かけた場合とアナル射精が同程度、口から飲用した場合、の順で効果が下がる。効果が下がると言うより、効果が出るまでの時間がかかると言った方が適切かしらね」

 ヘルミナさんが言った。


「それに、膣内の場合は搾精したものを注入するより、直接射精した方がさらに時間が短くなります。アナルや口内への射精、あるいは患部への射精では変わりませんが」

 精液に傷を癒す効果があるとしても、この結果が良く解らない。普通に考えると即効性があるのは傷口に直接かけたり塗ったりした場合だけで、経口摂取ならば普通は効果が現れるまで、数時間とか数日とかかかるものだろう。


 だいたい、どうして口から呑んだ場合よりも膣なりアナルなりから注入した方が効果が早く現れるんだろう。膣にも子宮にも、入って来た精液を分解・吸収する機能などないし、直腸だってそうだ。あれ? 直腸には消化機能あったっけ? いや、ないよね。あったところで、膣に入れた方が効果が高いんだから、わけ解らないことに変わりはない。

 本当、聖人の能力、精液って何なんだろう。


「搾精した精液の効果はおよそ2日、それまでは効果はほぼ保たれますが、それを超えると極端に効果が落ちますね」

「それは、冷蔵や冷凍した精液も同じですね。凍結した場合は、解凍してから1日は効果が保ちます」

 1日とか2日とか、日単位でしか測定できていない辺り、まだ大雑把だ。今後も調査を続けて、時間単位、分単位での効果を調べていくことになる。


「今は軽傷に対する検証しかできないが、重傷についても検証が必要になるな」

 ハイダ様の言葉に、ボクはえっ、となった。まさかここで、骨を折ったりお腹や胸にナイフを刺したりするんだろうか。それで治らなかったらどうするの?


「それについては、司令と話をつけてあるわ。訓練や巡回警備で重傷者が出た場合、医療センターと同時にこちらにも連絡が来るように」

 ヘルミナさんが言った。ここは、秘密保持のためだろう、医療センターでなくて軍本部の建物内にあるんだよね。

「重傷者をここに連れて来るのですか?」

 リチルさんが聞いた。当然の疑問だと思う。このことは秘密なんだから。

「いいえ、連絡が入り次第、搾精した精液とシリンジを持って、医療センターに急行するわ」

 それはつまり、重傷患者の膣にシリンジを突っ込んで精液を注入すると言うことで……ボクは深く考えないことにした。


「けれど、軽傷ならともかく、重傷者は早々出ませんよね」

 ベルリーネさんが言った。

「骨折くらいなら、私たちでやってもいいんだが」

 ハイダ様が恐ろしいことを言う。


「ハイダの骨折は、一晩で治ったのよね?」

「ああ。気付いたのは20回くらい膣内射精(なかだし)してもらった後だったが」

「最初の1回で完治したのか、大量に注入したからこそ完治したのか、判らないわね」

「そう言うことだ。やっぱりもう一度、折るしかないか……」

 ハイダ様とヘルミナさんの会話に、ぼくは身を震わせる。治ると解っていても、傷付いたハイダ様なんて見たくない。……いや、この数日、腕をナイフで斬り付けるハイダ様を何度か見ているけれど、骨折となると話が違う。


「それは後で考えましょう。物騒なことを言うから、セリエスが蒼白になっているわよ」

 ヘルミナさんがぼくの様子に気付いて、今の会話が冗談であるかのように笑った。ハイダ様はハッとぼくを見て、「すまん」と謝ったけれど、ぼくの方こそ申し訳ない。レディーウォーリアーの従仕(じゅうし)として、主姐(しゅしゃ)が傷付くことは、覚悟していなければならないのに。


「重傷への効果を確認する方法は、これからも考えていきましょう。それから、病気に対する効果があるのか、については都市の病院に申し入れて、新しい治療法の効果を確認すると言う名目で試す予定よ。膣に精液を注入するだけだから、副作用なんてあるわけもないし」

 やっぱり、シリンジでボクの精液を注入するのか。治療と称して得体の知れない薬(見知らぬ男の精液)を注入されるって、女の人はどう思うんだろう。確かに歴史で習った限りでは、()()()はないらしいけれど……。


「今日のところは、こんなところかしらね。他に気付いたことはある?」

 ヘルミナさんの声に、ハッと現実に引き戻された。いけない、少しぼうっとしていた。気付いたこと、か。あ。

「はい」

 発言する前に、ぼくは手を上げた。

「はい、セリエス、何かしら?」

 ヘルミナさんに促されて、ぼくは口を開いた。


「そのですね、ぼくの精液って古傷にも効くんでしょうか?」

「それはどうかしら? ワタシのお腹のそこそこ大きい傷、残っているわよ」

 ベルリーネさんが言って、服の裾を捲り上げ、傷を見せた。いや、今はわざわざ見せなくていいって。

「そうなんですけど、えっと、ボクがハイダ様に迎えていただいたばかりの頃は、ハイダ様の身体にも目立たない傷があちこちにあったんです。でも最近のハイダ様の肌には、傷1つなくて」

「言われてみると、そうだな。時間が経って目立たなくなったんだろう、と気にもしなかったが、左の太腿にあった大きい傷もいつの間にかなくなっていたな。あの傷はさすがに残ると思っていたんだが」

 ハイダ様も思い当たることがあるようで、ボクの言葉に頷いた。


「それってつまり、セリエスとヤりまくれば、玉の肌が戻ってくるってことっ!?」

 リチルさんが椅子を蹴り倒しかねない勢いで立ち上がった。

「そんなに興奮するな。それにリチルは傷が残るような大怪我を負ったことはないだろう」

 ハイダ様が苦笑いを浮かべて言った。

「そんなことありませんよ。日々の訓練で負った負傷が身体中に」

「解った解った。しかし、このことは事実だとしても大っぴらにはできないな」

「そうですか?」

 ハイダ様の言葉に、ボクは首を傾げた。


「古傷が治る、なんてことが広まったら、下手をするとセリエス、ずっとセックスしっぱなしになるわよ」

「あ、そうか。そうですね」

 気にしない人もいるけれど、身体の傷痕を気にする女は多い。そんな女たちがボクに群がりかねない。それは確かに、ごめん被りたい。


「他にはないかしら。ないわね。では、次の調査の人選について、提案のある人は?」

「その前に、『次の調査』って何ですか?」

 ボクの質問に、ヘルミナさんは「伝えてなかったかしら?」と首を傾げてから、その内容を教えてくれた。


 ……………………え、えっ、ええええええええっ!?



==登場人物==


■セリエス

 主人公。20歳。身長163cm。研究所で淫獣の生態研究をしているが、生きた生体サンプルがいないので、研究は遅々として進んでいない。勤務は1日4時間で週3日だけ。

 聖人であることが判明し、その能力の調査のために、レディーウォーリアーたちに精液を搾られる日々を送ることになる。


■モレノ

 軍参謀長の次席秘書官を務める才女。看護士の資格も持つ。銀色のショートヘア。身長約170cm。

 聖人能力調査特別部隊の秘書官として、参謀長秘書室から異動。



==用語解説==


■聖人

 時代の節目に現れるという、女の傷を癒す能力を持った男。絶倫で、性交することで女の傷を癒すと伝えられている。

 その精液は、女の負傷を短時間で治癒する。患部に直接かけても、セックスで中出ししても効果を発揮するし、全治1ヶ月の負傷も即座に治癒する、現代医療を遥かに凌ぐ治癒力を持つ。なぜか、患部に精液をかけるよりもセックスの方が効果が早く現れる。また、長期間繰り返しセックスすることで、古傷も癒されるらしい。

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