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ウェレの住まい

いつもお読みいただきありがうございます

続けて来られているのも、読んでくれている方々のお陰です。感謝です。



「ここからはラックランド嬢の知らない領域ですので、私が案内いたします。ついてきてください。」

先程の異空間を全員が出た瞬間、扉がゴゴゴゴと大きな音を鳴らして閉まるのを確認してから、女王がそう発した。


 彼女の後を皆が追うと、来るときに二股に分かれていた分岐点まで来る。

 その通らなかった方、細い道へと足を踏み入れた。


 マーガレットが

「初めて入るわ。」

 と小さく呟き、目を輝かせている。


 そちらの道はかなり細いため、体格の良い者達が苦戦しながら、押し進む。

 兎に角、真っすぐに進む。


 その際、まあまあ時間はかかるようなのでと、先程のエーベルトへの中途半端であった会話をオリヴィアの母親リナが彼と再開していた。


「先程、話していた例の薬草と言うのは、ルトゥがウェレを殺した際に使用した毒草なのです。」

 そう軽い口調でリナが切り出したのだ。


「ルトゥがウェレを殺す!?そんなこと、ありえるのか?」

 エーベルトは何を言いだしたのかと、目をひん剥いて驚いていた。


 リナが言うには、この話は古代史には書かれていない話で、ルトゥの直系子孫は血の記憶として、能力が覚醒してから数年後に能力の使い方と共に、歴史が寝て起きたら脳へと刻みこまれるのだという。


 学び舎に居た頃にこの記憶が頭に入っていたならば、古代史はある程度点数が取れたのにと言う考えと、もしあったらば、違いが多過ぎて苦労していただろうなという考えが二分するのだと苦笑しながら話し続けている。



 遠い昔、まだウェレが生きていて、嫉妬深いドルーがルトゥを厳しく監視し続けていた時代。

 どうにもその監視が厳しすぎて鬱陶しく、ルトゥはある作戦を実行することにしたのだそうだ。


“ウェレを殺す”

 それがルトゥの狙いであった。


「殺すというのは、命を消すといのではなく、心臓を止めるという意味なのよ。」

 そう、リナが言うと、エーベルトは眉間に皺を寄せ難しい顔で質問した。

「それはどういう事?」


 心臓を止めて死んだとドルーに認識させる。

 それこそがこの作戦の意味なのだとリナは言う。


 その為には、彼の体内にあるルトゥの力があまり無く欠乏していっている事を認識させ、そろそろ寿命であるとの噂を流させた。


 そして、ウェレが死んだという情報を流し、ドルーをおびき寄せ、心臓が止まっていることを確認させたら成功と言うのが作戦の筋書であった。

 その狙い通り、彼が死んだことにより、ルトゥの監視は和らいだ。


「あそこにあった仮死状態を引き起こす毒草、あれはあの空間とハルク国にある神殿内の中庭でしか栽培できないものなの。今では品種改良がなされて、医療用の鎮痛効果がある薬草としてハートフィル侯爵領で栽培され、世に出されているわ。お祖父様もよく知っているでしょう?」

 と、リナがニコニコと話している。


「あ、ああ、あの薬草か。よく知っているよ。」

 エーベルトもゆっくりと頷く。


 その話を聞いていたのは、エーベルトだけではなかった。


「公爵夫人!!それは、ウェレ様は文献にある時期に死んだのではなく、生き延びていたという事なのですか?」

 マーガレットが気になりすぎて、エーベルトを押しのけて質問してきた。


「ええ、その通りよ。」

 リナが言うと、

「では、その後、ウェレ様はどうなされていたのですか?遺体が無かったので、別の場所に眠っているという事なのでしょうか?」

 と、ジョージ殿下が後ろから聞いてくる。


 リナが言うには、ウェレは仮死状態から目覚め、それからある場所へと住まいを移したのだそうだ。

 そして、そこで、ドルーの監視の目をかいくぐり、ルトゥと会っていたという。


「これから向かう場所が、そこなのよ。」

 と、リナが言う。


  ***


 話しが一区切りついた時に、先頭に居る女王が歩みを止めた。

 辿り着いた先はホワイトキャッスルの真下であった。


 地下の広い空間となっていて、その中央にストーンサークルがポツンとある。

「さあ、皆さん、次はあの円の中に入りますよ。」


 女王を先頭に、全員がサークル内へと入る。


 すると、足元が明るい紫色に光り出す。

「なっ、どうしたのだ?」

 陛下が珍しく動揺している。


 大きな幾何学模様が浮かび上がっており、皆の足元命一杯に描かれていた。

 恐怖からか逃れようと、足を持ち上げて抵抗しようとするものがいたりしたが、そんなことは意味がない。


「これは…転送の陣だわ。古代書の中で見た事がある…空想上の話だと…実在したなんて。」

 と、いつもならば興奮気味に話すだろうマーガレットも、これには驚き過ぎて声が引っ込んだ様だ。


 そうこうしている間に、身体に浮遊感が生じた。

 地面がなくなり、穴が開いたのだ。


「きゃああああ」

「うわあ」

「ぎゃああ」

 あちらこちらで悲鳴が響き渡る。


  ***


 声が止むと同時に、自身の足が地についており、別の場所に移動したのだと、目の前の風景を見て、強制的に認識させられた。


 そこは、広い森の奥であった。

 木々の隙間から、空が顔を出している。


「ここにも、空がある。」

 チャールズ殿下が上を見上げ、口をポカンと開けて、呟いた。


「見てください!あちらに屋敷があります。」

 カイルが指示した方に目をやると、森の木々を抜けた先に、わずかに建物のようなものが見えた。


「良く見つけたな、流石だ。」

 フォード公爵がカイルの能力に満足し発言する。


 皆が、そこに向かって移動を始める。


 近付いて見ると、その館の壁は黒く金色の模様が描かれており、外観のとても美しい大きな屋敷であった。


「この金の模様の部分に…」

 オリヴィアが口にしようとした瞬間、女王が皆に声を掛けた。


「さあ皆さま、ここがウェレの住まいです。中にお入りください。」


 大きな声は、迫力があり、急いで中に入らなければという強迫観念も生み出している。

 皆が、急いで、屋敷の中へとなだれ込む。



ウェレの住まいの中へ

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