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来客(罠)1

お読みくださりありがたき幸せ


「アドラシオン王国より、ラックランド伯爵様とケント公爵のご子息フレデリック様がいらしております。」

 部屋の前の騎士が告げる。


「通して。」

 入室許可が出たので、扉は開かれた。


 アドラシオンからやって来た2人…いいや、3人。

 フレデリックの後ろに、顔を伏せた人物が一人、気配を消してついてきていたのだ。


「その人の名は述べていなかったよ。」

 フォード公爵が眉を顰め、その人物を警戒する言葉を吐く。


「そうね、彼を室内に入れるのはよくないわ。なにせ、ドルトムントの配下の者ですもの。テオと言ったかしら?貴方の従者だったのでしょう?それとも貴方も我々の敵なのかしら?」

 フレデリックをジッと見ながら、リナが問う。


「違います!我々は敵ではありません…ええ、彼は私の従者だった者であり、そして、ドルトムントの配下でもありました……それは事実。認めます……ですが、彼は今、あなた方の味方でもあります。」

 フレデリックは酷く緊張しているのか汗を掻き、強調したい部分は思わず大きな声を出し裏返す場面も見られた。

 だが、視線は微動だに動かさずに熱意を持って、信じてほしいとリナを見返し、語っていた。


「……私が、全てをお話しします。」

 そんなフレデリックを目にし、テオは勇気をだす。

 顔を真っすぐに見据え、フレデリックの横から一歩前へ出て、そう声を震わせ言ったのだ。


 テオが語った話はこうである。

 まず、出自だ。

 テオは、ドルトムントの国、グランドル国生まれであった。

 グランドル国の国王の腹心、名将ヴィオラ閣下の愛人の子として生を受けた。

 母親はグランドルの中で二番目に大きな都市で有名な舞台の看板女優をしていて、外遊で訪れた閣下に見初められ、愛人となり、テオの姉とテオを生んだという。


 屋敷を与えられ、不自由なく暮らしていたそうだが、ある日、閣下の本妻が屋敷へと乗り込んできて家に火を放ったのだそうだ。

 殺されたくなければ国を出ろと脅され、テオたちは逃げる様に国を出て、隣国ルタールで貧しいながら細々と家族で力を合わせて暮らし始めたのだという。


 そして時は流れ、姉は隣国の劇団の駆け出しの女優となり、テオが初等教育を終えた年齢の頃のこと、父親の部下だと名乗る男達が家にやってきて、テオを攫った。

 連れてかれた場所はヴィオラ閣下の屋敷で、彼はテオへ、グランドル国のスパイとして活動するよう命じてきたのだと言う。

 そして、スパイ教育を虐待のように毎日みっちりと受けさせられて、ケント家へ潜入させられた。


 彼はフレデリックの従者となったのだが、自身がスパイであることを忘れてしまうくらい、フレデリックとの穏やかな日々は楽しく、幸せであったのだと話す。

 彼に何もかもぶちまけて、助けを乞うてみようかと思うくらい、フレデリックを信頼し、心を許していた。


 そんなある日、嫌な知らせが舞い込んだ。

 内容は、姉もスパイにするというものであった。

 自分だけではなく、家族も巻き込まれている。


 自分が奴らを裏切れば、家族に何が起こるか分からない。

 家族の命の危機は、自分に掛かっているのだと悟り、もはや、フレデリックに助けを乞う事など出来ないと諦めた。

 そして、姉がアドラシオン国、第二王子の側妃となった年、テオはフレデリックの従者を辞めたのであった。


 姉が傷つかないように、姉を助ける為にと、裏で鼠の仕事の手伝いをして顔色をうかがいながら、姉の危機を救い続け、今に至るのだと言う。


「姉ですが、フレデリック様があの後すぐにケント公爵家で保護してくれたので奴らの元へは連れていかれずに済みました。僕の事もこうして探し出してくれて、話をちゃんと聞いてくれて……少しでも皆様のお役に立てるよう、ここへと連れてきてくださいました。罪は沢山犯しましたので、許されるとは思っていません。ただただ、後悔しています。」

 テオは涙ながらに語った。


 彼の事は、皆が疑心暗鬼である。

 よくテオの事を知らないのと、長い間、ドルトムント側で働いていたことは調べがついているからだ。

 結構な非道で卑劣なことも、平然と行っていて、皆は彼に恐れもあり、無意識に警戒するのだ。

 そんな彼が、自然な涙を流している。

 信じてよいのものなのか?と思うのは当たり前である。


「それで、ラックランド伯爵はなぜここへ?アドラシオンの重臣家であるのに、こんな所にいてよろしいのですか?」

 ハロルドが質問すると、ラックランド伯爵はフッと息を吐き、おかしそうに話し出す。


「私を大鼠とお疑いで?」

 投げかけられて、ハロルドは正直に返す。


「ええ、今はどんなに親しくても疑わなければならない状況ですから。」

 平然とそう答える。


「まあ、そうですね。」

 とラックランド伯爵も軽く相づちをうつ。

 そんなことは知っていると言うように。


 そして、淡々と話しだす。

「アドラシオンは、公国の息のかかる貴族の反乱に会い、王城が襲撃されたことはご存知ですね。」

「ええ。」

「その後、四大公爵家とフォールズ辺境伯家が中心となり、事を治めることに成功しました、そして、先程のあなたの言葉通り、みなで後始末も行っていたのですが、ある依頼が私の妻へと入りました。ええ、ご存知、大鼠退治ですよ。正直、私は愛する妻一人を何だか分からない場所へと送る事は遠慮したかった。ですが、王命ですので逆らえない。致し方なく。従わざる終えぬ状況なりに私も些細な抵抗しましてね。私がついていくことを条件に許可しました。只今、妻は王城で女王にお会いしていることでしょう。私はこの者達が出合い頭にあなた方に殺されることの無いようにと、補佐する役割を担ってここにおります。」

 ニコニコとラックランド伯爵は軽快に話す。


  ***


 彼らが話し終わり、部屋を出て行った後。


「どう思う?」

 フォード公爵がそう皆に聞く。

「うん、本物だと思う。先程、二コラから手紙が届いたわ。ラックランド伯爵は嘘をついていない。」

 リナが発言する。

「それに優位意義な情報を手に入れられた。ドルトムントの所有する私達の目を誤魔化せるアイテム、それは―――」


 トントン。

 まともやドアを叩くノック音だ。


「どちら?」


「エーベルト・グリフ様です。」



 遅れましたがなんとか投稿できました…よかった

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