表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/111

王都到着

いつもありがとうございます!


「リナ、君が帰ってこられないと聞いて、私は、私は、気がふれそうだった…ああ、よかった。本当に良かった。」

 そう言いながら、頬に、瞳に、額にとキスの嵐を浴びせている。


「ちょ、デッド。落ち着いて!」

 夫の行動に戸惑い、距離を置こうと突っぱねてみるが、ビクともしない。


「だって、君がここに存在しているのか、確認しないと。あ!?唇がまだだったね。」

 そうフォード公爵が言い、そのままブチュっと口づけをかました。


「はあ、人のこと言えないじゃない。」

 オリヴィアがぼやいた。


 唇が離れた瞬間、フォード公爵が後ろへと襟首を引っ張られ、下がらされる。


「時間がないから後にしろ。」

 そう言いながら引っ張ったのは、カイルであった。


 フォード公爵がまた邪魔をしてと、カイルを睨みつける。


 リナも公爵を宥め、背中を押して、王城へと向かった。


  ***


 王城には、馬車で向かう。

 三台用意されており、一台目はフォード公爵家の紋が刻まれた大きな馬車で、フォード公爵とリナ、そしてエマが乗り込んだ。

 フォード公爵はリナと2人きりで乗りたがったが、エマとカイルに叱られる。

 乗車中、リナが公爵の膝の上に乗ることを条件とし、譲歩した。


 二台目は王家の紋が刻まれている。

 これにはオリヴィアとハロルド、そして第一王子が乗車した。

 カイルはこの馬車に乗るのを嫌がり、第二王子に配慮して、第一王子がオリヴィアと同乗した。


 残った馬車、前の二台より小さめの三台目にはカイルと第二王子が乗車した。


 馬車は無事に王城へと到着した。

 だが、二台目の馬車に乗った第一王子は降車後に語る。

 あの時間は精神が鍛えられ、無の境地に達し、気配を消すスキルを身に着けられる術を身に着けたと。


 ***


 王城につき、通された部屋で身なりを整え、一休みしていると、扉が強く叩かれる。


 呼ばれて通された部屋は、宰相のハロルドには見慣れたウェルト貴族の重要な会議を開くときに使用する議場であった。


 厚い扉が、開かれる。


 そこにはすでに、この国の主要貴族が集まっていた。


 入室した瞬間から仲睦まじい2人の近しい距離と腕組みに視線が集中している。

 だが、2人はそんなこと等お構いなしに視線を互いに逸らすことなく、微笑み合いながら案内された席へと優雅に向かい、静かに着席した。

 席に着いた後も2人は手を握り、楽しげに話し続けている。

 注目の的になっているのに、気が付いていない2人であった。


 扉の外が騒がしくなり、開かれる。


 次に入ってきたのは、オリヴィアの祖父母である前ハートフィル侯爵夫妻、そして、その後ろに両親であるフォード公爵夫妻であった。


 開かれた瞬間、リナ(母親)がケイト(祖母)に食って掛かっていた様子であったが、母親はサラッと澄ますと姿勢を正し、彼らの後に続き入室する。

 案内された席へと静かに座った。


 おかしなことに、ハートフィル前侯爵夫妻が国王の横である。

 この国の王子、公爵家や王弟を差し置いてだ。


 その答えは、この後述べられた陛下の言葉で得られた。


「皆、夜更けに集まってくれて感謝する。少し前に彼女らが帰還した。明日集まる予定であったが、奴に不穏な動きがあったとの報告を受け、とり急ぎ話し合わなければならないと判断した。そして、これより、ハートフィル前侯爵夫人をケイト・アン・ルトゥ・ルタール=ハートフィル、故国ルタール女王と呼ぶよう、命じる。」


 ルタールがあったならば、女王であったオリヴィアの祖母ケイトを、そう扱うよう王が命じた。

 そして、これを知る者という事は、例の力の事もここに居る者達は知らされているということのようだ。


 例の力、ルトゥの長女が受け継ぐとされる自然の力を操る能力のこと。

 また、ドルーの力を打ち消すこともできる力のことだ。


 前者の力はウェルト国にとって重要な役割を果たしていた。

 実は、オリヴィアの祖母ケイトがハートフィル侯爵と婚姻を結ぶ際に、王国との契約も結んでいた。

 国を豊かにする代わりに、全面的にケイトとその血を受け継ぐ者を守護するという契約である。


 国を豊かに…彼女が嫁いできてからというもの、この国では飢餓や災害につながるような自然の猛威は一度も起こっていない。

 毎年、収穫祭は大盛況で、鉱山からは多くの産出量を得ていた。

 国は潤い、民は穏やかな暮らしを得ている。

 国は安定し、大国へと変化した。


 つまりは彼女の力さまさまである。


 彼女がいる限り、国の土壌は潤い、水害の心配もなく、活火山の噴火も起こる事はない。

 様々なことに、彼女は力を貸しているのだ。


 それは、ここに座る国を動かす重要なポジションに就いている口の堅い貴族のみが知り得る情報であった。


 それなので、彼女の事を女王と扱うという事が、何を示すのか、これからの話し合いがどれほど重要なものであるのかが伺えた。


 皆は唾を飲みこむ。


「さて、これから話し合いを始めようと思うのだが、全てがドルー側に暴かれた今、このまま進めるのはよろしくない、そうだろう?ルタール女王よ。」

 陛下がケイトへと話を振る。


「ええ、ではすぐに片付けましょう。リナ!!」

 ケイトが娘の名を呼ぶと、リナが立ち上がる。


「はい、陛下!」

 リナがそう返事をし、例の呪文を口にする。


  “$%$&$$、★★##”

 その言葉と共に、室内に居た騎士が動いた。


 カイルが陛下の後ろに立つ、側近の1人を取り押さえる。

 他の騎士も、貴族や、その後ろに居る従者を取り押さえている。

 扉の外でも、悲鳴やモノが倒れる音がする。

 この室内と同じような状況が城内でも起こっているようだ。

 捕まえられている者達が抵抗しつつ鵜縄にされて運ばれて行く。

 頭の居なくなった部署の者や、捉えられてしまった従者を見送る貴族は不安そうである。


「殿下、監視に指示を出し、鼠を全て捕らえました。」

 城内へ侵入していた鼠は敢えて泳がせていたのだが、全ての者に監視がついていた。

 監視がたった今、リナの言霊を受け取り、一掃し終えたらしい。


「あい、わかった。では始めようか。」

 その言葉を合図に、世界を巻き込む重要な会議がやんわりと始まったのであった。



忙しすぎて趣味の執筆が進められず、あと少しでストックが無くなります…

途切れぬよう頑張ります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ