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ハルクからの出国

いつも読んでくださり、ありがとうございます!!


一行は、神殿のあった町から馬車で移動し、西大陸へ物資を運ぶために作られた旧街道を目指していた。


前日、神殿から直ぐに駅へと移動し、ウェルト行の汽車に乗る予定であったのだが、見慣れた服を纏うものに呼び止められて大聖堂へ戻ってみると、自分達を今か今かと待ち構えていた人物たちが居たのだ。


彼らと話したのち、聖地ゲベートで一泊することとなり、翌日の旧街道を使ったウェルトへの入国が決まった。

 というか、それしか選択肢が用意されていなかった。


 旧街道は昔、西海を渡るために海岸線沿いへと続く道を隣国ネペジルが独占し横暴な振る舞いをしていたのだが、それを回避するために近隣国が協力しハヌル国の、山を切り開き、新たに海岸線へと続く道を作ったという経緯がある。


 昔はペネジル以外では、この道しか西側へ行けるルートはなかったのだが、現在では、観光業で潤ったハヌルに新たに舗装し作られた大きな街道が何本も通されており、あらゆる国に向けて線路が伸びていて、汽車も数多く走っている。


 汽車は物資や人を運ぶのに時間も掛からず便利なので、こちらが人々には重宝されるようになったのだ。


 その為に道が凸凹であったりと問題点の多い旧街道はあまり活用されなくなっていた。


「もうすぐトンネルね。」

 リナが言う。


「はい、例の一団が現れると言う場所ですね。とても怖いです。」

 オリヴィアが身を強張らせてそう言う。


「私があなたをお守ります。」

 ハロルドが同じ馬車で隣に座るオリヴィアへと声を掛け、両手を包み込むように手を添えて安心させようとする。


 2人の甘い雰囲気に、同乗するリナとエマは無言で窓の外へと意識を逸らすのであった。


 外では、颯爽と馬に跨り、馬車と並走しているカイルがいる。

 彼が馬車の窓へとにわかに近づく。

 そして声を掛ける。


「これよりトンネル内に入ります。気を引き締めてください。それと、ハロルド、場を弁えろ!」

 馬車の外に居るから車内の様子は分からないはずのカイルにまで諭される。

 よほど、同乗する者たちの表情がげんなりしていたのだろう。


 そして始まった。

 分かっていたことだが、トンネルに入るや否や、賊に取り囲まれてしまう。


「報告よりも人数が多いわ。」

 囲まれた人の数にリナが零す。


「では、私は馬車を降ります。私が下り次第、硬く施錠をお願いします。」

 ハロルドはそう言うと、先程の甘い雰囲気は何処へやら。

 険しい顔つきで勢いよく馬車から飛び出していく。


 約束通り、彼が降りた後に、リナが容赦なく馬車の内側から施錠する。


「お母様!?」

 少し怒りを滲ませながらオリヴィアが呼ぶので、母は答える。


「私達が戦闘に巻き込まれて足手まといにならないようにする為よ。今は我慢して。」

 リナは呆れた顔をして娘にそう答えた。


 母は十分に理解していたのだ。

 接近戦で戦えない自分達が今出て行っても捕まるだけである事は分かっている。

 だから自分達が標的とされ何かあってはいけないと施錠をするのだ。

 外に居る彼らが危険であると言う事は百も承知だ。

 うち鍵をしっかりと掛けるよう言い渡されているが、彼らに被害が出たらと内心では気が気でない。

 馬車内へと逃げられるように鍵を開けておきたいと考えてしまうのが本音である。


 だが、事前に皆で決めた、うち鍵を掛ける事を守っているのだ。

 彼らを信頼しているから。


 暫く馬車の外で金属音やドサッとい重い物が転がる音がしていた。

 オリヴィアは2人の無事を心から祈った。

 ジッと待っていると、馬車の側壁をコンコンと叩くような音がする。


「合図だわ。」

 リナはそう言うと馬車の扉を開き、下りていく。


 扉が開いた瞬間、外の景色がオリヴィアの視界に飛び込んできた。

 足元には倒れている男。

 剣を交えて戦う男たち。

 そして、その手前では、カイルが剣を振るう。


 少し離れた所では、ハロルドが大男2人に攻撃され、片膝を着きそうなくらい体が押されていた。

それを目撃した瞬間、オリヴィアの脳内には彼の事しか考えられなくなった。

 

 “ハロルド様が危ない!!”


 オリヴィアはその光景に居てもたっても居られずに、馬車から身を乗り出して一歩外へと足を踏み出してしまった。


「オリヴィア、あなたは戻りなさい。鍵を閉めるのよ!!」

 エマがオリヴィアの後ろからそう声を掛けた瞬間、オリヴィアの体が、宙に浮いた。


 オリヴィアの視界の先がトンネルの壁へ、そしてトンネルの足元と無理矢理に変化させられていく。


 何が…起きている??


 気が付いた時には、オリヴィアは何者かに担がれて、運ばれていた。


「引けー!!」

 トンネル内の胡散臭い賊たちが一斉に引き揚げ始める。


 カイルとハロルドに倒され起きあがることが不可能な者や、体を押さえつけられていた者達以外が蜘蛛の子を散らしたようにトンネルの横道へと消えて行った。


「待て!!リヴィーーー!何てことだ!?」

 ハロルドが顔を真っ青にして声を絞り出す。


「急げ!決して見失うな!!」

 カイルが味方だと思われる者達に大声でそう叫んだのであった。


オリヴィアが連れ去られました

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