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再び出立

お読みいただきましてありがとうございます


クロスター邸を出発する際、大々的に送り出されることはままならないので、別れの挨拶は、屋敷内でひっそりと行われた。


「道中の無事を祈ります!」

クロスター公爵やウィリアムが王城のごたごたの後片付けに駆り出され屋敷を留守にしているため、留守を預かるダニエルが先陣切って一路平安と言い放つ。


「ありがとう。この御恩は忘れません。」

リナが感謝の言葉を述べる。


「何を言いますか!困った時はお互い様。私達は、大切な友人の為に動いただけですわ。ね、オリヴィア。」

キャサリンが微笑みオリヴィアへと投げかける。


「ありがとう、ケイティ!」

オリヴィアはキャサリンへと抱き着いた。


「ハハッ、焼けるな。」

ハロルドが小声で呟く。

その言葉を拾ったカイルのこめかみには青筋が経つ。


「それにしても、変装がお上手なのですね。」

 クロスター公爵夫人がまじまじと2人を眺めながら、声を掛けた。


 これからの旅は少しばかり無理をするかもしれないという事なので、ドレスではなく動きやすい服装をと考えた結果、オリヴィアと母親リナは男装することとなったのだ。


「驚いたわ。ハートフィル侯爵とウェルト国の王様のようです。とても似ていますわ。遠目では分からないかもしれません。はあ…実によくできていますね。」

 クロスター公爵夫人は彼女達の変装にとても興味を持ったらしい。

 はあ、へ~と声を上げてまじまじと目を輝かせて観察している。


「も、もしかして、コレが噂の白薔薇様!?」

 キャサリンがワナワナしながら、マーガレットに尋ねる。


「そうよ、ウェルト王国の社交界を統べる貴公子。その名も白薔薇様よ!本人には知られていないけど、秘密の愛好団体“白薔薇会”が存在し、彼女の警護と秩序を担っているわ。この大きな婦女団体の勢力は国王の愛好団体“KINGの犬”を超えると言われているの。」

 マーガレットがキャサリンの耳元で答える。


「ケイティ、白薔薇様のことを知っているの?この格好しているとついつい演じたくなるのよね。『やあ、小鳥ちゃん、私に会いに来てくれたのかい?それならば、私と2人きりで内緒のお喋りをしないかい?』って感じで演じては、様々な情報を聞き出しているのよ。」

 キャサリンの顎に指を掛けて台詞を吐くと、キャサリンの顔が茹蛸のように真っ赤になっていた。

 顎から指がそっと外されると、キャサリンは無言で後ずさりして、マーガレットの後ろへと隠れた。

 その移動の速さは、瞬きをする間に終えていたほどのものであった。


「メ、メグ!?私も白薔薇会に入るにはどうしたらよいのかしら??」

 マーガレットの後ろで、マーガレットの背中を突きながら、キャサリンが極小の声で尋ねている。


 そんなこととはつゆ知らず、オリヴィアの関心は母親の変装にあった。

「お母様、伯父さまに変装していたと聞きましたが、ここまで似せられるのですね!まるで本人の様です。凄いです。」

 感動しているようだ。


「まあね、何せ年季が違うから。私は十代の頃から兄に成りすましていたし。今でも要望があればやらされているのよ。声真似だって出来るわ!オホン『陛下、仕事をしてください。集中してくださらないのならば、王妃様に言い付けます。しばらくは会ってくれなくなるだろうな。さあ、とっとと片付けましょう。』って感じにね。」

 モノマネは衰えていなかったようだ。


 皆が爆笑した。


「楽しい一時ですが、フォード公爵夫人、それをむやみに披露するとアルムに怒られますよ。さあそろそろ出発のお時間です。貨物列車が来てしまいます。」

 カイルが親しい間柄の嫌味を交え、出立を催促する。


「分かっていますよ。それでは皆さん、無事に辿り着き、事が落ち着いき次第、お礼のご挨拶にまいりますゆえ。それまではお元気で。またお会いしましょう。」


 そう挨拶を終えると、オリヴィア、ハロルド、リナ、カイル、そしてリナの専属侍女エマとクロスター家の護衛ベンの6人は、屋敷の裏手の小さな出入口から用意されていた馬に各々跨り、ひっそりと出発した。


話しの区切りの都合上、短くてすみません。

(おまけ)ご存知の通り、リナはアルムの影武者をしていました。

ですが、未だに任せられることがあります。

例の能力もあるので、外交などで、他国へ行って来てと王から命ぜられ、行かされることがあるようです。

その際の護衛はカイルの役目です。

最近は東の大陸に鼠が増えたため、行動を控えています。

その為、アルムから仕事が減らないと頻繁に呼びつけられては愚痴を零されるので、煩わしいとの事です。

心配で、ついつい会いたくて呼び寄せてしまう兄の心境を汲み取れない、鈍感妹でした。

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