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【とある公爵の日記より】

とある公爵(ハロルド)の心の叫びです


 ヤッタァァァー!

 おめでとう、私!!!!

 まずはお祝いだ。


 オリヴィアがフォールズ辺境伯家へ連れていかれて、どうなることやらと思っていたが、まさかのどんでん返しが待っていたなんて!?


 私は、オリヴィアの夫となったぞーーーー!!!!


 オリヴィアがラックランド伯爵夫人に連れられて屋敷を出てから、自分もこの国へ滞在している間に泊っているホテルへと一度戻ることにした。

 何かしらの連絡があるはずとラックランド伯爵夫人に言われたので、連絡を寄こすならばここだろうと素直に従った。


 部屋で何もしないでいると気が気でないので、机へと向かい仕事を始める。

 これまでの出来事を紙に書き留め始めた。

 そうこうしていると、カイルが訪ねてきた。


 カイルは私の母方の従兄弟だ。

 王城においても何かと縁があり、ここまでほどほどの距離でお互いに手を貸し、逆に助けられてとやってきた。

 カイルは元々、陛下の側近でもあり、近衛騎士だった。

 今は、国王直属の騎士として、フォード公爵家へ派遣されている。

 それは、リナが憎たらしいフォード公爵(アイツ)と婚姻を結ぶ際の王家との約束で、王家が彼女を守ると言う約束があるため、分かりやすい意思表示を兼ねているのだとか。

 その役目をカイルが心願したらしい。

 私は、陛下が一途過ぎる部下への配慮で役目を与えたと推察している。


 こいつは昔からオリヴィアの母親であるリナの事が大好きだから…。

 態度に出さないし、周囲にバレていないと本人は思っているようだが、近しい者は大抵悟っている。

 私も昔の話だが、恋のライバルであったので、その事はすぐに見破った。


 あれから彼女が嫁ぎ、公爵夫人になっても、カイルだけは彼女の傍で、ずっと恋心を隠し、寄り添っている。

 どんなに果敢な令嬢に迫られようとも、心を揺るがすことはなかった。

 その令嬢も、カイルが部下と縁を結ばせ、良い夫婦となり幸せに暮らしているのだから、彼の心を知る私からしたら何とも言えない気持ちにさせる。


 自分の幸せを一番に考えろってんだ!と、私は時々、カイルに言ってやりたくなる。

 昔の自分を見ているようで、凄くもどかしいのだ…。


 おっと、話しが脱線した。


 カイルと合流してからの話だ。

 二人で情報を交換し議論を交わすと、カイルはリナが滞在しているというフォールズ辺境伯家へ戻るといい、私は国境越えの準備を整えたのち、クロスター領に行く途中の一本木(巨木が生えている地で休憩ポイントや目印として旅人に使われている場所)で落ち合うと言う約束をした。


 だが、これが失敗であった。

 再びオリヴィアに会えると、多少、いいや、かなり浮かれていた私はしくじってしまったのだ。

 後をつけられていたなんて…。

 正確には私の護衛を監視され、私の動きまで読まれてしまったとのことでさったが、その結果、荒野でオリヴィアを乗せた馬車は私の目の前で瞬く間に敵に囲まれ、彼女は王城へと連れ戻された。


 そして道中の馬車で、あの話が交わされたのだ。


「聞いてオリヴィア、もし、この先でヘンリー殿下との婚約破棄が行われた場合に、あなたは直ぐに聖堂教会へ行って、誰かと結婚してもらわなければならないの。そうしなければ、ドルトムントがあなたと無理矢理にでも結婚しようと動くはずだから。空白を作たずに、他の者と婚姻を結んでしまいたいの。そのために、結婚相手をすぐに決めなければいけない。けれど、破棄後、その場で契約を結ぶとなると、カイルかハロルドの二人しかいなくて…先にこの話をカイルにしたら、自分は生涯独身と決めていて、それを理由にある令嬢の求婚も断っているから、結婚の話を受けることは出来ないと固く断られてしまったの。鼠に悟られる前に実行できる人物が他に心当たりが居なくて、つまりは、ハロルドにこの役割をお願いしたいのだけれど…いいかしら?」

 二人を交互に見てリナは、婚約破棄は王家との契約であるから、あり得ないことだけれど、念には念をの最終手段だと言ったのだ。


 この言葉に、私は感謝した。


 これこそ、降って湧いたマカロンだ。


 私は間髪入れずに了承した。

 がっついているように思われないように、態度を取り繕う。

 脳内はもうすでにオリヴィアとの結婚でいっぱいになっていたがね。


 あの演説でいったん気持ちを戻し、護衛として冷静になったが、再び控室で婚姻契約書にサインを書かされ、興奮が最高潮に復活した。


 まさか、妄想が現実になってしまうなんて…これを提出さえしてしまえば!!

 と、掻っ攫って聖堂へ提出しに行きたかった。


 そしてあの瞬間が来た!

「ウェルト王国ハロルド・アーハイム公爵とオリヴィア・フォード公爵令嬢との婚姻を、大主教、聖ニコライの名のもとに認める。ここに2人を正式な夫婦と宣言する。」


 大主教の言葉を聞いた時はうっかり昇天しそうになった。

 本当に願いが叶うなんて…


 一日で色々なことが起こったが、今日と言う日は、私がこの上ない幸せ者の頂点となった日であった。


 ドルトムントの件が片付いたとしても、彼女に別れを告げられぬよう、努力していくのみ!

 頑張れ、ハロルド!

 絶対にこの機会を逃すことなく、彼女の心を得るのだ!!

 私の戦いはここからだ!

 






頑張れ、ハロルド!

降って湧いたマカロン

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