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クロスター公爵邸

あけましておめでとうございます!!


 クロスター領の中心街を抜け、中央から伸びる真っ直ぐな一本道を走り続けること、寸刻、高い木で作られた生垣で仕切られた広大な敷地が現れた。


 鉄格子の門の前に背筋をピンと伸ばした兵が立っている。

 カイルが先駆けて知らせに走ってくれていたので、杖にアイビーが巻き付いた紋様の入る馬車を見るや否や、重たい門を開けてくれた。


 玄関扉の前には、カイルとその横にウィリアム・クロスターに似た青年、その後ろにはキャサリンとマーガレットが姿を見せていた。


 オリヴィアが馬車から降りると、キャサリンとマーガレットが駆け寄り、両脇から身体をギュッと抱きしめてくる。

 心配したのだと、無事でよかったと涙を浮かべていた。

 王城であった事をすでに知っている様子であった。


 心配をかけてしまったと、オリヴィアも両手で2人を強く抱きしめ返した。

 ごめんねとありがとうの言葉を添えて。


 抱擁を終え、屋敷内へと足を踏み入れる。

 流石は公爵家、アドラシオン国で踏み入れたどの屋敷より広大で、華美であり、優美でもあった。

 通された応接間には、先鋭的な置物が並び興味を引く。

 引き寄せられるのを我慢して、挨拶もそぞろにソファへ座り、話しを始めた。


 ちなみに、カイルの横に居たウィリアム・クロスターによく似た青年は、ウィリアムの弟でダニエルという。

 ダニエルは西大陸に留学中に、オリヴィアの父と知り合った。

 陛下から命ぜられ、西大陸視察をさせられていた父にカイルもついて回っていたので、自然とカイルとも知り合う事となったのだ。


 カイル達が訪れた国に留学していたダニエルは、兄が護衛をしている令嬢の父親と聞いて、エドワードに声を掛けてきたのがきっかけで仲良くなり、会えば親しく会話する仲となった。

 エドワードも、彼が面白いものを学んでいるとして興味を持ち、意気投合し、そこにカイルも自然と加わった次第だ。

 そしてその後、陛下からの任務で、とある疑惑を調べる為に彼と協力することとなり、親交をさらに深めたのだという。


 オリヴィア達が着くまでに、カイルがこれまでの経緯をクロスター家に居た者達に説明してくれていたので、これからの話に素早く対処出来た。


 フォールズ辺境伯の敷いてくれていたルートにはすでに罠が仕掛けられ、使えなくなっている以上、どう国境を越えるかを模索中なのだ。

 フォールズ辺境伯は言うには、自分の身内の領から送り出すほか、ウェルト王国へ入国許可を出すのは難しいだろうと話していたので、不安しかない。


「あ、そうだわ。ウェルト王国へ直接抜けるのではなく、まずは別の国へ一度出て、それからウェルト王国に入るのはどうかしら?私も留学する際にそのルートを使ったの。」

 と、マーガレットが画期的な提案を打ち出した。


 マーガレットが提案したルートはこうだった。

 まずはクロスター領の端から西に延びる汽車に乗り、隣国であるハルク国で一度下車。

 その後、ハルク国からウェルト王国へと向かう鉄道線へ乗り換えるといったものだ。


 ハルク国は古代史に登場するウェレが身を隠したとされる土地が存在する国だ。

 それに西海岸へのトンネル開通以来、西大陸へ船で渡る者達の通り道となっており、汽車の開通により、観光も盛んになっていた。

 そのおかげで検閲も緩く、事前の入国審査書類や身体を厳重に調べられることもないため、比較的入国しやすい状況らしい。


 ちなみに、その隣国ネペジル国は周辺国との悪化から当時の王政へのクーデターが起きて、今は外交の優れた前王の甥が即位し、周辺国とは修復に努めているそうだ。

 今のところ、ウェルト王国ともよい関係が築けている。

 そう仕向けた裏の首謀者は、世間に知られることはない…。


 キャサリンによると、東側から向かう大公国を抜けるルートもあるのだそうだが、鼠のうじゃうじゃはびこる大公国へ入国するのは危険極まりないとのことなので、そのルートは即座に却下となった。


「では、明日にでもここを出発し、ハルク国へ向かいましょう。」

 そうリナが発現すると、待ったがかかる。


「おまちください。明日よりも一日置いて一度場を整えてから、ここを出た方が良いかと思われます。」

 発言したのはキャサリンだ。


 キャサリンが集めた情報によると、今、オリヴィア達の行方はレスター伯爵邸からプツリと途切れている状態にあるのだという。前レスター伯爵がうまく攪乱してくれたお陰らしい。

 敵側が血眼になって方々へと散り探しているのだとか。

 かなりの範囲に捜索要員たちが散ったとの情報が入っているらしい。


「そこで、ガーネット子爵家にお願いして、明日、貴女方が尋ねてくるとの情報を流してもらっています。あそこの領地の南部に面した隣領はウェルト王国との国境のある山に面していますので、ありもしない情報を彼方此方へ流し、そちらに目を向けさせます。その合間を見計らい、皆さんには汽車でハルクへと向かってもらいます。よって、出発は明後日の早朝が最適です。」

 マーガレットも参戦し、策を披露する。


 どうやらここにオリヴィアたちが到着するまでに、多くの情報を集め、作戦を練ってすでに情報操作などを実行してくれていた様だ。


 皆の信頼を得るには十分な行動であった。


「ええ、その案で行きましょう。」

 リナが彼らの案に頷き、他の皆にも目配せをすると、目が合ったものは頷く。

 満場一致で決まると、皆、深く一息ついたのであった。


 

今年も投稿はゆっくりとなりますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします☆★☆

投稿が止まらぬよう、努力していきたいと思います。

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