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決着

読んでくださり、ありがとうございます☆★

続けられる励みとなっております。


「私は…」

 クロウエア伯爵が発言しようとした時に、リチャードが言い放った。


「お前が犯人だったのか!?」

 その言葉に、クロウエア伯爵が目を丸くし固まった。


 我に返ったクロウエア伯爵が慌てて訴える。


「そんな!?リチャード殿下!リチャード殿下ー!!話が違うではありませんか、私には何も害が及ばないと、ただ、平民に依頼をするだけだからとあなたがおっしゃったではありませんか。なぜそのような事をおっしゃるのですか?私に全ての罪をかぶせるおつもりだったのですか?」

 必死で、リチャードへと訴えている。


「私は何も知らぬぞ。」

 リチャードがそっぽを向く。


 クロウエア伯爵が崩れ落ち、放心状態となる。

 すかさず近衛騎兵が駆け寄り、縄で体を縛られ繋がれた。


 多くの貴族たちは、リチャードがデーヴィッドを殺害したものと受け入れ始めた。

 物証や証言がいくつもあり、直接的な犯行は行っていないものの、彼が犯行を示唆し、深く関与していることは紛れもない事実だと、そう感じているのだ。


「そうですか…これでも認めないと言うのですか…なんて見苦しいのか…」

 ヘンリーは怒り続けるのに少し疲れたといった顔をする。

 自身の犯行を認めないリチャードへと最後だとう思いで質問を投げかける。

 幼き頃には権力など分かっておらず、仲良く庭で掛け、遊んだ記憶もあった。

 血のつながりもある。

 どうか、自らの罪を認めて欲しい…。


「私は何もやっていない。」

 何処かを一点に見つめ続け、リチャードが額から汗を滲ませ言った。

 ヘンリーは目を閉じた。


「殿下、もう決着を付けましょう!!」


 そう言って男が貴族たちの間を通って、中央へと彼は登場した。

 その後ろには、リチャードの側妃マリアを従えている。


「えっ、アイツだわ…それにこの匂い!?気分が悪い…」

 体を硬直させ、オリヴィアは呟いた。


 ヘンリーの横に来た男が大きく発する。

「皆さま聞いてください。これより、リチャード殿下がしてきたこれまでの悪事を側妃アリア様が証言なさいます。それではどうぞ。」


 そう言われて一歩前へ出たリチャードの側妃マリアが語り始める。


「リチャードの側妃マリアでございます。私はグランドル国の貴族の庶子で、私の役目はリチャードの為に歌う事でした。私はグランドル国のしがない劇団で舞台女優をしておりましたが、歌が上手いという理由で声を掛けられました。そして、リチャードの側妃に迎えられたのです。まさか、私が一年後にレクイエムを歌うために呼ばれたとは思いもしませんでしたが…これは私の日記です。私の知る限りのリチャードの記録を事細かに記入しています。それからこれはリチャードが燃やしておくようにと言って置き去りにしていったメモや手紙です。己の保身のために、燃やさず残しておきました。彼は何かを計画する際には、私の室に人を呼び、密談をしておりましたので、先程の計画の走り書きのメモも、もちろんあります…これがデーヴィッド殿下の殺害計画だったと早くに気がついていたならばと悔やまれます…亡くなってしまったデーヴィッド殿下の王子妃様は、この国に来て王族の暮らしどころか、高貴な身分の身の振り方、何もかも分からぬ私に、大変良くしてくださいました。親身になって私を助けてくれたのです…王子妃様だけでした。私は、もう黙っていられません。知っている限り、全てをお話いたします。」


 この証言から逃げられないとリチャードは悟ったのだろう。

 リチャードの顔は大きく曇り、顔色を変えた。

 肩を震わせ、自身の側妃マリアを睨みつけている。

 マリアはそんなリチャードへと不敵に微笑んだ。

 リチャードは何かに気づいたのか、必死で誰かを探すようにキョロキョロと周囲を見回す。

 見つからないのか、天を仰ぎ、声にならない叫びを放ちながら、崩れ落ちた。


 そうして、ついにリチャードは、デーヴィッドを殺害した事を認めたのであった。


 会場内は騒然としている。


 あっさりとその結果は受け入れられ、議長によりガベル(ハンマー)が打ち付けられ、室内は静まり返った。


「これにて、審理を終えます。」

 決着がつく。


 リチャードは崩れ落ち、何かを呟き続けている。

 リチャードが罪を認めたことにえより、処罰と今後の対応が話し合われた。


 そして、聖職貴族の議長からリチャードへと処罰が述べられる。

「リチャード・アドラシオン。そなたは実の兄であるデーヴィッド・アドラシオンの殺害を示唆した主犯として、処罰を下す。そなたの王位継承権は剥奪され、コーデリア要塞にある魔塔にて幽閉とする。」


 リチャードは悔しそうに顔を歪めた。


「ああ、そうでした。のちほど、ツインレイの際に兄うぇ…リチャードが命じ私を城内で襲撃した事件。あなたに言われて、事件を起こした者たちが全てを吐いておりますので、その裁きも受けてもらいますから。」

 ヘンリーが淡々と話す。


「………」

 リチャードは言葉を返すことがないまま肩を落として俯き、王の間を出て行った。


 ちなみに、現王の側妃様も判決が下され、王国内でのこれまでの功績を抹消、権限の取り消し、そして廃妃と国外追放が言い渡された。

 国王の側妃としての存在を消され、数日後には公国へと送還されることが決まった。

 公国に戻っても自由はなく、裁判にかけられるだろう。


 王弟は、まだ公国の判決がなされていないので、全ての決議が終わるまで保留となり、王宮の地下にて監禁となる。向こうの決着がつき次第、罪状を言い渡されるようだが、おそらく爵位を返上にて身分を剥奪される。

 その前に、まもなく公爵家から離縁が言い渡されるだろう。

 その後の彼は、平民となる模様だ。



 そして、室内が今だ、ざわめきが治まらない中で、ある男が発した言葉が静寂を作り出し、一つの波紋として、貴族間に広がっていった。


 その男はこう言ったのだ。


“ ヘンリー殿下は次期国王となります。それに相応しいご令嬢を正妃に迎えねばなりませんね ”


 そう、まだ混乱するこの場で、この信じられない発言が発せられたのだ。



裁判の決着がようやくついたのですが…

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