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裁判1

いつもありがとうございます


「えーそれでは、ヘンリー・アドラシオン。あなたには、実の兄であるデーヴィッド・アドラシオンを殺害した罪の告発があった。告発者は、そこに居るリチャード・アドラシオンである。それでは、詳しい説明をどうぞ。」

 聖職貴族が紙を読みあげ進行し始めた。


「このアドラシオン国、第二王子のリチャードが詳しく説明いたします。まず、私の調べで分かったことですが、アドラシオン王国第一王子であったデーヴィッド義兄上を公務の際にモリート山の山頂付近にて殺害したのは、義兄上の側近であったブルース・サンセットであります。」

 皆が両脇に座る通路の中央に身を乗り出し、大きく手振りを交えて、リチャードが話始める。


「馬車の車輪の留め金が緩み小石に乗り上げ車輪が外れ、崖へと滑落し、馬車から投げ出され死亡したとのことでしたが、その際に、近くに居た騎士たちが、馬車から投げ出されるデーヴィッド殿下を目撃しているのです。その際、馬車内に居たのは、義兄上の奥方の実兄であるブルース・サンセットのみです。あの山の手前で小休憩にと立ち寄った領主の館にて馬車の留め金を緩めたのも彼の仕業でしょう。用心深い義兄上は、信頼する部下に何度も点検をさせたのだと聞き取りで明らかになっています。なぜ、義兄上の奥方の実家であるサンセット家のものが犯行に及んだのか、それは、ある者に脅迫されていたからでした。ここにあります資料は、サンセット伯爵家の財政状況です。数年前から、領地の主力商品で多方面に需要のある薬草に有毒な成分が含まれることを指摘され、販売中止が言い渡されました。そのため、領地への財源も確保するのに厳しい状況であったと報告があります。そして、こちらが不正貿易の取引の記録です。その薬草を西国へと輸出している記録であり、ここに、サンセット伯爵のサインがなされています。高額のやり取りのようですが、このことは、報告がなされておりません。そう、違法取引と裏金造りを行っている。実はこの不正を、ある人物に指摘されサンセット家は脅されたのです。そのために、ブルースが犯行に及んだと私は思っております。サンセット家を脅し、義兄上殺害の犯行の計画立て指示した人物こそが、ここに居るヘンリーというわけです。あいつは、義兄上の後釜を粛々と狙っていたのです。」

 リチャードがそう話し終わると、室内の者達から様々な意見が交わされる。


「何という事だ。ヘンリー殿下はそんな人だったのか?そうは全く見えなかったぞ。」

「そんなことをヘンリー殿下がなさるはずがない。そもそもヘンリー殿下は王座を狙っていないので、殺す理由がないのだ。証拠もないじゃないか。」

 など貴族の好意的だったり悪意が合ったりと様々な意見が聞こえてくる。


「確かに、ヘンリーには理由はない。だが、あの人にはあるのではないかな?そう理由は明快、そこに居るウェルト国貴族、オリヴィア・フォード公爵令嬢に唆されたのですよ。彼女が王座を欲しがった。だから、愛する者の為に義兄上を殺した。ほら、あの美貌では、惑わされたのでしょう。悪い女に捕まったものだ。」

 不敵に笑うリチャードをよそに、他の貴族たちがオリヴィアへ目掛けて突き刺す視線を注ぐ。


  …気分が悪い。

 顔に出すまいと、オリヴィアは冷静を装う。


「フッ、ハハハハハハハハッ。なあ、もういいかな?そろそろ、私にも話をさせてくれないか?そうでないと、この場で暴れてしまいそうなのでね。」

 ヘンリーが額に青筋を立て、口火を切った。


「そもそも、今、貴殿が発したことは、噂話を発端とした適当な作り話をまとめたものだろう。憶測にすぎない。騎士の証言は確かにあったが、その本人が行方不明ならば、真実は分からないままだ。こんな空想だけで話を大きくするなんて、豚が空を飛ぶのを目撃したと言う幼き頃のリチャード義兄上の戯言と一緒ですよ。私はそれで側妃殿から叱られ、えらい目に遭った。そう、何一つ確証も無いのに、姉上の身内や私を犯人扱い、一番許せないのは、私の婚約者までも苔落としたことだ。そこまで貴殿が私達を貶めたいと言うならば、私にも考えがある…義兄上、いいや、リチャード・アドラシオン!私を怒らせたことを後悔なさらぬように。」

 ヘンリーはニヤリと不敵な笑いを浮かべる。


「まずは、お前が主張している我が婚約者と伯爵家の濡れ衣を全て拭い去ろう。リチャードが言っていた、我が婚約者が王座を望んだと言う話だけれど、それは絶対にないよ。私と彼女の婚約の際にハートフィル侯爵家側から、結婚したらすぐに私の王位継承権を破棄するという事が第一条件とし提示された。そう、私の王位継承権の事が足かせとなり、求婚してから長らく正式な婚約を結ぶことができなかったのだ。これは、国王陛下もご存知のこと。だから、彼女が王座を欲しがることは、絶対に在り得ない。」

 恐ろしい表情でリチャードを睨み、ハロルドは力強くそう言い切った。


「それから、サンセット家の汚名の返上だね。サンセット領産の薬草セリンだけれど、それは昔から領地内では多くを体内へ取り過ぎる事への健康面が問題視されていた。そして、必要以上に摂取する者が現れ、命に関わる恐れもあるため、重く受け止めた領主は販売中止を決め、国から言い渡される前に領地内で生産を取り止めている。ずっと前からその分野に詳しいものに頼み、毒素の研究は行われていたようだ。すでに毒の成分が根にあることが突き止められており、簡単な方法で取り除くことに成功し、今は更なる改良をかさね、毒を完全に生み出さない薬草の研究もなされている。安全性を確実なものとし、再び売り出す準備を整えているところだ。それに、もともと、伯爵領は多くの領民がおり、領地内外の農産物の需要供給で十分に成り立っている領地。領地運営の財源は有力商品1つが販売停止になったからといって傾くような経営はしてきていないぞ。それから、その薬草の闇取引の証拠書類だけれど、それって偽物だよね?サンセット伯爵のサイン、よく似せているけれど、ここ、ここが違うよ。それと、伯爵は筆後、最後にいつもペン先を用紙の隅に落とす癖がある。こんな風に。まるで花びらの様に見えるだろう。陛下に聞いてごらん。よく知った中だから彼の直筆の手紙もお持ちだ。見せてもらうといい、この書類にはそれがないのだ。つまりこれは、偽造書類だ。サンセット家の噂は全て偽りであり、無実だ。」


 ヘンリーが姿勢を正し、入り口に向かって手をパンパンッと鳴らす。

 すると、王の間の扉が大きく開かれ、数人がなだれ込んでくる。


「何だ!?お前達は!!」

 というリチャードの声が上がる中、その者達はヘンリーの後ろへ到着すると、ヘンリーの後ろ手に縛られている縄を解き、書類を手渡した。



台詞が長くてすみません。

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