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合流

すみません、話の区切りの都合で少し短くなってしまいました。

 馬車内は母親とその侍女のエマと一緒で、これから半日ほど乗車しているようだ。

 その間に母と話をした。


「リヴィ、昨夜も言ったけれど、これまで嫌な想いばかりさせてしまってごめんなさいね。この血筋を隠すために、どうにかしてあなたの存在を目立たないようにしなければならなくて、あなたの評判を落とすことは苦肉の策だったの。あなたは産まれた時から噂が立ちすぎてしまっていたから、皆からの興味をそぎ、好意を集めないようにしなければならなかったの。その為に第一王子の父上に似ているから嫁にはしたくないという発言を利用してしまい、あなたにマイナスなイメージを植え付けてしまったわ。それにより、長くに渡りあなたの心を傷つけてしまった。それに、数年前から多くの鼠がウェルトにも入ってきていたから、あなたの大嫌いな男装も強要してしまった。本当にごめんなさい。」

 母が昔を思い出しながら話し、自分の行いを悔い、深々と謝った。


「お母様…いいのです。確かに昔は嫌な思いもしたけれど、今はそのおかげで、いい思い出や笑い話になっているものも沢山ありますから。それも私の人生なのです。だから私は大丈夫。それに、男装はなかなか面白くて、結構気に入っていたのですよ。」

 穏やかに笑いながらオリヴィアは返答する。


「リヴィもそうなの!?男装ってドレスに比べて断然に動きやすいし、ドレスではいけない場所にも颯爽と出かけられて楽しいのよね~!私も幼い頃から男装をさせられていたのよ。やはり、親が試行錯誤して私を表に出さないようにしていてね。私にはそっくりな兄が居たから、この手は使えるとなってそうなったらしいの。まあ、私が男装して動くことはあの方々達には何かと都合が良かったってのもあったみたいだけれどね…10代は、しょっちゅう兄の身代わりをさせられて働かされていたわ。」


「そうだったのですか!?お母様も男装をしていたなんて驚きだわ。」


 会話の途中で、馬車が停まった。

 外でカイルが誰かと会話している声がする。


 これは、聞き心地の良い、あの人の声だわ!!


 外の様子を伺うのに小窓に掛けられたカーテンを少しずらして外を見る。

 するとそこには、カイルの周りに数人の人影が、その中にあの人が居た。


「ハロルド様!?」

 オリヴィアは声に出すつもりはなかったのだが弾んだ声で名を呼んでいた。


 彼とは接点も無いので、このまま国へと帰ってしまうと、もう会う事もない日常を送ることになるだろうと考えていたからだ。

 それなので、また会えたことに胸の奥底から嬉しさが込み上げる。

 オリヴィアは満面の笑みを浮かべていた。


 その娘の表情の変化に、母親は直ぐに気がつく。

 そして、オリヴィアの今後に、強い不安を覚える。


「リヴィ、あなたもしかして…」

 そうリナが声を掛けた直後に、侍女のエマが低い声で発した。


「リナ様、こちらへ向かってきます!!」


 エマの声にハッと馬車の外へと意識を向け、小窓から顔を出す。

 そして、カイルに告げる。


「カイル、南の方角から来ているわ。この道ではまずい。迂回して、岩場地帯、月の谷を通りましょう。あそこならば隠れ岩が多くありますから、身を隠しながら進めるわ。」

 リナがドルトムントの気配を感じ取りそうカイルにつているとカイルはすぐさま馬車を引く御者へ駆け寄り、指示を出して進行方向を変えさせた。

 護衛たちとハロルドにも伝え、自身も馬に跨り動き出す。


 馬車が進みだす。


 月の谷の入り口を通過して、暫くしたのち、リナは後悔の念を抱くことになる。


「そこの馬車止まれ!!乗っている者、直ちに降りろ!」

 大声が響いた。


 声と同時に多くの馬車を追いかける蹄の音が聞こえてくる。

 御者から悲鳴のような声が上がり、馬車が急停車すると、馬車の周囲に多くの人の駆け寄る足音が聞こえ、停まった。

 すでに多くの兵士に馬車は取り囲まれていた。


 敵が待ち構えていたのだ。


ピンチの予感。

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