邪悪な魔女
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その頃のリチャードもどきは国王の側妃と共に、キャマドラの間を後にしていた。
カツカツカツと力の入ったヒールの高い音を大きく鳴らし歩く側妃の後ろを、リチャードもどきが静かについて行く。
王の側妃が回廊に飾られている一枚の絵の横で、歩みを止めた。
先程のキャマドラの間から、左に行けば王の間へと、右へ進めば中央階段へと辿り着く回廊となっている。
回廊だが戸などで区切れる様な造りになっていて、○○の間と通称がついている。
先程まで横切ったルポの間や晩餐会が開けるほどの大きなコンバの間、その先にあるジャルジィの間まできていた。
宮殿に住んでいない王の側妃は、王の間へは行かない。
いや、行けない。
王妃を刺激する存在だからと、王が許可を出さぬ限り足を踏み入れてはならぬと固く禁じられたのだ。
選択する余地もなく右へと進み続けていた。
そのジャルジィの間の絵の前で、国王の側妃が止まり、感慨深げに目を細め、絵を見上げている。
その絵には、古代史の一説、鼠を使いウェレを探すドルと木々に紛れて暗い穴へと隠れるウェレが描かれていた。
タイトルは“悋気”
「王妃だけでなく、あんな小娘に侮られるなんて……チッ。」
絵を見ながら王の側妃が憎々しい表情で、小さく呟き、舌打ちをする。
「リチャード、あの娘を消せるかしら?いいえ、消すのよ。あの娘は危険だわ。あの娘と対峙していると、心が乱される。従いたくないのに従いたくなる。あの娘に全てを委ねたくなる。この私が…私があんな娘に…まるで、魔法を操る邪悪な魔女のようだわ。」
心底恐ろしいと伝わる震えた声で側妃が手で顔を覆い話す。
「ハハッ、魔女!?邪悪な魔女、いいね~!いい!それは実にいい案だ!!ハハ、アハハハハハ。」
リチャードもどきが王の側妃の言葉を聞き、明るい顔をして高笑いを始めた。
いきなり狂ったように笑い始めたリチャードを心配し、王の側妃がリチャードへ近づき手を掴んだ。
「触るな!!!」
リチャードもどきがその手を強く振り払った。
その反動で、側妃は床へと尻もちをつく。
「リ、リチャード!?!?」
悲鳴に近い声で側妃は息子の名を呼ぶ。
リチャードもどきが側妃へ近づき、床にへたっている側妃の頭を儂掴みにして、こう言った。
「お前らは用済みだ。消えろ!!」
すると、先程まで怯えていた側妃の目が虚ろになり、動きが俊敏となる。
優雅に歩いていた婦人とは思えない動きで立ち上がると、無言のまま早歩きで去っていった。
「本物のリチャードは既に王家の馬車の中だ。お前らはサッサと俺の前から消えろ。目障りだ。」
国王の側妃がさらに早歩きとなり中央階段へ向かい、降りた先の大扉を出て、宮殿の外へと消えて行った。
リチャードもどきとはいったい…
一話が短かったです、すみません。
次の話も短いので、続いて投稿します。
別々の投稿となってしまって、お手数おかけします。