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ネタバラシ

読んでくださりまして、誠にありがとうございます


「はあ、間に合ってよかったー。」

 控えの間まで戻ると、ヘンリーが大きな声で言った。


「それは、こっちのセリフです。」

 オリヴィアが眉間に皺を寄せ、文句を言う。


「うう、困ったな。怒られているのに、怒った顔のリヴィがとても可愛い。もっと見ていたい。」

 ヘンリーがお姫様抱っこのままのオリヴィアのお腹に顔を埋めて、ぐりぐりする。


「きゃあぁあ。」

 突然のへんたい行動に戸惑うオリヴィア。


「何やっているんだよ。馬鹿野郎!!」

 後ろから声がした。


 ウィリアムだ。

 扉を開けて、この光景を目撃し、悪態をついたのだ。

 続々と、彼に続いて部屋に入ってくる。


 マーガレットに、フレデリック、ハロルドも。


 オリヴィアは、ハロルドが無事であったことにホッとした。



 さてここで、皆さんに先程どうやって2人が入れ替わったかを説明したいと思います。


 あの楽器、四角い枠に金属の円盤がぶら下がった物、あれは東方の島国の楽器で銅鑼という楽器なのですが、あれが鳴った瞬間に、彼らは入れ替わったのです。


 皆があれに気を取られている隙に、上から小さな輪っかの付いたロープに足を掛けたヘンリーがスススと床に降り立ちます。

 それにハロルドが交代で、片足を掛け、ロープの上の方を両手で掴み、上に向かって垂直に持ち上げられました。

 滑車が付いた仕掛けが天井に付けられていて、ロープの先、壁際に居る兵士が数人で合図と共に一気に手繰り寄せたそうです。


 それは一瞬の出来事でした。

 これで、ハロルドはシャンデリアより高く上がり、布の中へ、皆の視界から消えます。


 そして、ハロルドが居なくなった所で、ヘンリーがオリヴィアを持ち上げれば完成です。


 ちなみに、上へと消えたハロルドは、高い位置に用意されていた黒板の足場でカーターと出会いました。

 カーターは頭上の監視と護りの役割を命ぜられており、何かあった時のサポートとして、シャンデリアの少し上に見えない工夫がなされ天井から固定された足場を作り、万一の時の備えで瞬時に助けに入れるようしていたのだそうです。

 兵士に合図を送って貨車を動かしていたのもカーターの役目でした。


 その後、ハロルドはシャンデリアから壁の方へと移動を行うために横にも張り巡らされていた貨車を利用したロープの先を掴み、壁の方に居る兵たちにそろりそろりと音を鳴らさぬように手繰り寄せられて壁際へと移動た。

 本来は窓掃除の為に使う窓枠の下枠に足を必死に延ばして降り立つ。

 そこに設置されている細い梯子を使って、やっと床へと戻ってこられたのです。


 ハロルドが移動する位置は、誰も居ないか、全て信用の出来る貴族の頭上を通るようにしてあるので、本人がズドンと落ちない限りは、見られても安心となっていた。

 ハロルドの汗が一滴垂れ落ちようとも、下に居た貴族は何事もないように知らん顔である。

 ただし、視界の悪い中を音が目立たぬようにプルプルと小刻みに静かに震え進み、ハロルドが必死こいて頑張っている様子は、彼らにバッチリ見られていたことでしょう。

 その他の貴族からは、暗いし、天井からぶら下がっている布で遮られ、見えないよう細工されておりますので、バレることはありません。

 あの天井に布をぶら下げて、本来の状態と異なるようしていたのは、この仕掛けを隠す為でもあったのです。

 何かあった時の為の保険にと、ヘンリーが様々な仕掛けをしていたらしく、そのうちの一つなのだと後で知らされました。


 ヘンリーがもしも控えの間に帰ってこなかったらと不安視して、ハロルドやフレデリックにウィリアムから何かあった時の為にと仕掛けの有無を聞かされていたのだとか。


 とまあ、そんなところです。

 説明は以上です。


 ***



「ハロルド様!?無事で何よりです。私に前を見ていろと言ったすぐ後に、頭上に消えていってしまったので、とても心配でした。怪我も無く、本当に良かった。」


 オリヴィアがハロルドを心配する声に、ムッとするヘンリー。

 名前呼びに変わったことも気に食わなかった。


「私もいい年ですので、とても体力のいるこの動作は正直かなりきつかったです。ですが、何とか無事にやり遂げることが出来ました。殿下達は老体を酷使し過ぎですよ。ハハハ。」

 ハロルドは安心したのか、緩んだ柔らかい笑顔で語った。


 今まで見たことのない、笑い声をあげる様子と素の表情を見せるハロルドに、オリヴィアはドキッとしてしまう。

 戸惑いが占め、すぐに彼から視線を外す。


「すぐにリチャードの新しい側妃が歌う独唱が始まるけど、見に行かないのか?」

 ウィリアムが皆にまだツインレイが終わっていないことを伝える。


「ああ、そうだったな。では、急いで広間へ向かおうか…」

 ヘンリーが硬い表情で言った。


「ごめんなさい。私は足が痛むのでここで待ちます。」

 オリヴィアがそう言うと、

「それなら、わたしも―」

 と、ヘンリーが自分も残ろうとした。


 それよりも先に

「では、ウェルト王国からの役目があるので、私目がここへ残ります。彼女の護衛は私がいたしますので、どうぞ皆さまは会場へ。ヘンリー殿下は大切な御身内の大事な儀式です。あとは私にお任せください。」

 と、アーハイム公爵に言われてしまった。


 こう言われては、自分も残るとは言いだしづらい。

 だが、周りのアドラシオン貴族は皆、その意見にご満悦だ。



 ヘンリーは渋々、部屋を出ることになったのだが、残る彼らが、前よりもずっと近しくなっている雰囲気を醸し出しており、気にくわない。

 正直、同じ空間にはいさせたくなかった。


 だが、周りに促されて、渋渋部屋を出る。


 胸に一抹の不安をヘンリーは宿していた。



残念ながら、ハロルドは若くないのです

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