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光りへと導かれしものよ

誠にありがとうございます!!!

お盆ですね。

明日投稿出来ないかもしれないので、今、投稿しちゃいます。


 薄暗い大広間内にて。


 高い位置にある窓は全てが厚い布で塞がれているので、いつもの解放感はなく、天井から垂れさがる布が奇怪であり、中央の舞台は燈台に取り囲まれ照らされ、神々しく、一つの空間にアンバランスで神秘的な雰囲気を作り出している。


 だが匂いは違った。

 貴族の付ける様々な強い香水の香りが充満し、視野から心が高鳴る心境に浸っていたいのに、不快な匂いが水を差す。


 まるで、第一王子の死を嘆き悲しむ大勢の者達がいる一方で、彼の死を望んだ何者かの不快な行動が見え隠れしている、現在のこの国の現状の様である。


 意を決し、オリヴィアとハロルドは中央の舞台へと歩み始める。


 舞台中央へ進み止まると、奥へいる王族へ深く一礼をする。

 続いて、左、右へ。


 “はあああああ、緊張するー”

 オリヴィアは心の中で大きく叫んだ。


 

 ハロルドの腕がオリヴィアの腰を包むように抱き寄せる。

 密着したその恰好は、最初の体勢であった。


 この時に気が付く。

 ハロルドからの緊張が初めてオリヴィアへと直に伝わってきた。

 ハロルドの沿える手にかなりの力が入っていたのだ。


 緊張するのは当たり前だろう。

 あんな風に気軽に間違えてもよいような口ぶりで励まし合っていたが、やはりそれは許されないこと。

 彼は、手本を見ただけの踊りを練習なしで完璧に踊り切らなければならないのだ。


 自分よりも、ずっと精神が追い込まれているはずである。


「ハロルド様、さっき言った約束を覚えていますか?」

「はい、覚えていますよ。」

「よかった。では、共にお叱りを受けましょうね。」

 驚いたようで、ハロルドは目を丸くする。

 そして、すぐに穏やかに笑い、返答する。


「ええ、いいですよ。あなたとならば何も怖くない。」


 ハロルドがそう言った瞬間、音楽が始まった。

 ハロルドの強張った表情は先程よりも和んでいて、変な力もほどよく抜けている。


 仮面の下に笑みがこぼれていた。


 序盤からの密着した早いステップ、ステップ、クイック、ターンの連続の繰り返し。

 指先までの綺麗な動きを重視して、滑らかなダンスを披露する。


 意識をハッキリと保ち、今はダンス以外を考えるな、体を動かせ!!

 オリヴィアは必死に唱えながら舞い続ける。


 オリヴィアの足は、ケント医師の治療のお陰で、今は何とかなっている。

 このままの調子で後半まで動き続けていられるかが問題だ。

 恐らく徐々に何らかの症状が出始めるだろう。


 気力と根性で乗り切る!



 しかしながら、アーハイム公爵は本当に凄いわね!

 見本を何度か見ただけであるのにも関わらず、本当に踊れてしまうなんて、驚異的だわ。


 曲も緩やかになり、交互に踊るパートへと入る。

 片方が踊っている間は、もう片方は微動だにせずポーズを決めて待っているのだが、少しは休むことが出来る。


 フー、やっと少し休めるわ。


 今はアーハイム公爵の単独の舞踏、自分は待機のポーズで止まっての小休憩だ。


 でも、このまま行くと本当にマズいのよね。

 この後、場所の入れ替えがあって、その後に私が踊り終えたあとに、山場がくる。


 その後すぐに例の場面だ…


 仮面を取ったら、相手がヘンリーじゃないと皆に分かってしまうわ。

 アーハイム公爵は、どうするつもりなのかしら?


 集中が欠けていた所為か、ハロルドとすれ違う時に、オリヴィアは床が汗で濡れていた所をヒールで踏んでしまい、ツルっと滑る。

 身体がよろめき、傾いたのだ。


 危うく転倒するところを、ハロルドが素早く腕を差し伸べて、そっと背中を押し返し、オリヴィアを支えた。


「「……」」


 無言と真顔。

 一瞬互いの視線がバチっと合い、互いの瞳が揺れ動く。

 そして、各々の位置へと離れて行く。


 ギャアアアアアー何、今の!?!?

 ちょっとヤバかったけど、何なの!?彼、素敵すぎるじゃない!!

 ヤバい!?胸がバクンバクンいっている。

 ああああ、心臓がうるさ~い。


 内心では軽いパニックであった。


 そんなことよりも自分のパートを踊り切らなければいけないのよ、落ち着きなさい!!と内心部にいる冷静な自分がひょっこり顔を出して諭す活躍を見せる。


 オリヴィアはパニックから何とか抜け出し、心を切り替えて踊り続ける。


 単独の舞が終わると、リフトへ向けてそろりそろりと歩み寄り、手を取りあう。

 曲調は最高潮の盛り上がりに向けて、激しさが増していっていた。


 はあ、彼と踊れてよかった。

 今の私、心から楽しくてしかたないの。

 でもこの後には仮面を…これでもう万事休すなのね…。


 そう思っていた時に、大広間の壁の高い位置でボワッと炎が一瞬走り、瞬く間に消えた。


 あれは何だろう???何かの演出かしら?


 それより今は踊りに集中よ。

 もうすぐ、山場のリフトなのだから。


 シンバルの音と共にオリヴィアが持ち上げられるのだ。

 中盤最大の見せ場。


 中央へと2人は近づき、手を繋ぎ踊る。

 曲のタイミングを合わせ持ち上げるのだが、オリヴィアの腰をハロルドが掴んだ時に、こう言った。


「オリヴィア、何があってもあなたは真っすぐ前を見据えていてください。」


 この時はタイミング的にリフトの体制を取っていなければいけなかったのだが、ハロルドはそれをせずに、そう一言小声で伝えたのだ。


 いったい何を?


 そして、曲の最高潮。

 シンバルの音が響き渡る!

 はずなのだが、鳴ったのは…


 【ごぉぉぉおおおおーーーんーんーんーんー】


 !?!?!?!?!?

 ん、何の音???


 おかしな巨大な音が響き渡り、皆が音の鳴る方へと視線を集中した。


 四角い枠に吊るされた金色の大きな円盤。

 それに何かが勢いよくぶつかったようだ。

 あれは楽器なのか???


 皆が、視線を戻すと、ダンスの見せ場であるリフトが完成していた。

 そして、ゆっくり床へ下ろされる。


 そして、あの場面を迎えた。


 まずは、オリヴィアが自分の仮面を外す。

 高く掲げアピール。

 そして、ハロルドも外す。


 しかし、露わになったその顔は、仮面の下の顔はすでにハロルドではなく、ヘンリーとなっていたのだ。


 驚きを悟られないように真顔のオリヴィアは仮面をヘンリーへと手渡す。

 ヘンリーもオリヴィアへと不敵な笑みを浮かべて差し出す。

 互いにその仮面を受け取ると懐へと差し込んだ。


 そして、2人は息の合ったダンスを踊りだす。

 最後まで踊り切り、無事にフィニッシュとなった。


 少し離れた位置で、2人は、左右奥へと礼をした。

 それが終わると、ヘンリーがオリヴィアのもとへ急いで近づき、そっと持ち上げる。


「は、え、えええ?」

「いいから、いいからね。リヴィ、足、痛いでしょ。このまま、退場するよ。」


 そう、オリヴィアの足は限界に来ていた、今すぐにでも崩れてしまいそうだったのだ。


 ヘンリーがオリヴィアをお姫様抱っこしたまま、会場を後にした。





入れ替わりトリック、大成功。

どうやった??次回を待て。

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