ハロルドの提案
いつもありがとうございます
「どういう事なの?何が起こっていたか、さっぱり分からないわ?」
マーガレットがそう発言すると、男性陣も同調した。
オリヴィアは、自分と皆との感覚のズレを確認しようとする。
「私には、さっきの人が、リチャード殿下には見えなかったの。全くの別人だったわ。でも、皆はあの者をリチャード殿下と呼び、リチャード殿下に接するような対応していた……皆にはどう見えていたの?私には赤い髪――」
マーガレットが話をしようとしたが、続けられそうにない。
ドアをノックする音と共に、それは告げられた。
「そろそろ出番になりますので、移動をお願いします。」
進行がスムーズに進むように呼びに来た騎士の声であった。
「分かったわ。」
オリヴィアが焦りと共に急いで返事をする。
「どうやら、今の話を突き詰めて話す時間はないようだ。今すぐに、この状況を何とかしなければならない!!」
ハロルドが、部屋の隅々まで響き渡る勢いで発し、いい声でそう言った。
***
今の状況を整理しよう。
オリヴィアとヘンリー王子は、追悼の儀ツインレイで行われる鎮魂の舞を踊ることになっている。
だが、ツインレイの開始時刻になってもヘンリーは戻ってこない。
そろそろ出番だってさ。
さて、どうしましょう?
となっているところだ。 以上
「もう、こうなったら私が踊ろう!」
ハロルドが仰天提案を打ち出した。
「えっ、大丈夫なのですか?あの舞を踊れるのですか?アーハイム公爵は練習を一切していませんよね?」
オリヴィアが心配そうに聞く。
「ああ、お手本を見ただけだが…まあ、一通り頭には入っている。細かい動きや順序が少しばかり不安だが、確認して何とかなると思う。それに、今ここに居る男は、私と彼の2人だ。髪の色や体型はケント医師よりも私の方が、ヘンリー王子に近い。おそらく、彼では並んだだけで、王子ではないとバレてしまうだろう。彼が来るまで何とか時間稼ぎをしなければならない、そうだろう?すでに移動の声が掛かった以上、どちらかが代わりに王子のフリをして広間前で待機し、その間になんとか解決策を打ち出すしかない。少しでも時間を稼ごう。」
ハロルドがそう言うと、
「確かに、今は時間が無さ過ぎる。今すぐに広間入り口に移動しなければならないから、そうするしかないわ。急いで対策を立てるから。」
やるっきゃないとマーガレットが深刻な顔で同調する。
「そうだね…じゃあ、フォード嬢とアーハイム公爵は広間入り口へ。私とマーガレット嬢は、二手に分かれよう。私は乗り越える解決策を考える。マーガレット嬢は応援を呼んでくれ。彼らの捜索を。」
「ええ、分かったわ。」
頷き、準備を始める。
「ああ、ちょっとこれだと少しばかり違和感があるわ。身長差が少しだけ違うのよ、リヴィの頭が彼の鼻先に来るようにしないと、鋭い奴は気づくかも。前半部は、2人の密接なダンスが多いから背の違いがよくわかってしまう。違う人物だと疑われるかもしれない。そうだわ!リヴィ…大変だけれど、高いヒールの靴、履けるかしら?これなら背丈に違和感が無くなるわ…でも、辛抱できる?怪我しているし、かなり負担よね…大丈夫?それと、公爵の髪色はそのままでいいけど髪質が全く違うから、ヘンリー殿下が先程していたようにガッチリ塗り固めてしまいましょう。」
マーガレットが申し訳なさそうにオリヴィアへ伺い、ハロルドの髪のセットを施す。
「大丈夫よ、メグ。高いヒールくらい、なんてことないわ、私達ご令嬢は慣れっこでしょう。任せて!」
オリヴィアが力強く言い終えると、素早く靴を履き替える。
マーガレットが大きく鼻息を鳴らす。
オリヴィアが足を痛めているので、マーガレットはかなり心配なのだ。
そんな彼女にニコニコ笑いかけ、大丈夫、大丈夫と言い聞かせるオリヴィア。
そして、準備を整え、気合を入れて四人は部屋を後にした。
区切りが上手くいかず、今回とても短くなってしまいました、すみません。
次回は、出て行った人たちの今…