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控えの間にて

続けて読んでくだっている方、本当にありがとうございます!


オリヴィアと会話を少し交わしたのち、ヘンリーはやらなければならないことが山程あるとかで、臣下にせっつかれ、夕刻には迎えに来るからと言い残し、王城へと戻っていった。


「では、早速、おさらいしておこうか?フォード嬢、立ち上がれるかい?」

 ダンスが出来るか確認しようと、ウィリアムが声を掛ける。


「ウィリアム、ちょっと待って。フォード嬢の足はまだ動かさないでおいてよ。ほらまだ赤く腫れているでしょう。練習はギリギリまで我慢してくれ。そこでだが、じゃじゃーん!私、お手製の特性薬を塗って治療してもらいます。卵と小麦粉と、君の弟が西大陸で手に入れてきたコレ、お酢を混ぜて作りました。これを混ぜて塗って、綺麗な布で巻いておく。だんだんと痛みが和らぐはず。今は練習よりも、これ以上、足のケガを悪化させない事が一番大事です。」

 ケント医師がかたりながら手際よく治療を施す。


「うーん、どうしたら?あ、そうだわ。動かせないのであれば、目の前で踊って、手本を見せるのはどうかしら?本人は踊れないけれど、確認にはなるはずよ。やってくれますか?ケイティ!ウィル!!」

 そう、マーガレットにお願いされてしまったクロスター兄妹は、頷くしかなかった。


 クロスター兄妹がダンスの手本を見せる。

 真剣に、彼らを見つめる室内にいる者達。

 何度も踊り、質疑応答タイムを繰り返した。


 そうこうしているうちに夕刻に近づく。

 マーガレットとフレデリックは支度の為に部屋へと戻っていた。


 彼らの帰宅前に一度だけ踊ってみたが、やはり足を庇う所為で完璧な踊りは出来なかった。

 ギリギリ合格といったところのようだ。


 支度を整え、ヘンリーの到着を待つ。

 王城からきたという綺羅びやかな馬車に乗り込み公爵邸を後にする。

 どうやらヘンリーはここまで迎えには来ることは叶わなかったようだ。


 多くの不安を残したまま、儀式本番へと挑まなければならなくなった。


 王城に着き、踊りを行うオリヴィア達へと用意された控の間へと向かい、部屋の中央にあったソファへと腰を下ろした。


 今回のツインレイは、大聖堂の時と同様、アドラシオン国の王族と高位貴族、外国からの参列者がそのまま参加する。

 ここでの失敗は絶対に許されない。


 会場は王宮でもっとも大きいとされる広間、ウェレの間で行われる。

 20メートル超えの高い天井には中央に大きなシャンデリアがぶら下がる。

 昼間であれば、高い位置にある大きな窓からは光が差し込み、明るく暖かい雰囲気が充満する。

 その天井を見上げると、古代史の一説、女神とその子どもたちが描かれている絵が見える大広間だ。


 しかし、儀式前には窓から入る月明かりは厚めの布で覆われて遮断されていた。

 何重かの薄い布が天井から雲海の如く吊るされ飾られているので、古代史の絵も見ることは叶わない。


 布の間から垂れ下がるシャンデリアが軸となり、まるで花の花弁のようにも見えていた。

 水面に浮かぶ睡蓮の花のようにも思え、神秘的な飾りとなっている。


 その他にも殿下が考えたであろう演出は素晴らしかった。

 蝋燭が会場内のアチラコチラへと絶妙な配置で設置されており、布へと映る揺れる蝋燭の灯りが優しさと厳かで独特な雰囲気を作り出していた。


 下部の壁の端や多くの柱に施された細密な装飾はいつものままで施されている。


 部屋は縦に長い造りで、壁には古代史の女神とその伴侶などの一場面が有名な画家により描かれていて、それらに囲まれていると感慨無量となるはずが、そこにも布で装飾がされ隠されおり、いつもと違う印象を与えていた。


 今までにない風変わりで奇妙ではあるが、それは幻想的で興味を引く雰囲気を持った空間となっている。


 その大広間の奥に王族が腰を下ろし、中央を丸く開けるようにして両脇に貴族と外国からの客人が整えられた椅子に座る。

 入り口の大きな扉の手前には、音楽家が並ぶという配置となっていた。


 オリヴィアの出番は、第二部から。

 奥の隅にある小さな扉から入場し、中央へ歩み出て踊らなければならない。


 緊張する……。


 その時、扉をノックする音がした。

 近衛騎士のようだ。

 入室を許可する。


 中に入り、ヘンリーへと歩みより、耳打ちする。

 ヘンリーが直ぐに行くと答えると、オリヴィア達にすぐ戻りと了承を得て、部屋を出て行こうと扉へと歩みを進めた。


 ヘンリーが出るために騎士がドアを開けると、扉のすぐ前に、侍女が居た。

 驚く声を上げる騎士と侍女。


「どうした?」

 ヘンリーが聞くと、侍女が急いで口を開いた。


「この部屋のお世話を言いつけられてきました。」

 深く頭を下げている。


「誰に?そんなこと聞いていないぞ。必要ないから下がれ。」

 ヘンリーが冷たくあしらう。


「でででですが、王妃様の命でして…」

 少し顔を上げ、侍女がそういうと、

「何?母上か?…分かった、入れ。」

 ヘンリーが難しい表情で許可を出す。


 その後、ウィリアムのもとへ行きヘンリーが耳打ちする。

「誰の手先か分からぬ。俺は、急用でいったんここを離れる。母上にも、先程の話を確認し、おかしな点があれば、すぐに人を向かわせる。その時は捕らえて吐かせる。それまで奴を見張ってくれ。」

「分かった。」

 ウィリアムが返答すると、ヘンリーはオリヴィアのもとへ行き、急用ができたことを伝えて、部屋を去っていった。


 だがしかし、儀式の始まりの時刻が近づいてきても、ヘンリーが一向に戻らないのであった。


「どうしましょう。開始時刻になってしまいます。」

 王城で合流したマーガレットが心配そうに聞く。


「こうなったら、ケイティ、お前は大広間へ迎え。父がいるから合流し、何かあれば知らせてくれ。ラックランド家は兄が来ているはずだから、メグはここにいても大丈夫だろう。メグは、ここでフォード嬢と待機。フレデリック、お前は2人の護衛だ…頼りないが仕方ない。俺は、ヘンリーを探しに行く。」

 ウィリアムが指示を出す。


 フレデリックが文句を言いつつ承諾し、キャサリンとマーガレットも続く。

 その後、すぐにキャサリンは部屋を出た。


 その際、思いがけない2人と遭遇した。

 数年前に兄の婚約者を決める際にダンス対決を行い、共闘相手であった者達(ライバルペア)だ。

 その2人に声を掛けられ、もうそろそろ、ツインレイが始まってしまうから自分達も急いで向かうのでキャサリンも広間へと急ぐように助言を受けたのだ。


 この2人は高位貴族ではないから招待されていないはずがない。

 大広間へは入れないはずでは?何故ここにいるのか?と、キャサリンは首を傾げつつ、急いで大広間へと向かうのであった。


「それで、アーハイム公爵はどうしますか?」

 ウィリアムがハロルドにどう動くのか尋ねた。


「私もここに残ります。私は、ウェルト王国代表の役目と共に、もう一つ、大切な役目を頂いているのですよ。ええ、彼女の護衛です。今回は、そちらを優先いたしますので。」

 ハロルドが、オリヴィアの方を見て、ウィンクした。

 オリヴィアがそれを見て、また無駄な色気を振りまいてと顔を赤らませた。


 咳払いをするウィリアム。

「あーあーオホン。アーハイム公爵、そのような事は、ヘンリーの前では決して、けっっっっして、行わないようにお願いしますよ…頼みますよ、あなたの身の安全の為ですからね。では、忠告もしたので、そろそろ、ここからが本題です。少し内緒話と思いますので、アーハイム公爵とフレデリックは、こちらに寄ってください。」

 2人に小さく手招きする。


 2人が来ると、3人でコソコソ話を始めた。

 少し長めである。

 オリヴィアは耳を大きくして集中してみたのだが、聞き取ることは出来ない。


「では、よろしくお願いします。」

 ウィリアムがそう言うと、2人は分かったと返事をした。


 そして、ウィリアムがヘンリーを探しに、部屋を出ていった。


「大丈夫かしら??」

 オリヴィアが心配そうに呟いた。


 その時に、ガシャンと陶器の割れる音がした。


 先程の侍女が、ティーポットを落としてしまったようだ。

「すすすすみません。すぐに片付けて、新しいものをお持ちいたします。」


 素早く破片を片付けると、侍女は部屋を出て行った。


「アーハイム公爵?行かせてもよかったのか?」

 フレデリックが問う。


「うーん、誰かが追うとなると、この部屋の警護が手薄になるのでね。これは致し方ない。」

 ハロルドが、悔しそうに答える。



キャサリンが遭遇したダンスのライバルペアが、なぜ王宮に居たのか?

彼らは【全力で掛かって来い!】にでてくるキャラクターなのですが、その後、国一のダンスペアとなり、貴族の催すサロンに呼ばれ、引っ張りだことなりました。

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