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アルトニア大陸は今日も平和だ

最終話になります。

これまでお読みいただきまして、ありがとうございました☆★☆


3か月後。

二人は盛大な結婚式を挙げていた。


本来では、ウェルト国でも有力な公爵家同士の結婚式であるので、一年後に念入りな準備をして盛大に行う予定であったのだが、ハロルドがそれでは周囲にオリヴィアが自分の妻になったことを長い期間アピールすることができないと言い出し、一か月の新婚ラブラブ休暇を終えてから、急ピッチで用意され、式の時期が早まったのだ。


何せ、ハロルドはこの国の優秀な宰相にまで上り詰めた人物である。

大物の日程調整など、無理があるので早期の開催は不可能といわれていたのだが、やり遂げてしまった。


そうして、本日、オリヴィアとハロルドの結婚式が執り行われたのだ。

大物ももちろんズラリと参加している。


式の招待状を送る際、ハロルドはとある人物にだけ、何の調整もせずに送っていた。

むしろ、来てほしくない為に、彼の多忙であろう日を見計らい、ワザと送っていたのだ。

それなのに、奴はやって来た。


式の前に顔を見せに来た奴は、新婦の友だちと共に何食わぬ顔で新婦に会っている。

新婦のオリヴィアも友人として来てくれたことを歓迎していた。

アドラシオン王国ヘンリー殿下だ。


ハロルドは内心、面白くなく、彼を今からでも追い帰せないかと、心の中で模索していた。

 だが、オリヴィアの幸せそうな笑顔に免じて、どうにか感情を抑え、出席に同意し、今に至る。


 内心、妻を傷つけた妻の元婚約者(昔の男)を呪い続けているとは誰にも言えないことである。


 今、神父様の前で行う最大の見せ場、誓いの言葉である。

 アドラシオン王国での一件で婚姻を承認してくれたあの大主教、聖ニコライ様がこの場に駆け付けてくれ、再び、役目を引き受けてくれた。


「新郎ハロルド・アーハイム、あなたは新婦オリヴィアを妻とし、病める時も健やかなる時も、悲しみの時も喜びの時も、貧しい時も富める時も、これを愛し、これを助け、これを慰め、これを敬い、その命のある限り心を尽くすことを誓いますか?」

 ニコライが読み上げ、ハロルドに問う。


「はい、誓います…」

 これで終わりかと思いきや。


「だが、それだけでは足りない!!」

 と、言いだした。


「私は、例え天変地異が起きようとも、姿を変えられようとも、変人愚弄に妻が狙われようとも、神が降臨しようとも、馬車から飛び降りなければいけなくても、そらから空から妻が降ってきたとしても……etc.……私は妻を愛し、助け、尽くし、絶対に離れない!そして、妻に手を出そうとする輩は、全力で潰すことをここに誓う!女神さまに命を懸けて誓う!!!」

 と、熱弁し、言い切った。


 大司教も招待客もドン引いている。

 あのオリヴィアでさえも。


 オホンと大司教が咳払いし、オリヴィアに向き直る。

「新婦オリヴィア・アーハイム、同じですか?」


 大司教もあの後で、どう新婦に聞くべきか考えたのだろう、そう聞いてきた。

 それなので、

「はい、誓います。」

 と、オリヴィアは微笑交じりに答えた。


 その反応に対し、大司教は控えめに笑う。

 あなたも大変ですねと言うかのようであった。


「それでは、誓いのキスを。」

 大司教が宣する。


 オリヴィアは緊張していた。

 人前でのキスなんて、恋愛経験の乏しいオリヴィアにはとても恥ずかしいからだ。


 ベールを持ち上げ、ハロルドの顔が近づいてくる。

 その際に、ハロルドが小さくこう言った。


「リヴィ、鼻で息をしてくださいね。」

 そう言うとニコッと笑い、言葉の意味を考えられぬ間に口づけていた。


 それって…長くするって事よね!?!?

 と、目を瞑りキスされながら、オリヴィアは思い至る。


 ちょっと、えっ、長くするの!?


 確かに………長かった。

 そして、途中からかなり濃厚であった。


 唇が離れる頃には、翻弄され過ぎて、鼻での息も忘れていたほどであったので、オリヴィアは酸欠で頭がクラクラしていた。


 それに対して、ハロルドは、皆に見せつけられたと大満足の様子。

 いい笑顔のハロルドは、酸欠気味の新婦をお姫様抱っこして、バージンロードを退場していったそうだ。


 ワナワナと震える者達多数、中でもオリヴィアの父親、フォード公爵はかなりのお怒りであったそうで、のちに舅婿戦争を引き起こす。

 引き金が結婚式で引かれたということは有名な逸話となったそうだ。


 のちに、ウェルト国では、新婦のご両親と親しくなりたいのであれば、結婚式に新婦の両親の前で、長く濃厚なキスをするなとの教えがひろがったという。


   ***


 結婚式から数年が経ち、彼らにも新しい家族が増えた。


 長女のマリーだ。

 面白いことに、年々、ハロルドは若返っていて、周囲を驚かせている。


 その事について、オリヴィアが本人に尋ねると、平然と答えた内容に、驚愕したのである。


 ハロルドが言うには、女神の力の返還の際に、自身は王族血筋とはいえ、ほぼほぼ力などなかったのに呼ばれたのは、女神曰く、謝罪をしたかったからなのだそうだ。


 どうやら、ハロルドはオリヴィアのツインレイであるので、次の世代で生まれるはずであったのに、何の手違いか、前の世代に生を受けてしまったのだという。

 その所為で、混乱が生じ、オリヴィアとの不釣り合いな年齢や外見となってしまった。

 彼自身も、つらい失恋経験をする羽目になった。

 そんな彼に謝罪し、あることを女神はハロルドへ施して言ったのだそうだ。


 オリヴィアと夫婦の親密な行いをするにつれて、オリヴィアの力が少しずつ分け与えられ、肉体を若返らせる事が出来るというものだ。


 ハロルドもはじめは信じられなかったが、オリヴィアと回数を重ねるにつれ、ハロルドの見た目と体力は若返っていった。


 もうこれ以上は若返る事はないようだが、ハロルドはオリヴィアと横に並んでも、親子に見られないくらいとなり、大層喜んでいるのだという。


 今では、宰相であり、忙しい身のハロルドであるが、ほどよい立ち振る舞いを覚え、昔ほど、王城に拘束されずに済んでいるとのことだ。

 キッチリ定時に帰るので、部下や忙しく無くなった義父のフォード公爵が、仕事を押し付けられて苦労しているとの話は、小耳に挟んだりもする。


   ***


 アーハイム公爵家のタウンハウスの扉が開き、大急ぎでハロルドは妻の居る部屋へと足を運ぶ、扉を大きく開け放つと、大きなお腹を抱えた妻が、娘の積み木に付き合って、楽しそうに笑う様子が目に飛び込んできた。


 夫の帰りに気づき、オリヴィアが

「おかえり。」

 と言うと、

 ハロルドは

「ただいま。」

 と、すぐさま答える。


 しゃがんでいたオリヴィアへと駆け寄り、抱きしめると、その後ろで背中に娘マリーが飛びついた。

 片手で脇に引き寄せ、片手で抱きしめる。

 二人を両脇に抱きしめて、ハロルドは大満足である。


 ああ、女神さま、幸せをありがとうと、ハロルドは強く噛みしめるのであった。


 その瞬間、マリーが

「$%」

 と口にする。


 ハロルドとの間に空気の層のようなもの出現し、マリーとの間に隙間が出来た。

 その隙にマリーが大きく息を吸い、吐き出した。

 どうやら抱きしめた力が強過ぎたらしい、苦しかったみたいだ。


 その瞬間、アーハイム公爵家は大騒ぎとなる。


 マリーがツインレイと出会ったというのか!?

 何故、年頃でもないのにすでに力を使えるのかな!?

 と、大パニックで、後日、親族、王族総出で、大会議が開かれることとなった。


 ***


 今日も今日とて、王都は平和だ。


 とある家族の心配症の親と才能ある女王の血筋の娘の言い合いは、本日も通常運転で行われている。

 信頼し合える仲であるからこそ、ぶつかり合える。

 幸せの証だ。


「もう、お父さん。ついてこないでよ。心配しなくても何かあったら力使うからさ。」

「ダメだ!!むやみやたらにその力を使うのは良くないと、お母様に言われているだろう?頼むから大人しく家に居てくれ。」

「そうはいかないわ。ノエルが待っているのよ。ノエルは私のツインレイなの知っているでしょう?早く会いたいわ。」

「マリー…早すぎる…早すぎるのだ。お願いだから、まだ家に居ておくれ。」

 言い合う親子の横で、オリヴィアは笑顔を絶やさない。


「もう、お父様、いい加減にしてくれないと、雷落とすわよ!!」

 そう心配性な父親にむかって、女神の力を脅しに使う娘に、オリヴィアが眉をピクリと動かした。

 重い腰を上げ、オリヴィアは苦言を呈するのである。


「ノエル…雷を落とされるのは、あなたの方よ。力はむやみやたらに使ってはいけない、口にしてはいけないと言っているでしょう。この力は誰にも知られぬように、使えることを他人に見せてはいけないの。」

 オリヴィアは優しく言い聞かせているのだが、背後に黒い何かを背負っている。

 それが何なのかは、女王の血を引く者にしか分からぬようだ。


 ノエルは母の背後に何かを見て、ヒュッと息を吸い込み、

「はい…」

 と大人しく返事をし、硬く約束をした。


「お母様の後ろにあの人の姿が見えるの…」

 と、マリーは震えながら呟いた。


 あの人とは、力が発現してからマリーの夢に頻繁に現れる女性である。

 お祖母さまに似た風貌であるが、性格は全くと言っていいほど違い、力の扱いや約束事について熱心に指導してくる人らしい。

 それはよいのだが、マリーが日常で力についてよくない行いをした日は、夢の中で非常に厳しい態度のようで、その事を思い出すと体が委縮するほどだ。


 マリーの力が、なぜだか早くに発現してしまったので、女神ルトゥがエマであった時のように、夢の中で女神の力の教えを女王の血の継承者へと熱く施しているのだ。


 オリヴィアは娘だけでなく、夫にも軽く注意をする。

「ハロルドも、マリーはもう6歳なのですよ。遊びに行くのは王城ですし、あなたも敷地内にいらっしゃいますでしょう。私も傍におりますから、許可をしてくださいな。」

 ハロルドを促し(転がし)、娘の願いを叶えるのを手伝う。


「そうだな……ああ、分かった。行っておいで。」

 そうとても悲しそうな表情の父親からようやく許可が出て、娘は大はしゃぎをする。

 そんな娘の姿を見て、父はさらに寂しくなるのであった。


「あなた、心配し過ぎだわ。」

「ああ、君達のことになると、私は気がふれそうなほど心配で心配で仕方がないのだ。あんなに可愛らしく、賢くて、誰にでも気配りの出来る優しい子だから、悪しき者に狙われてしまうかもしれないと…危険だ…やはり、危うい…なあ、昔の君のように男装をさせるのはどうだろうか?」

 ハロルドが言いだす。


「はあ、マリーがいいと言うのならば、いいのでは?」

 オリヴィアは呆れて、少し投げやりに答えるのであった。


 今日と今日とて、

 この親子のみならず、アルトニア大陸は女神の力のお陰で平和である。



                   ===END===


これにて、女神の帰還はおしまいです

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!!!!感謝☆


実は…マリー、人生二週目もしくは回避者だとか…

魂の年齢が成熟しており、能力が発現してしまった設定あります。

ノエルはツインレイの相手とかも。隠しネタです、



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